2014年12月23日

カウンセリングやコーチングをどう学ぶか

カウンセリングやコーチングを学んだり
自分でやろうと思ったりする理由としては
こんなようなことが挙げられるかと思います。

○コミュニケーションが苦手なので勉強したい(コミュニケーション能力向上)
○教育や部下の指導、子育てに役立てたい(育成)
○困っている人を助けたい(人助け)
○自分が体験して良かったから伝えたい(共有・伝道)
○営業で顧客の要望を聞き出せるようになりたい(ニーズ把握)
○人から相談を受けることがあるため上手く聞けるようになりたい(必要性)
○人の心を理解したい(興味)


このうち最も直接的に役立ちそうなのは、当然ですが
 人から相談を受けるから上手く聞けるようになりたい
というものでしょう。

カウンセリング・コーチングともに、クライアントからの相談という形で依頼され
それに対して技術を駆使しながら会話を進めるというものです。
スタート地点は相手側にあるわけです。

そういう関係性においては、相談者と聞き役との役割がハッキリしますから
専門的な技術をもって「相談にのる」というプロセスが自然なものとなります。
カウンセリング・コーチングが前提としている状況設定ができているんです。

だから技術として学んだことをそのまま使いやすい。
練習した通りの流れで進められますから効果も出やすいでしょうし、
何より、相談を持ちかける側に「なんとかしたい」というヤル気があります。

取り組む準備ができた人を、カウンセリング・コーチングという型の中で
練習してきたとおりの流れでやれるということは
そもそもの技術が想定している通りのプロセスだといえますし、
だからこそその手法が期待している程度の効果は充分に得やすいんです。

ちなみに、プロとして相談を受けるときは当然この形になりますから
相談の依頼を受ける仕組みが求められることになります。


カウンセリング・コーチングを勉強する場合、一般的には
こうした「相談者(クライアント)−聞き役(コーチ/カウンセラー)」の関係性を作り
その役割分担の中でトレーニングが行われます。

そのため、この関係性を当然のことと想定してしまって
 そもそも「クライアント−コーチ/カウンセラー」の関係性は特殊なもの
ということが意識されなくなってしまう場合が見受けられます。

そして「クライアント−コーチ/カウンセラー」の関係性だから成立することを
日常の人間関係でも期待してしまい、結果として期待外れに終わりがちです。

例えば、上司が部下の育成でコーチングの型をそのまま使おうとすると、
部下はクライアントとして自ら希望して相談を持ちかけたわけではありませんし、
「指示を出す側−指示に従う側」の関係性や
「評価者−非評価者」の関係性、「目上−目下」の関係性などを持ちこむため
コーチングやカウンセリングが想定するニュートラルな立場にはなりません。

上司が部下をコーチングしようとしても
正直に話さないとか、「無理矢理やらされた」という印象を持つとか、
本来のコーチングが想定していない不都合な要因が混ざってきてしまいます。

親が子供をコーチングしたりカウンセリングしたりするのも
しつけや教育といった強制的な部分を置き去りにしてしまう可能性があります。

何よりも、「クライアント−コーチ/カウンセラー」の関係性で子供に接すれば
親への愛着や「親を頼りにする」経験を通じた自然な結びつきが阻害されて
「親に受け入れてもらえる」という精神的土台を育みにくくなるかもしれません。

親へ依存することで自然と身につけるはずの他者への基本的信頼が
子供をクライアント扱いすることで身につかなくなる恐れもあると考えられます。
クライアントとの関係性は自立した存在を尊重するものですが、
自立するだけの土台を築く前に早すぎる自立を促すのは危険だということです。


そういう意味で、教育などの場面にカウンセリング/コーチングが想定している
「クライアント−カウンセラー/コーチ」という関係性を持ちこむのは不自然で、
場合によっては逆効果にさえなりかねないわけです。

実際、世間では「コーチングは組織では役に立たない」などという意見も聞きます。
「家庭でのコミュニケーションにカウンセリングは使えない」というのも耳にします。

その多くは、おそらくこの「クライアント−コーチ/カウンセラー」の関係性を
そのまま日常の場面に持ち込もうとした結果、
本来の技術として想定していない阻害要因が働いてしまって
努力が空回りしたり、裏目に出てしまったりした…ということなのでしょう。

カウンセリング・コーチングという特殊な状況設定を
日常生活のコミュニケーションにそのまま持ち込む場合、
上手くいかないことが起きやすいわけです。

一方、「カウンセリングやコーチングは役に立つ」と主張する人も大勢います。

きっとその人たちは、カウンセリングやコーチングを「関係性」として捉えず
その中で使われるコミュニケーション技術として見ていると想像できます。

つまり、
「カウンセリングで教わった傾聴の仕方を取り入れて
 子供の話を丁寧に聞くようにしたら子育てが上手くいきだした」
とか
「コーチングで練習した質問の仕方を駆使して部下の意見を聞いたら
 積極的に仕事をしてくれるようになった」
とか、
 カウンセリング・コーチングで使われる数多くの技法の中から
 ある特定の技法が何かの場面で役に立った
という話だろうということです。

もちろん、傾聴ばかりで子供に必要なことを伝えなくなれば
ただのワガママになってしまうかもしれませんし、
夫婦の会話で自分ばかり傾聴をしていれば我慢をすることになるかもしれません。

新しい職場に移った人に仕事を覚えてもらうとき、質問ばかりしていたら
作業を把握するまでに時間がかかり過ぎてしまうでしょうし、
マニュアルのある仕事であれば質問をするよりも伝えることが重要でしょう。

このようにカウンセリング・コーチングの技術の中には
場面によっては役に立たないことがザラにあるものなんです。

しかし、「役に立たないところでは使わなければいい」という発想を持っていて
何かの技術が役に立つ場面を経験したことがあれば、その人は
「コーチングや仕事に役立つ」とか「カウンセリングは家庭生活に役立つ」とか
ポジティブな評価をするようになると考えられます。

あるいはコーチングやカウンセリングで学んだ「寄り添う姿勢」とか
「相手を信じる」とか「共感しようとする」とか「批判しない」とかいった
『心構え』の部分であれば、当然、日常生活でも効果を発揮することでしょう。

確かに、コーチングやカウンセリングの中で使われる技法や心構えは
日常生活の他の場面でも大いに役立つことがあるはずです。

その一方、コーチング・カウンセリングが想定している
「クライアント−コーチ/カウンセラー」という関係性の中で行われる
決まったコミュニケーションの流れとしてのコーチングのセッション、
カウンセリングのセッションは、日常生活にそのまま持ち込めるものではないんです。

どちらの側面に注目するかによって「使える/使えない」の評価は逆転します。

だからこそ、
 カウンセリング・コーチングには数多くのコミュニケーション技法が含まれていて
 同時に特殊な関係性を想定して流れや型が作られている
ということを気に留めておくのは重要だといえます。


このことを考慮すると、
「自分がカウンセリング・コーチングを学ぶ際に求めているものは
 クライアント−コーチ/カウンセラーという関係性を前提としているか?」
を考えてみるのは有用だろうと思われます。

人助けにおいては「思いやり」と「おせっかい」との線引きが難しいでしょう。
相手が「助けて欲しい」と望んでいるのかどうか。
そうでなければどんな技術も自分勝手なものになってしまいます。

「自分がやって良かったから他の人にも体験してもらいたい」という要望は
相手がクライアントになることを望んでいない限り、押しつけになってしまいます。
「コーチング良いよ。やってみない?」と勧めてみて、
それで乗り気でないようなら、その人はクライアントの立場にはならないはずです。
その関係性で使った技術は、自己満足に終わってしまいます。

営業でもクライアントの立場になってもらうまでが大変でしょう。
興味を持ってくれたお客さんが話しかけてくれたのであれば簡単です。
ニーズを聞き出す技術はそのまま役に立ちます。
ですが、興味を持っていない人に話しかけ、その人に興味を持ってもらうのは
クライアント以前の関係性ですから、使える技術は限定されるはずです。

相手の気持ちを知りたくてカウンセリングやコーチングの技法を使っても
相手がクライアントとして心を開く関係性になっていなければ
大半は充分な情報を得るまでには至らないものです。

ちなみに、本当に人の心を理解したければ
観察力を磨くのと、心の仕組みを学ぶとの両方をやったほうが賢明です。
そうすれば相手が心を閉ざしているつもりでも多くのことを読み取れます。
…いずれも大部分のカウンセリング・コーチングのセミナーでは学べませんが。


カウンセリング・コーチングを学ぶ最大のメリットは、もしかしたら
間接的にコミュニケーションの苦手意識が減ることかもしれません。

実際に日常のコミュニケーションに役立つ技法を色々と身につけられもしますが、
それ以上に「自分はカウンセリング/コーチングを学んだ」という自信が
コミュニケーションをするうえでの安心感を高めてくれます。

苦手意識のある人は自信が低いんです。
その自身の低さが戸惑いを生み、過度な緊張感や空回りを生む。

技術的な観点からすると、学んだところで
日常のコミュニケーションの質は変わっていなくても、
心の余裕として苦手意識が減れば役に立つことはあるものです。

その反面、学んだ技術の使いどころまで身につけることなく、
また関係性を考えることを学ぶことなく自信だけを高めてしまうと、
使いどころのズレたコミュニケーション技術を堂々と使いまくって
周りの人に苦い思いをさせる結果になってしまう…
なんていうケースもあるみたいです。

本人からすると自信満々ですし、周りの人が煙たがっていても
その反応に気づくだけのコミュニケーション能力はトレーニングされておらず、
まったくもって気の毒な状態のようです。

まぁ、本人は自覚していないわけですし、それも通過点かもしれませんから
暖かく見守っていきたいものだとは思いますが、
そうした教え方をする団体やトレーナーに関しては、同業者として
手放しで歓迎できるものではないのが正直なところです。

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
おしらせ
 ◆ セミナー情報 

New!

《コミュニケーション講座》
 〜人を育てる指導力〜

【日時】 
  2019年6月16日(日)
   10:00〜16:30


【場所】 
  北とぴあ 601会議室

   JR王子駅より2分
   南北線王子駅直結

詳細はこちら>>


《瞑想講座》

【日時】 
  2019年6月22日(土)

  午後の部 13:30〜16:30
  夜間の部 18:00〜21:00

【場所】 
  北とぴあ 第2和室

   JR王子駅より2分
   南北線王子駅直結

詳細は後日


《怒りの取り扱いマニュアル》
 〜期待の手放し方と
  ゆるしの技法〜


【日時】 
  2019年7月6日(土)
     7月7日(日)
   10:00〜18:30


【場所】 
  滝野川会館

   JR上中里駅より7分
   JR駒込駅より10分
   南北線西ヶ原駅より7分

詳細はこちら>>
次回未定


 ◆ 過去の講座 

《新カウンセリング講座》
 〜まとめと実践〜


当時の内容はこちら>>


《勉強会》 

【テーマ】 変化の流れを考える

当時の内容はこちら>>
次回は未定



 ◆ お問い合わせ 
  技術向上、
  コンサルティング、
  スーパーバイズ、
  執筆・講演…

  諸々のお問い合わせはこちらへ>>



ホームページ
バナー1


プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
Archives
最近のコメント
QRコード
QRコード