2015年10月16日

認知の”フィルター”?

NLPは開発当初から”追加”される形で進歩してきました。

辻褄が合わないという理由で古くからあるモノが取り除かれたり
アレンジされたりすることは滅多になかったようです。

あるとすれば、
「こっちの手法があれば、こっちは使わなくてもいいだろう」
ということでコースのカリキュラムから抜かれるぐらい。

たとえばTOTEモデルという1970年ごろに最先端だった理論は
今もなおNLPの中に残っていますが、
人の振る舞いの大部分は、このモデルに従わないというのが
認知科学や脳科学の知見のようです。

(TOTEモデルは、現状と目標値との差をチェックして修正を繰り返し
 目標の基準に達したら作業をやめるというもの。
 人の行動の多くは、すでに学習されたものを使うだけなので
 予測した通りに動かすだけで、作業中の修正は非常に難しい。
 慣れない作業を意識的に練習するときぐらいがTOTEモデルに当てはまる。)

とはいえ開発当初から、それなりの全体像を示さなくては説得力がないですから
詳しく分かっていない部分は、既存の心理学やセラピーの説明、あるいは
当時最先端だった理論などを取り入れた形跡が見受けられます。


実際、サブモダリティという概念が提唱されるのはNLPができた少し後で、
サブモダリティの研究はスティーブ・アンドレアスによって大きく進みます。

NLPの基本的な説明は、
 人は五感を通して体験して、
 頭の中に作られる内的表象は五感の情報から成っている
というもので、
その土台となるのが
 内的表象を構成する要素としてのサブモダリティと
 サブモダリティの分類としての表象システム(=五感)
だといえます。

内的表象という考え方は初期からあったようですが、
それが具体的にどのように作られているかが丁寧に検証されるのには
スティーブ・アンドレアスの努力を待たないといけないようです。

彼は、人が頭の中で体験しているパターンを
映像や音声、体感覚を含むイメージとして調べ、
プログラムというものの実態に迫ろうとしたように見受けられます。

僕がスティーブの影響を受けたかというと分かりませんが、
もともと化学をやっていた僕にとっては、
体験内容を五感の要素(サブモダリティ)の組み合わせで説明するのは
元素の組み合わせで化学反応を説明する感じに近かったので
自然と詳しく調べたくなったように思います。

そして人の体験内容をイメージとして調べるほど
脳科学の知見と一致することも見えてきました。

人の認知は基本的に、パターン認識に基づいています。
そしてパターンを捉えるには、典型的な特徴を兼ね備えておく必要があります。

詳細過ぎてはパターンに当てはまらなくなるため、あえて情報を省略して
本質的な情報だけを備えた典型的なイメージに抽象化する。
(認知心理学でいうプロトタイプに近い)

この典型的なイメージに当てはまるかどうかで
パターン認識をするわけです。
(この典型的イメージはNLP用語で登場する「フレーム」と一致します)

この作業で、体験したものを分類して意味づけします。

目や耳から入ってくる情報をすべて調べていたら時間がかかりますから
ほとんどの場合、典型的なイメージ(フレーム)に当てはまったものは
「知っているもの」として過去の情報を頼りに内的表象を作ります。

ですから、実際にインプットした情報のうち
内的表象に使われる部分は随分と少ないんです。

ここでまず情報量が減りますから、
いわばフィルターにかけられたような状態になります。


さらに、典型的なイメージは重要度が高いものほど強調されて
自然とその部分に注意が集まるように歪められています。

感情が大きく動くキッカケとなった物事や
感情の動きが小さくても繰り返し体験する物事は、
他のものよりも強く記憶に残りますから、
体験記憶が抽象化されて作られる典型的なイメージの中でも
他より際立ったモノとして反映されていきます。

重要なものほど大きくイメージされているとか、
映像がハッキリしているとか、ピントが合っているとか
光が当たっているとか、他よりも浮き出ているとか…。

白黒の写真の中に、一部だけカラーの部分があったり、
ぼやけたテレビ画面の中で、一部だけピントが合っていたりしたら、
その部分にパッと注意が集まると思います。

それと同じようなことが、頭の中のイメージでも起きているんです。

このように重要なものを強調して歪んだイメージを作ることで
大事なことには意識が向きやすいという性質が生まれます。

僕は犬が好きですから、犬はパッと目に入りますし
遠くにいてもすぐに気がつきます。
ですが僕の経験上は重要度が低かったバイクなどは
目に入っているかもしれませんが気づいていないことも多いでしょう。

ここでもやはり、重要度の高いものだけに注目して
それ以外のインプットされた情報は意識に上げない状態になります。


つまり、
 典型的イメージ(フレーム)に当てはまるものは記憶の情報を利用して
 新しい情報としてインプットする必要性を下げる…
ことと、
 重要度の高い物事には典型的イメージ(フレーム)に歪みを加えることで
 他のものよりも注目しやすくして、
 重要度の低いものは意識に上げないようにする…
ことの両方で、
体験内容にフィルターをかけている、ということです。

NLPの初期の頃から、
人間の認知では大幅な情報の省略があることは知られていました。
そのためNLPが人間の体験を説明するときに使うモデルでも
「フィルター」という単語が使われることがあります。

ただし、概念として「フィルター」を取り入れたのが先ですから
 フィルターが内的表象として、どのような仕組みになっているのか
については放置されていたように見受けられます。

その一方で、「フィルター」という概念だけは先行して使われて、
既存の心理学、セラピー、自己啓発系の情報と組み合わせて
 「フィルターには色々な種類がある」
という形で説明されるようになったのでしょう。

今でも多くのNLP関係の書籍では、「フィルター」に当たるものとして
価値観、ビリーフ、メタプログラムなどが挙げられますが、
これもそれぞれの内的表象をサブモダリティのレベルで調べた分類ではなく、
概念として「フィルター」ということにしたのが実態だと考えられます。

内的表象として仕組みを理解しようとすると
”フィルター”とは呼びにくい部分が沢山あるように感じます。


だからといって、これらの説明の仕方を修正する必要があるかというと
僕にはそこまでの思いはありません。

細かく人の仕組みをプログラムとして理解しようとするなら、
心理学やセラピー分野から引っ張ってきた概念は一度横に置いて
その実態としての内的表象を調べたほうが効果的でしょう。
より人の心を的確に捉えられると思います。

しかしサブモダリティの組み合わせを調べて
人の内的表象をイメージとして理解する作業は
決して楽なものではありません。

便宜的に「フィルターとして、こういうのがあります」として
それぞれの着眼点だけ押さえているだけでも、
日常のコミュニケーションには大いに役立つことでしょう。

役立てるだけなら、丁寧に厳密な理解を心がける必要さえないわけです。
そちらのほうが多くの人に広めやすいし、使い勝手も良い。

「厳密にはチョット誤魔化しているんだけど、
 まあ、そういうことでもいいでしょう」
といったことは世の中に多いものです。

NLPも同様です。

ただ僕は個人的に、心を理解したい思いが強かったので
専門家としての理解をやめなかったんだと感じます。

ですから違和感を覚えることは色々ありますけど、
「フィルター」は比喩だと捉えておくことにしています。

cozyharada at 23:17│Comments(0)TrackBack(0)clip!NLP | NLPの基本情報

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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