2014年10月13日

アドバイスが受け入れられないのは何が原因か?

因果と相関の区別をつけるのは難しいものかもしれません。

因果というのは「原因ー結果」の関係を示すもの。
相関は「〜のときには、…になる傾向がある」と示すもの。

相関に「原因ー結果」の関係は含まれないんです。


例えば、
「東大に入るには、親が東大出身だと有利だ」
という考えを示したかったとします。

仮の話として、両親の出身校も入学審査で見られているかもしれない
とか、そんなことを想像した人が調べてみたくなった、と。

それで統計的にデータを取る。

その結果、
「東大出身の両親の元では、子供も東大に行く確率が高い」
という結論が得られたとしましょう。

これは相関です。
両親が東大に入っていれば、それが原因で子供が東大に入るわけではない。

様々な要因が重なっているということです。

両親の出身校が考慮されている可能性も含まれるかもしれませんが、
それ以上に様々な要因が絡み合っているはずです。

遺伝とか、教育とか、教育にかける金額とか、生活環境とか、
「両親が東大出身」ということで起きる様々な結果が、
さらに様々なことを引き起こす原因となるわけです。

自分が勉強していたから、子供にも勉強を教えるのが上手いのかもしれない。
親が家で勉強しているのを見ると、子供も一緒に勉強しようとするのかもしれない。
親が東大を当たり前だと思っていると、子供にもそういう思い込みが生まれて
一生懸命に勉強しようとするのかもしない。
東大出身だと平均収入が高くて、教育にかける金額も多くなるのかもしれない。

とにかくもう、そこには沢山の要因が関係します。

何が原因かというのは結論づけられないはずです。
調べたければ、個別の要因をピックアップして、厳密な比較が必要になります。


しかし、自分が「これが原因だ」と思って物事を見てしまうと、
その枠組みで判断するのが自然なことになってしまいます。

データを自分の結論に結びつけるように解釈してしまいやすいんです。

例えば、コミュニケーションに興味のある人の中には
「ラポールが深いと、アドバイスが受け入れられやすい」
という因果関係を信じている人もいるようです。
(※ラポールの程度を便宜的に「深さ」で表現することにしています)

つまり
「ラポールを深めれば、アドバイスを受け入れてもらいやすくなる」
という結論。

そこからは
「アドバイスをしても効果がないのは、ラポールが足りないからだ」
「アドバイスが届きやすくなるには、ラポールを深めればいい」
という教えが生まれます。

おそらく、
「ラポールが深いと感じたときに、アドバイスを受け入れてもらった」
という経験が重なっていたのでしょう。

これは本来は『相関』です。
因果を示す根拠はありません。

ですが、
「ラポールが深い(信頼関係がある)ほど、アドバイスが受け入れられやすい」
と言われれば、
なんとなくそんな印象に納得する人も多いのではないでしょうか。

多くの人がその相関を体験的に味わっているからだといえます。


ですが、ここには何か別の要因が絡んでいる可能性も考えられます。

あり得そうなのは、「分かってもらえた」という印象です。

誰かが相談をしてきた。
それに対してアドバイスをした。
…結果として受け入れられたかどうか?

この着眼点だけだと、相談の最中、アドバイスをするまでの間に
どんなコミュニケーションがあったかという視点が抜けています。

後から振り返ると、傾向として
 ラポールが深かったときはアドバイスが受け入れられていた気がする
という印象が際立つことでしょう。

その「相談中にどんなコミュニケーションをしていたか」を視野に入れていないので
他の要因を考えようという気にさえならないといえます。

実際には、相談中の会話によって、相談してきた人が
 「あぁ、この人は私の悩みを分かってくれた」と感じたときに
 ふっと心が緩んで、苦しかった感情が解消されて、前に進む意欲が生まれた
という可能性が想像できます。

その前に進もうという意欲が、積極的にアドバイスを取り入れようとした
『原因』かもしれないわけです。

同時に、「分かってくれた」感じが信頼感を増し、ラポールを深めたとも考えられます。

つまり、
・ラポールの深さ

・アドバイスの受け入れてもらいやすさ
も、両方とも
 「分かってもらえた」という印象
によって引き起こされた可能性があるわけです。

因果としては「ラポールの深さ → アドバイスの受け入れられやすさ」ではなく、
 「分かってもらえた印象 → ラポールの深さ」
 「分かってもらえた印象 → アドバイスの受け入れられやすさ」
となっているとも考えられる、と。

個人的な印象としては、「分かってもらえた印象」こそが
アドバイスが受け入れられるかと密接にかかわっていると捉えています。

まとめるなら、
「ラポールの深さ」と「アドバイスの受け入れられやすさ」以外にも
第三の要因として「分かってもらえた印象」が関わっていて、
その第三要因こそが、相関している2つの原因となっている
という可能性です。


こちらの立場からすると、
「アドバイスを受け入れてもらうには、ラポールを深めればいい」
などという提案は生まれません。

むしろ
「ラポールは目指すものではなく、結果として深まるもの。
 目指すのは、相手が『分かってもらえた』と感じてくれること。
 『分かってもらえた』と感じたとき、その人は
 こちらのアドバイスを1つの提案として受け入れる準備ができる。
 そして同時に、分かってくれる人に対してだからラポールが深まる。」
といった説明になるでしょう。

この着眼点をもって人とかかわると、相談されたとき
 「分かってもらった」印象が充分にあっただろうか?
ということが気になりだします。

アドバイスについても、そことの関係で見るようになるでしょう。
アドバイスが受け入れられなかったとき、
 今の関わりで、自分は相手から「分かってもらえた」印象を引き出せただろうか?
と振り返ることになります。

一方、「ラポールが深まれば、アドバイスが受け入れられる」という観点からだと
アドバイスが受け入れられなかったときには
 「今のはきっとラポールが不十分だったんだ。
  確かに、相手の表情からは打ち解けた雰囲気が足りなかった。」
などと分析することになるでしょう。

結果として、次からは「ラポールを深める」ための努力を重ねます。
そして
・上手くアドバイスが受け入れられた時には、ラポールが充分だった
・アドバイスが受け入れられなかった時には、ラポールが不十分だった
と結論づけることを続けます。

盲点はそのまま残り続けるんです。
根拠をすでに決めつけてしまっていますから。

もちろん、「分かってもらえた印象を引き出せたか」についても
その因果を決めつけてしまうと盲点が生まれる可能性はあります。

ですが、「ラポール」という全体的な状態の印象を評価するよりも
「分かってもらえた、と相手が感じた瞬間」は、はるかにピンポイントで
非言語メッセージの『変化』として特定できます。

つまり、「分かってもらえた、と相手が感じた瞬間」が観察できたかどうか
という、より明確な指標で判別できるわけです。

それによって、
 分かってもらえた感の表情があったのに、アドバイスが受け入れられなかった。
 ということは、もしかすると他の要因も関係していたのかもしれない。
といった具合に、別の考察に繋げやすいんです。

これが具体的で瞬間的な出来事を、要因として考えるメリットです。

さらに、「ラポール」よりも「分かってもらえた印象を引き出せたか」のほうが
関わる要因が少ないのも重要なポイントです。

「ラポール」を深めるための手段は沢山あります。
因果関係の流れとして、上流に沢山の要因があるんです。

ラポールそのものがアドバイスの受け入れられやすさの原因であったとしたら
どんな方法でラポールを深めても構わないことになりますが、
例えば、「呼吸を合わせる」という方法では効果が薄いのに
共感的な言葉がけをした場合には効果が高いとした場合には、
ラポールそのものが原因ではない可能性がうかがえます。

ということで、
原因となりそうな要因を考える場合には、なるべく直接的で
ピンポイントに判断できるものに注目したほうが望ましいと思われます。

「ラポール」という様々な要因が関わる状態を
何かの原因として想定する場合には、
まず、ラポールに影響する個別要因をそれぞれ洗い出してみて
それから評価していったほうが無難ではないでしょうか。

そして結果として、どんなやり方で高めたラポールでも
アドバイスの受け入れられやすさを高める…という結論が得られたら
そのときに「ラポールが原因」と判断する。

それでも遅くないでしょうし、何より大事なものを見失わなくて済むはずです。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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