2015年05月27日

許可を取られても…

コーチングの一派を学んだ人に見受けられる質問のパターンに
「気づいたことがあるので、言ってもいいですか?」
という許可を求めるものがあります。

どういう趣旨で教えているのか分かりませんが、
いくらかの危険性を含んだ内容だと感じます。

許可を取るような形の質問をしていることで、「はい」と答えた人は
その内容を聞くことを受け入れた設定になります。

つまり、「いや、やっぱり聞きたくなかった」とは言いにくくなるんです。
「なんでそんなこと言うんですか?」
「なぜそんなことを言われないといけないんですか!」
という返答は許されない形になっている。

しかし、何を言われるか分からないのに
「言ってもいいですか」と許可を求められても
判断の材料が含まれていません。

日常的な礼儀の範囲として、多くの人はそう聞かれたら「はい」と応えます。
へりくだって許可を求められたら、その内容が余程でない限り
許容しようとするような習慣があるものでしょう。

「窓を開けてもいいですか?」
「エアコンの設定を高めにしてもいいですか?」
などと聞かれれば、自分の好みと違っていても
「はい」と答える人が多いはずです。

さらに、「気づいたことがあるので」と前置きをつけられれば
内容が気になって、より「はい」と答えやすくなるともいえます。

そもそも聞く意味が薄い質問だということです。


もしかするとコミュニケーションの流れとして
クライアントが一方的に話をして、コーチ・カウンセラーは傾聴するだけ
という関係性が長きにわたって前提として作られている場合、
その流れを変える意図があったのかもしれません。

あるいは、コーチは話を聞き、質問する人という立場が明確になり
暗黙の関係性として「コーチ側から何かを伝えることはない」ということが
流れの中に組み込まれてしまっている場合も同様です。

(今まではずっと話を聞いているだけでしたが)
「私の側からも発言させていただく流れに変えてもいいですか?」

(今まではずっと質問する人をやってきましたが)
「今だけ、気づいたことをフィードバックする役割に移ってもいいですか?」

そのように流れを変えることへの許可であれば
質問の意図も納得できます。

同様に、カウンセリングであれば最初の段階で
「この時間は完全にあなたのためのものですから、
 私は何かを言うのではなく、ただあなたの話を聞きます」
などと趣旨を説明する場合もあります。

その前提で長らく話が進んできた段階で
カウンセラー側からフィードバックをするとなると
事前に説明した趣旨と異なることになりますから、
一言、流れを変えるために許可を取るということは意義があります。

そのような趣旨の質問だとしたら、
その意図が伝わりやすい形で言葉にするほうが明確です。

「ちょっと流れを中断して、この時間だけ
 私の側から気づいたことをフィードバックする流れに移ってもいいでしょうか?
 もちろん、このまま話を続けたければ、それでも構いません。」
というのであれば許可の意味が高まるでしょう。

仮に、気づいたことを言って相手への影響があることを懸念するなら
その趣旨を明確にしながら許可を取ればいいはずです。

「私の気づいたことをお伝えしようかと思いますが
 若干ショッキングなところがあるかもしれません。
 あまりショッキングなことは聞きたくないと思うのでしたら言いません。
 表現をマイルドにして欲しければ、それも大丈夫です。
 どういう形をご希望ですか?」
などでしょうか。

他にも、アイ・メッセージ(“ I ” メッセージ)を強調したい可能性も伺えます。
「あくまで私個人の気づいたことですよ。1つの見方ですよ。」という立場。

であれば、
「お話を聞いていて気づいたことがあります。
 私の個人的な受け取り方が関わっていますから、
 それが正しいということではありません。
 あくまで私はこのような印象を受けた、という程度ですので
 違うように感じられたら、そのようにおっしゃってください。
 そのほうが私も想像で話を理解しなくて済みますから。」
などと前置きするほうが明確でしょう。

もっとシンプルにするなら
「あくまで聞いている立場として私が感じたことに過ぎませんが」
といってもいいかもしれません。

いずれにせよ、
 自分の意図をハッキリさせて
 その意図が相手へ明確に伝わるように工夫して表現する、
ということが重要ではないか、という話です。


個人的な経験からすると、
「気づいたことがあるので言ってもいいですか?」
と質問されるケースの多くは、

ストレートに気持ちを言語化するとしたら
「私はあなたの話を、あなたの考えとは違った形で理解しました。
 私はそれを言いたいんです。」
といった感じに思えます。

自分の見解を表現したい気持ちが含まれている
という印象を受けることが多かったんです。

「私の意見を表現したい。
でも、コーチ・カウンセラーは自分の意見を押しつけてはいけない。」
そんな気持ちとルールのバランスの中から
便利な前置きとして使われるのが
「気づいたことがあるので言ってもいいですか?」
になるケースがありそうに感じます。

実際、僕はその質問に対して返答したことがあります。
「いやです。やめてください。聞きたくありません。」
と。

まぁ、そんな風に相手の意見を遮るぐらいの状態になるまでには
それ相応の前置きがあったわけですが。

逆にいえば、関係性や信頼が充分にできていれば
コーチ・カウンセラーの見解を聞きたくもなるものだと思います。

わざわざ「私の意見を言ってもいいですか?」という形での
「私も表現したいんです」という気持ちの表現は
前置きするまでもない内容になりえる気がします。

コーチ・カウンセラーは的確なフィードバックをする立場
という関係性や流れを最初から作っておけば、
わざわざ流れを変える許可を取る必要もないわけですから。

あとはフィードバックの際の距離感です。

「私の見方のほうが正しい」
「あなたのケースは、こういうことなのよ」
と意見を押しつける度合いが強くなるのか。

「こういう見方もありませんか?」
「ひょっとして、こんな可能性はありません?」
「こういう気持ちが起きていないか、自分で吟味してもらえません?」
と軽くチェックする程度なのか。

言葉の形として意見の押しつけを避ける言い回し
「〜てもいいですか?」
に頼るよりも、
より重要なのは
意見を押しつけない気持ちから自然と生まれてくる表現のほうでしょう。

言い回しに頼ると、自分が意見を表現したい気持ちにあることを
自覚しにくくなってしまうリスクも高まると思われます。

何のためのフレーズなのかに注意しながら言葉に出すのが
コミュニケーションのポイントの1つだと思うんです。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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