2016年02月29日

統合と合成

NLPや心理療法では『統合』という言葉を使うことがあります。

「複数の物をまとめて1つにする」といった言葉ですが
まとまって「出来上がった1つのもの」に焦点があたる傾向にあるようです。

比較として挙げておくと、『合成』も
「複数の物を合わせて1つにする」という意味でありながら
「1つにまとまっていく」プロセスに焦点が当たっているように思われます。

その意味では、『統合』のほうが
「(全体という)より大きなものの一部になる」
ニュアンスがありそうで、
『合成』では元のものの量や大きさにはかかわらず
「(合成される)元のものは全て対等に「素材」として扱う」
ニュアンスがあるように感じます。

AのほうがBよりも大きくて影響力も強いとしたら
『統合』する場合、「AにBが統合される」といった表現も可能で、
『合成』する場合は「AとBを合成する」のようにニュートラルな表現になる、と。

ですからNLPや心理療法で『統合』という言葉が使われる場合も
やはり「より大きなものになる」という意味合いがあるように感じます。


NLPには「葛藤の統合」の手法があって、資格取得コースでも紹介される
かなりスタンダードな方法の1つだといえます。

「Aしてしまう」心の一部と、「Bしてしまう」心の一部が葛藤している。
それを『統合』しましょう、というんです。

作業としては「Aしてしまう」部分と「Bしてしまう」部分だけを扱って
2つをくっつけ合わせるような段階を含みます。
ですから「AとBを合成している」印象も受けるわけです。

しかしここで使われているのは『統合』という単語です。
2つの心の部分が一体となった後で出来上がるものに焦点が当たっている。

「AとBをくっつけてCを合成する」という話ではないんです。

実際、手法を使った後の心の状態を見てみると、
この作業は『統合』なんだということが実感できます。

最終的には、心の一部が全体に『統合』されます。


「〜してしまう」という心の働きは、
自分でコントロールできていない感じがするものです。

ですから「…したいのに、〜してしまう」とか「〜したいのに、〜できない」とか
そういった形で「思い通りにならない」こととして問題視されます。

ここで問題視しているのは「〜したい」と願っている心の部分です。

その願望に普段から気づいていて、それが自分にとって当たり前になっている。
馴染みがあるから、それを「いつもの自分らしい」と認識するんです。

この「いつもの自分らしい」心の範囲が、一般的に『意識の心』と呼ばれます。

意識の心は、ただ普段から意識に上がることの多い心の部分であって、
意識に上がるからこそ、その心の動きが望んでいることにも気づきやすい。

いつも意識に上がっている心の範囲を「自分」として認識することになって
(知っている自分を「自分とは○○だ」のように自己認識する)
意識に上がりやすい心の範囲の性質を「自分らしさ」として捉えます。

それが「自分」という「意識の心」の範囲です。

裏を返せば、「自分」として認識している「意識の心」の範囲から外れた部分
(つまり普段は意識に上がらず、知らない心の部分)については
「無意識の心」として、「自分」ではコントロールできないものと感じるということです。

こちらの「無意識の心」の範囲が担当している働きは、
「〜してしまう」とか「〜できない」のように
望ましくない物として認識されることになります。

そのためNLPや心理療法で扱っている葛藤は
「…したい」という「意識の心」の働きと
「…ではないことをする」という「無意識の心」の働きが
 意識の心の認識からは『対立』しているように見える
という状態だといえます。

客観的にニュートラルに捉えれば
 「…する(Aする)」働きと、「…ではないことをする(Bする)」働きが同時にある
だけのことです。

が、「…する(Aする)」ことが日頃から意識に上がっていて
その結果として「自分らしい」と認識していると、
「…ではないことをする(Bする)」のは、「自分らしくない」ことになります。

だから
 「…したい(Aしたい)のに、…ではないこと(B)をしてしまう」
のような表現で語られるわけです。

一部だけしか気づいていないことで、意識の心の範囲から外れたものは
「自分らしくない」と捉えられてしまう。
そこに問題意識が生まれていると説明できます。


で、葛藤の『統合』をしようという話になります。

一般的に期待されるのは、意識の心の願望に近づけたい方向性です。
 「…したい(Aしたい)のに、…ではないこと(B)をしてしまう」
なら
 「…できる(A)できるようになる」
という結末。

しかし、その方向性は『統合』とはいえません。

『統合』は、できあがったより大きなものに焦点を当てます。

ここでは、気づいていなかった『無意識の心』の範囲の働きを自覚して
それを意識できるようにしていきます。

そうすると今まで『無意識の心』が担当していた(と認識されていた)ことが
『意識の心』の一部分になるんです。

つまり『無意識の心』の一部が『意識の心』に統合される、と。

そして出来上がったものは、やはり『意識の心』です。

ただしそれは元の『意識の心』のままではありません。
今まで無意識だった範囲が追加されていますから
『意識の心』が広がったことになります。

『意識の心』として日頃から自覚されるものを「自分らしい」と知るわけなので
『意識の心』の範囲が広がれば「自分らしさ」もまた広がります。

「自分らしさ」が変わるんです。

ですから
「…したい(Aしたい)けど、…ではないこと(B)をしてしまう」などの問題は
最終的に
 「AしたいからAをするし、BしたいからBをする」
というシンプルな願望の間での選択に変わります。

対立がなくなるわけではないんです。

「対立している」と認識していた「自分らしさ」がなくなるんです。

問題は「対立していること」ではなく、
「対立」という認識を生むような心の偏りだった、ということです。

意識されていなかった心の部分に気づき、
そちらも意識の範囲に『統合』していくことで、
偏った意識の仕方をバランスの良い全体として整える。
そういう作業だといえます。

『統合』で、できあがった全体のほうに焦点を当てるのだとすると
葛藤の統合で最も変化するのは、まさに『全体』のほうなんです。

自分らしさとして認識されている意識の範囲全体のこと。

こちらが変わります。
いわば「自分」が変わるんです。

問題が「今までの自分」に都合良く修正されるのではなく、
「今までの自分」が「新しい自分」に変わる。

そういう性質のプロセスだといえます。

そんな風に考えると『統合』という言葉は、言い得て妙なんだと思います。

cozyharada at 23:13│Comments(0)TrackBack(0)clip!NLP | NLPの基本情報

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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