2016年02月24日

語学の基準の違い

語学をやっていると、たまに
「私は独学で英語を身につけました」
というような人を見かけます。

どの部分を指して「独学」と呼んでいるのかが気になります。


どうも英語の場合、「独学で身につけました」という人は
 英会話スクールに通ったりすることなく
 本を読んだり、自分なりに勉強したりして使えるようになった
ということなんだろうと思われます。

しかし、そもそも英語は教育の中で「学校の先生から教わって」います。

「独学です」という人も、中学・高校ぐらいの英語教育は受けていますし
なんなら大学受験のために結構な英語の勉強もしているわけです。

僕は今、フランス語を勉強していますが、これは一年前に再開したものです。
高校のときに週2時間を3年間、大学で週1時間を1年間やりました。

量でいえば、中学3年間の勉強量のほうが遥かに多かったと思います。
時間割で見ても、英語の授業回数は多かったですし、
そのほかにも高校受験のために塾で勉強をしました。

単語とか文法とか、かなりの練習問題をやった記憶があります。

文法項目としても、動詞の時制は「過去・現在・未来」と一通り、
関係代名詞や分詞などの修飾節も扱ったと思いますし、
助動詞、比較、代名詞、主な接続詞などもカバーしていたはずです。

中学英語の内容でも、きっちり使いこなせば
相当複雑な内容のアウトプットもできるほどです。

ボキャブラリーにしても文部科学省の基準では1500〜1600語ぐらいだとか。

「グロービッシュ」と呼ばれる非ネイティブのための通じやすい英語では
1500語ぐらいを組み合わせてコミュニケーションするそうですし、
ネイティブでも日常の9割の会話は2000語ぐらいから成り立つ
なんていう記事も見かけたことがあります。

中学英語をキッチリやれば、それだけで英語の土台はかなりできている、と。

実際、僕の高校時代の英語の授業は、洋書をひたすら読解するだけでしたが
辞書さえあれば、時間をかけてなんとか内容を追いかけられました。

高校に入ってから習った(と思われる)仮定法やさまざまな構文も
結局は表現のバリエーションを増やすためのものでしかなかった気がします。


対比としてフランス語を考えると、文法事項として関係代名詞など
英語と共通する部分の学習スピードが上げられたため
中学英語よりは高校のフランス語のほうが進みは早かった印象があります。

とはいえ授業時間数は中学英語よりも少ないし、塾にも通っていません。
時間あたりに覚える必要のあった量は増えている一方、
勉強時間は圧倒的に少なかったはずです。

だからこそ大学1年までフランス語をやって、期間としては4年あったけれど
テスト前の勉強を入れてもトータルで300時間程度だったと思います。

たぶん中学英語にさえ遠く及ばない時間でしょう。

文法項目としても(フランス語のほうが複雑ですが)中学英語レベルまで
一通りカバーすることなく、僕の学生時代のフランス語教育は止まりました。

今、フランス語を再開して、復習もしながら取り組んでみて分かったのは
僕が学生時代に扱った範囲は、初級レベルを終えていなかったということです。

ヨーロッパ(アメリカは含まない)には外国語習得のレベルの基準として
 CEFR (Common European Framework of Reference for Languages、
      外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠)
と呼ばれるものがあります。

A1、A2、B1、B2、C1、C2の6段階。
A1が初級で、C2が上級にあたりますが
A1も検定試験を受けるので、ある程度の勉強をした後の状態になります。

僕がイメージする感じだと、
海外旅行で基本的な情報交換ができるぐらいでA1という感じでしょうか。
A2なら現地でなんとか生活ができるぐらいかもしれません。

B1だと、やっと学校についていけて留学も可能な感じ。
B2なら専門分野をスムーズにやり取りできるので、
その言語でビジネスや学問を着実にこなせる状態。

C1までいくと分野を選ばず流暢なコミュニケーションができて
自分の言いたいことをニュアンスに沿って選べるような感じ。
通訳でもC1レベルの人は大勢います。
現地の仕事で採用されるときには、言葉の問題で足を引っ張らないレベル。

C2は日本人が辿り着くには大変なレベルで、
文法構造が似ている欧米の言語圏だからこその区別といった感じでしょうか。
イタリア語とスペイン語なら似ているので、C2にも辿り着きやすい、と。
ほぼネイティブ並みといった段階のようです。

で、僕が学生時代にカバーしたフランス語の範囲はA1を終わって
A2には受からないぐらいまでです。

今使っている教材が最後まで行くとA2をカバーできますが
日本の一般的なフランス語「レッスン」の基準では
「上級レベル」とされる講座を終わって、やっとA2です。

そこから習ったものを全て身につければA2のテストには受かるだろう、と。


なお、僕は去年半年ほどスペイン語も勉強しましたが、
こちらは完全にゼロからスタートしたものです。

アルファベットの読み方をやって、「私の名前は〜」とか、数の数え方とか
まさに日本の英語教育の出発地点と同じようなところ。

かなり急いで進む講座でしたが、それでも半年ではA1の教科書の半分まで。

同じラテン語系ですからフランス語と対比させると
僕の中ではフランス語のほうが学習が進んでいるのを実感できました。

A1とA2のレベルの違いも体感的に納得できている気はします。

フランス語もスペイン語もヨーロッパ言語ですからCEFRの基準に乗ります。
しかし日本の外国語学習の一般的な基準だと「上級講座」でもA2に満たない。

CEFRの上級をC1・C2、初級をA1・A2ぐらいだとすれば
日本の外国語レッスン基準では「上級」にあたるものが
ヨーロッパの基準では「初級」にも辿りついていないことになります。
  (※老舗のフランス語学校ぐらいはB1以上のクラスもやっています)

日本語とヨーロッパ言語の違いの大きさが
このギャップを生み出すのでしょう。

それだけ日本人にとっての外国語(ヨーロッパ言語)習得は道のりが長いようです。


ところが話を英語に戻すと、事情は少し違ってきます。

中学英語でも、CEFRのA1基準は超えているんじゃないでしょうか。

CEFRのA1は英検だと3級ぐらいとされています。
中学生で英検3級は充分に可能な範囲です。

先にも触れたようにグロービッシュの考え方では、中学英語+αでも
かなりのコミュニケーションができるとされています。

文法事項やボキャブラリーとして
表現のバリエーションを広げることを考えなければ、
他に必要なのは運用のためのトレーニングということになります。

高校英語では、文法項目としてそうしたバリエーションを広げます。
そして長文読解に慣れつつ、ボキャブラリーを増やしていく。

大学受験で英語を勉強するような段階になれば
実のところ、かなりの英語の知識を身につけることになるようなんです。

ある英語の指導者は、英検1級に合格するのには
大学受験の文法参考書をカバーすれば充分だと言っていました。

高校までに習う内容で、かなり高度な英語まで扱える土台が身につく、と。

ボキャブラリーについては積極的に増やす必要があるようですが
それでも受験参考書のレベルでも重要単語は抑えられるみたいです。

「高校英語をキッチリ抑えれば英検準1級には受かる」という人もいますから
高校までで相当な範囲をカバーしているといえそうです。

CEFRでいえばB2ぐらいでしょう。
日本のよくある英語教育の基準に照らすと、B2は「中上級」とされます。

ですから、中学英語で「初級」の上のほう、高校までの教育で「中級」、
受験英語で頑張ったら「中上級」までは行っているということです。

高校まで終われば、英語の「知識」としては「中級」以上なんです。
(忘れなければ、ですが)

授業時間数だって英語は多いですし、
日常生活にもカタカナ語として英語は溢れています。

日本人はかなり英語を「知っている」んです。

ゼロから始まる他のヨーロッパ言語では
A2レベルまで到達するのだって、結構な時間と労力を要します。

だから日本国内では「上級講座」になる。
ヨーロッパの基準でいえば、内容は「初級」レベルなのに、です。

一方、日本国内の英語教育のレベルは、ヨーロッパの基準に沿っています。

そして語学学校に通うまでもなく、高校教育を終えたところで
ヨーロッパ基準の「中級」から「中上級」ぐらいの知識が身につく。

教育の過程で、結構な英語の勉強をしているわけです。


ただ、日本の英語教育は英語の知識が重視されて
英語を使うためのトレーニングの要素が少ない。

だから英語を使えない人が多いとされてしまうんでしょう。

高校卒業の英語レベルから英検1級に受かろうと思ったら、
 ・英検1級用の単語帳でボキャブラリーを増やす
 ・模擬テストや過去問で長文読解のトレーニングをする
 ・リスニング教材や過去問を使って聞き取りの力をつける
 ・スピーキングのトレーニングとして英会話の時間をとる
あたりが必要になると思われます。

逆にいえば、これは英語についての知識の問題ではなく、
知っていることを使えるようにするための練習です。

頭の中に溜まっている情報を繋ぎ合せるトレーニングをして、
アウトプットのスピードを上げるだけのことです。

繰り返して、慣れて、自然にできるようにする。
反射的にできるようにするという意味では
スポーツのトレーニングと変わらないはずです。

知識を運用するにはトレーニングが必要。
でも知識は多くの人が、かなり持っているんです。

他の言語を勉強すると痛感します。
英語と比べると、圧倒的に知識が足りない。

知識を蓄えるところから始めないといけません。

それに比べると、英語は運用のトレーニングをしながら
知識を少しずつ増やしていくこともできます。


日本の英語教育には賛否両論あるようですが、
日本人はかなりの英語を知っているとは言えるはずです。

そしてその知識の大部分は学校教育で培われています。

「独学で英語を身につけた」という人は、確かに
トレーニングの部分を自分一人でやったのかもしれません。
語学学校に通ったりせずに。

でも土台となる英語の知識は
 「英語の先生から教わった」
のではないでしょうか。

日本の英語教育は
 ここまでやったら、あとは本人のトレーニング次第で身につく
という土台を築いてくれている気がします。

他の言語を最初からやろうとすると、
学校教育で一通りやった英語のレベルまで追いつくのが
どれだけ大変なことかも感じられると思います。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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