2016年02月21日

安心してください

前回、とにかく明るい安村の決めゼリフ
「安心してください、履いていますよ」
について、心情として説明をしてみました。

「安心してください」というフレーズは、お笑いという状況の中で
見ている人の心の動きとマッチしていると考えられる、と。

そもそも「履いていないんじゃないか?」とは心配していないところに
ちょっとしたギャップがあって笑いを誘う。

かつ笑いの準備としても、安心できる状態に戻りたい背景があるから
「安心してください」のフレーズが反発されにくい、という話でした。


今回は、日常の場面で「安心してください」と言われたら
人はどのように反応するだろうか?という話です。

「安心してください、履いてますよ」と対比させて考えてみると
 心配している人に対して、「安心してください」のフレーズはマッチするか?
が注目のポイントになります。


そもそも心配している人には、心配したいだけの理由があります。
ネガティブな予想を立てているわけです。
「もしかしたら、〜になってしまうんじゃないか?」と。

あるいは不安になっている場合も想像できます。
こちらは何が起きるか予想できていないために起きる感情です。
「このままだったら、どうなってしまうんだろうか?」のように
漠然とネガティブな想像をする状態。

いずれにしても
 「安心できる状態に戻るために何とかしたい。
  でも、どうしたらいいか分からない。」
のが中核となります。

具体的な対策が分かり、それに集中できれば
とりあえずの安心感が確保できます。

心配や不安には、『最終的に』安心したい動機がありますが、
それは同時に
 安心できる状態に戻りたいからこそ、
 対策を探すために心配や不安をしている
ことでもあるわけです。

言い換えると、
 「安心したい。
  でも、何をしたらいいかが分からない。」
といった葛藤があるんです。


そして2つの気持ちが葛藤している状態では
片方の気持ちにだけ肩入れすると、もう一方に反発が生まれます。

例えば、友人関係で不満があるとします。
ずっと仲のよくしてきた友達グループの一人だから、これからも仲良くしたい。
でも揉め事があってギクシャクしている。

仲良くしたいけれども、仲よくできない状態。

そんなときに
「皆と上手くやっていきたいんだったら、仲直りしなよ」
と言われても
 「向こうが悪いのに、なんで私が折れなきゃいけないの?」
と反発が出ます。

逆に
「向こうが悪いんだから、もうそんなヤツとは仲良くしなくて良いよ」
と言われたら
 「そうしたら皆と上手くやっていけないじゃない」
と反発が出る。

相反する気持ちの片方だけをサポートすると
反対側の気持ちが強まってしまうわけです。

同様に「安心したい、けど何をしたらいいか分からないから不安」なときに
「安心してください」と伝えても、
 「いや、そんなこといったって、どうしたらいいか分からないし…」
と反発が出てしまう可能性があります。

「どうしたらいいか分からない」という不安や心配の種があるから
それを解消したいのが意識の大部分を占めています。

それに対して「安心してください」というのは、その気持ちを否定して
抑え込ませようとするメッセージにも受け取られかねません。


かといって「心配しないでください」というのも使い方が悩ましいものです。

「〜しないでください」という命令は、ときに逆効果になる場合があります。
とくに「〜を考えないでください」のような指示は
聞いた瞬間に考えが頭に浮かんでしまうので、
あえて考えさせるための方法として使われることさえある。

今まで意識に上がっていなかったものを意識化させる効果があるんです。

ですから仮に相手が心配していなかったとしたら、
「心配しないでください」伝えることで、逆に
「あれ、そういえば大丈夫なんだろうか?」と心配が始まるかもしれません。

実際に心配している人にとっては、すでに心配が意識の中で起きていますから
むしろ「心配しないで」と言われることで、
心配を抑えようとする心の動きが始まる可能性はあります。

不特定多数の相手に向けた広告などの文章で心配材料を減らすために
「心配しないでください」と伝えるのは、心配している人には有効かもしれませんが
それまで心配していなかった人を、わざわざ心配させてしまって
逆効果になってしまうこともありえるでしょう。

もちろん心配している人に対してでも
「心配しないでください」は命令になっているわけですから
「安心してください」と同様に、相手の心の動きに沿っていないことにもなります。

その辺を考えると、「心配しないでください」というのも
なかなかリスクの高い言い回しのようです。


そうすると効果的だと思われるのは、
 心配してもいいけど、心配しなくても大丈夫
というニュアンスを強調する方法でしょうか。

心配している状態に対しては「心配ですよね」と同意する。
同意をして相手にペースを合わせてから
「でも心配しなくても大丈夫」と伝える、と。

「大丈夫」は効果的なフレーズとされます。

飛行機のフライトアテンダントも、緊急事態には
「大丈夫です」と言うらしいです。

非常時に心配している人たちに「心配しないでください」というのは無理がかかるし、
「安心してください」と言われると、わざわざ『安心』:を強調されることで
「そんなに強調するってことは、ひょっとして何か特別なのか?」と
逆に想像をめぐらせてしまいかねません。

よくセミナーやワークショップなどで、主催者や講師側から
「ここは安心・安全な場所ですから」などと言葉にして強調されるのを見ますが、
 あえて強調することで対比としての『危険性』や『心配』をあおる可能性もある
というのと同じような話です。

だからこそ、説明はひとまず置いて、安心の方向性へ導く言葉として
「大丈夫です」を使うのだろうと考えられます。

当然、「大丈夫です」と言われた人は
「そうなのか?」と一呼吸つくことはできても、
「どうして大丈夫だって言えるんだ?」と疑問を持つこともあります。

そこで「大丈夫です」の後に、状況説明を付け加える。

「心配ですよね。でも大丈夫です。なぜなら…」と。

こういう流れが一般的に有効なように見受けられます。


もう1つ有効そうなのは、命令ではなくて、状況説明にするという方法でしょう。

「心配かもしれませんが、その必要はありません。」
「心配に思うのも当然です。ですが、実はそれには及びません。」
という感じ。

「心配する必要はありません」も同様です。

この表現は心の動きを変えるように命令しているのではなく、
心配を起こしている状況のほうに注意を向けることで
本人の心の動きに対して、少し客観的になれるように導いています。

心配を生み出している状況かと思っていたが、そうではないという。
じゃあ、いったいそれはどういうことなんだ?
…そのように説明に対して関心が向きます。

これだけでも漠然とした心配の感情からは離れられますし、
説明の内容に納得できれば、感情レベルでも
「ああ、そうか」と落ち着きを取り戻すことができるわけです。

心配という単語で、もしかすると自覚していなかったかもしれない心配事に気づく。
そういうことがあったとしても、心配の感情そのものに振り回されないよう
心配の種(心配を生み出す要因)に目を向けるような言葉だといえます。

そして何よりも、心配や不安は「どうしたらいいか分からない」という
具体的な対策がないことで生まれる感情ですから、
具体的な説明をすることで収まりやすい効果もあるんです。

どうしたらいいか分からなくて不安なところに、
「今は、どうして心配の必要がないかを理解しましょう」
と、具体的な行動指針を示していることにもなります。

より心配を減らすのであれば、心配がいらない理由を説明した後で
「その心配は、こういう理由ですから、こうすれば解消できます」
と対処法まで伝えることも可能です。

飛行機の非常事態のようなケースであれば
 「お客様、大丈夫です。
  今、○○の状態にありますが、●●なので心配には及びません。
  〜をして万が一に備えてください。」
といった説明になるでしょうか。

心配を生む状況を説明して、心配そのものから心配の種に注意を移す。
理由を説明して納得してもらうことで、心配の種を減らす。
具体的な対策を指示して、「何をしたらいいか分からない」状況を無くす。
それによって心配という感情を体から減らしていく、ということです。


心配している人に対しては、
 「安心してください」
よりも効果を期待できる流れがあるように感じられます。

心配している人の心の動きに沿うように言葉の展開を考えていけば、
もっと色々と有効な語りかけが出てくるんじゃないでしょうか。

安心・安全はキーワードのように耳にする言葉になってきた感じがありますが、
本来はそれほど強調される性質のものではないような気がします。

だからこそ「安心してください」がお笑いのフレーズになるんでしょう。

言葉として強調することなく伝わってこその安心。
そういう観点で説明を考えてみるのも1つかもしれません。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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