2014年10月25日

再びの一体感

先の記事で「自他の区別」という話題について書きました。

コミュニケーションのポイントとして指摘されることの多い部分です。

とかく人は「自分のコントロールの及ぶ範囲」に対して曖昧になりがちで、
結果として「他者は自分の思い通りになるのが当然だ」というスタンスや
「自分の行動は他者によって決められる」というスタンスが起きます。

自分の思い通りになるはずの範囲が肥大しているか縮小しているか、です。

この区別をつけて、「自分は自分、他人は他人」と捉えられれば
人間関係でお互いに負担を感じることが減るだろう、というわけです。


ところが、頭でそのポイントが分かっていても
学習された内容が変わるのには時間を要します。

特に、不快な気持ちを伴うような反応パターンほど
強く記憶に残りやすいものですから、
厄介な場面ほど同じことを繰り返して、嫌な気分を味わうことが多いんです。

NLPでは、そうした反応パターンを「プログラム」として扱います。
どのように呼んで、どんな手法で変えようとするかは
心理療法や各種トレーニングの流派によりますが、
いずれにしても「いつも繰り返される望ましくない反応パターンを変える」のは
主要なターゲットだといえます。

これらの望ましくない反応パターンは、怒りや恐怖など
広い意味でのストレス応答(交感神経系が活発になる状態)と結びついています。

視野は狭まり、体は硬直して、心拍数が上がって…という感じ。
とてもではないですが、リラックスとは程遠い状態です。

この身体反応が沸いてしまうと柔軟性もなくなります。
自動的に過去のパターンで対応しやすくなる。
工夫しようにも体が思うように動かないし、工夫する頭の状態そのものも
緊張や恐怖、不安によって冷静さやクリエイティビティを失っています。

ですから上手くいかないパターンほど繰り返されやすいわけです。


こうした状態は、外的な刺激によって引き起こされます。
自主的に選択肢の中から選びとる感じではありません。

誰かを見ると、特定の声のトーンが耳に入ってくると…など
体の外で起きること、主に他者によって影響を受けているといえます。

思考・感情・行動の起点が他者にあるんです。

これが不自由な状態と感じられます。
だから問題と捉えられる。

そこで、NLPや心理療法では
 じゃあ、反応の仕方を変えてやればいいだろう
ということで様々な取り組みをするわけです。

望ましくない反応パターンが起きにくくなる手法とか
新たな反応の仕方を追加する手法とか、色々とありますが
ものすごく一般化していえば
 「感情的な不快感をなくしてリラックスし、
  その状態で今までと違う対応の仕方をやってみる」
というのが原則といえるでしょう。

今までどおりの不快感とワンパターンの行動で自動反応するのではなく、
気持ちを切り替えて、落ち着いて安心した状態で
新しい対応の仕方をやってみるんです。

もしそれでも上手くいかなかったら、また対応を変えてみましょう、と。

とにかくワンパターンを脱するために、感情を切り替えて整える
というシンプルな発想です。


では、どうしたらそのように気持ちを切り替えられるのか?
どのぐらいの安心感が得られれば、効果的な対応に変えられるのか?

それに関しては、「程度による」というのが現実的なようです。

ワンパターンの対応しかできなくなってしまうものにも
不快感が非常に強くて、決まった感情が強く沸いてしまって
自分ではどうにもならない感じの場合もあります。

一方で、今までは無自覚にやっていたからワンパターンだったけれど
ちょっと気持ちを落ち着けて考えてみたら、新たな対応のアイデアが
パッと浮かんでくる、なんていうことも多々あります。

この「対応がパターン化されている度合い」が弱いほど
気軽な気分転換だけでも大きな効果が得られると考えられます。

ちょっと深呼吸をしたり、姿勢を正したりするだけで
クリエイティブに新しい対応法が浮かんでくるものです。

そしてパターン化されたコミュニケーションについても
それほど厄介な状態になっていなかったでしょうから、
チョットの新しい対応で道が開けることも多いようです。

一方、強く感情が沸いてしまって、反応もワンパターンに固定され
「わかっちゃいるんだけど、変えられない」感じの場合には、
少しのリラックスや気分転換では対処が困難になりがちです。

もっと大きな心地良い状態に変わることが求められるケースです。

そのための1つの方法として、繰り返される不快な感情を
シミュレーションの場面で思いっきり吐き出してしまってスッキリさせる
というのが挙げられます。

吐き出して怒りや不満、悲しみや恐怖が体から抜け出ると
奥にあったポジティブな感情に気づけることが多いんです。

信頼や感謝、愛情、親しみ、尊敬…など。
自分の中に、相手に向けられたポジティブな想いがあったことに気づくと
次に実際、顔を合わせたときには、そのポジティブな状態をベースとして
新しい対応をしやすくなります。

今までのような不快な感情が沸きにくくもなりますし、
不快な感情と結びついた受け取り方で相手を見なくなりますから
それまでには気づかなかった部分に好意を感じることもあるでしょう。

視野が広がって、新たな関係を築きやすくなる状態だといえます。

こうして不快な感情を全てリリースして
その奥のポジティブな感情に気づく場合、そもそも
期待の裏返しとして強い不快感を抱いていることもあるものです。

つまり、奥底にはポジティブな感情も大きいままで隠されている、と。
どうでもいい相手には不快感も大して感じませんから。


以上のように、不快な感情をリリースすることで
奥底にあったポジティブな感情に気づき、その状態で新たな対応をする
というのは、とても効果的な方法です。

これをもっとシンプルなプロセスによって
さらに効果の高い状態に導こうという手法もあります。

「そのとても不快な感情やワンパターンの対応によって、本当は
 自分は何を得ようとしていたんだろうか?」
といった感じの問いかけを繰り返すんです。

『コア・トランスフォーメーション』と呼ばれる手法です。

自分が心の奥底で求めていたものを深堀します。
繰り返し自分への問いかけを行うことによって
その根源的な欲求へと辿りつこう、というわけです。

ここで得られる根源的な欲求は、人によって言語的な表現の差はあれど
原則的に同じ1つの状態だと考えられています。

内面的に平和な感じがあって、全てとの一体感と無条件の愛をもちつつ
ただただ存在としてOKな感じを体験するような状態。
「コア・ステート」と呼ばれるものです。

この全てとの一体感の中で安らぎと愛に満たされる感じがあれば、
それまでは不快な感情とワンパターンの反応でしか対応できなかった
厄介なコミュニケーションさえも、スムーズに変えられると考えられます。

問題の場面とコア・ステートで向き合ってみて
新たな対応を生み出すだけのリラックスと柔軟性を手に入れる、と。


ここで興味深いことに、『一体感』という言葉が出てくるんです。

コミュニケーションのポイントとして
『自他の区別』をつけることを心がけながら、
同時に『一体感』があることで他者との関わりを変えられる
という話なんです。

生まれる前は、文字通り「一体」だった。
「一体感」ではなくて「一体」だったんです。

「一体感」というのは、一体ではなくて分割された存在が
自分以外の他の存在に対して「一体であるかのように感じる」状態です。

「一体感」は自分と他者とを区別してから感じるものなんです。

言い換えると、
徹底的な心がけとして「自分は自分、他人は他人」という区別を明確にすることで、
何かしら我慢しなければいけない人間関係のしがらみと
自分と他人とでは別々の人生を生きているという寂しさとを実感し、
だからこそ
根源的に求めている『一体感』というものを実感とともに味わったとき
その素晴らしさに気づくことができる
ということです。

まずは『自他の区別』をつける。
それから自分が奥底で求めている『一体感』に気づく。

自他の区別に気づきながら、同時に心の奥で一体感を体験するんです。
だからこそ「自分は自分、他人は他人」という境目を受容できて
自分と相手の両方の自由を尊重できるようになる。

すると相手の振る舞いが起点となって自分の行動が生まれるのではなく、
自分で自分の振る舞いを選択する感じが表れてくるはずです。

お互いのために対応を考える余裕ができると思われます。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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