2015年10月23日

また因果と相関が区別されない

先日、ニュースで
「受動喫煙によって子供が虫歯になる確率が2倍以上になる」
という研究結果が紹介されていました。

この「受動喫煙で2倍になる」という部分は
ニュースのタイトルになっていただけで
論文のタイトルは少し違います。

論文は
 Secondhand smoke and incidence of dental caries in deciduous teeth
 among children in Japan: population based retrospective cohort study
ですから、
 日本における受動喫煙と子供の乳歯の虫歯発生
が主題です。

論文のタイトルでは因果関係を示していません。
こういう表記のときは相関を見ているものです。

実際、論文のデータは子供の虫歯の数や程度を調べ、
その親がタバコを吸うかどうかという条件で分類したもの。

結果は…
 家族に喫煙者がいる子供は全体の55.3%で、その子供が虫歯を持っている割合は
 家族に喫煙者がいない子供と比べて1.46倍。
 特に目の前で吸われる環境にあった子では2.14倍多かった
ということだそうです。

ニュースなどでは「虫歯になるリスクが」とか
「虫歯になる可能性が」などと書かれていますが、紛らわしい表現です。

論文で調べたのは
タバコを吸う家庭にいる子供の虫歯の程度と
タバコを吸わない家庭にいる虫歯の程度を数えた
という話ですから、
「受動喫煙をすることが、虫歯のリスクを高める原因になる」
といった因果関係は示せません。

あくまで関係(=相関)があるだけ。

ニュースで紹介された「2倍になる」という単語は
因果を想像させるため、論文の表記では使えないはずです。



この因果と相関の違いについては科学的にはとても重要ですが
一般的にはあまり気にされないのかもしれません。

僕はここがどうしても気になるので
「またか」という印象を感じてしまいます。


虫歯でいえば、歯の磨き方の影響が大きいと思われます。

もしかしたら、タバコを吸う人と吸わない人では
歯の磨き方に違いがあるかもしれません。

論文を読んだわけではないですから
どういう層からデータを取ったのか知りませんが、ランダムだとすると
喫煙者と非喫煙者の生活スタイルの違いみたいなものは
傾向として出てくるのではないかと想像できます。

どうやって歯を磨くかは生活習慣の問題。
家族ではシェアされやすいでしょう。

歯の磨き方の良し悪しを数値化して評価すれば、
タバコを吸う家族と、吸わない家族での歯磨きスコアも比較できると思います。

もしこれで
 タバコを吸う家族と吸わない家族で歯磨きの程度には差がない
と結論できれば、
 親がタバコを吸う子供が虫歯を持っている割合が高いのは
 歯磨きの仕方のせいではない
と主張できるようになって、
 歯磨きではなくて受動喫煙の影響ではないか
と考察しやすくなります。


「生活習慣や歯の磨き方の違いがあるかもしれない」という話は一例ですが、
相関のデータからは
 受動喫煙すると虫歯になりやすくなる
という結論は出せないんです。

何か他の要因が関係して、虫歯の子供を増やしているかもしれない。

とはいえ、
 双子に同じ生活をさせて、
 片方にはタバコの煙を吸わせ、もう一方には吸わせない
などの実験は倫理的にできません。

となると、分子生物学的に
受動喫煙によって虫歯になりやすくなるメカニズムを説明する
というのが妥当な方向性ということになるでしょう。

もちろん、そうした研究も進んでいるとは想像しますが、
それを待たずして「受動喫煙で虫歯になりやすくなる」と因果関係を示しながら
ニュースで紹介してしまうのは誤解を招きかねないと思うんです。

取材の段階で情報に不正確さが含まれるのは仕方ないかもしれませんが、
入手した情報を表現するときに正確性を心がけるのは
ニュースを発信する側として意味のあることのような気がします。

あくまで相関として紹介したニュースを
視聴者が因果と勘違いするのは個人の責任の範疇だとしても、
伝える側が誤解を減らす努力をするのも
コミュニケーションとして重要なのだろうと感じます。

自分でも気をつけなければならないと思わされました。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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