2016年06月22日

待たされるのを諦められる

この前、パスポートの更新に行ってきました。
10年用だったので、当然ですが10年ぶりの作業でした。

交通の便からしても、また10年前に行ったところと同じという理由からも、
新宿の東京都庁の地下にある発券所へ行きました。

ちょうど都知事のニュース絡みで多くの人が集まっていたり、
社会科見学の中学生がいたりと、とても賑やかな感じ。

10年前のことはスッカリ忘れていましたが、パスポート申請のところにも
平日の昼間だというのに結構な行列ができていました。


申請のために、まず申請用の書類に記入が必要でした。
それから必要書類や写真の一式をもって窓口に並ぶ。

この窓口のシステムが少し面白いものでした。

いきなり正式な手続き窓口には並ばない仕組み。
まずは書類や写真の不備がないかをチェックする窓口があります。

細かく確認をしてくれる担当者がいて、書類に穴がないようにしてくれます。
それから正式な手続き窓口のほうへ移動する。

正式な窓口のほうでは書類を出すと、あっという間に作業をして
すぐに受取日の連絡まで、一気に段階を進めてくれました。

事前にチェックが済んでいるからこそ、スピーディーに行けるんでしょう。

ところが、この事前チェック窓口と、正式な手続き窓口とで
数に偏りがあるんです。

正式な手続きのカウンターは横に長く、沢山の人が座っていて
大きめな銀行の窓口のような形をしています。

一方、事前チェックの窓口は3つしか受付がない。
なので入口の近くから窓口に向かってズラッと行列ができています。

それを横目に、奥にある正式な窓口カウンターの前はガラガラで
待合のイスも人がほとんど座っていない状態。

あきらかに最初のチェック段階で詰まっていました。

しかも僕が並んだときには外国人の手続きに手間取っていたようで
3つの内の1つの受付が全く進まず、事実上2つの窓口で対応する形。
当然、行列は長くなります。

そういう事情は僕の行ったときだけだったのかというと
どうもそうではないようで、後日パスポートを受け取りに行ったときも
やっぱり申請所の前には行列ができていました。

書類チェック用の窓口が足りないんだと思われます。

安易に考えると、正式な申請用の窓口のいくつかを配分して
チェック窓口と手続き窓口を同じぐらいの数に調整すれば良さそうですが、
何かの事情があるのかもしれません。


そのうちの1つは、僕が経験した限りではスタッフの処理能力です。

チェック窓口に求められる知識やコミュニケーション能力は、
正式な手続きの窓口で決められた作業を繰り返す能力と比べて
ずいぶんと高いものだろうと考えられます。

外国人が並ぶこともあれば、まったく手続きを知らずにやってくる人もいるでしょう。
必要な書類が足りないまま訪れてしまって、無駄足になる人だっているはずです。

事前にホームページなどで調べれば戸籍謄本が必要なことは分かりますが
普通に区役所に行くようなつもりで何も持たずに来てしまう人もいると思います。

戸籍謄本の発行は東京都ではなく、市区町村が行っていますから
人によっては遠いところまで取りにいかないといけません。
その苦労を考えると、二度手間になるのは気の毒です。

もちろん、自分で調べもしなかった責任があると言われればそれまでですが、
そういう風に考える人が全てではありません。
むしろ「教え方が不親切だ!」、「誰もがインターネットで調べられるわけではない!」
などと怒る人だっている可能性があります。

そういう厄介な事情に対応するだけのコミュニケーション技術も
事前チェックの受付には求められるはずです。

実際、僕も今回は、写真の件で二度手間になってしまいました。

ホームページで調べて証明写真が必要だと知っていたので
近所のスピード写真でパスポートサイズの写真を撮って、持参していたんです。

本籍地の区役所にも行って戸籍謄本を取るために並び、
色々と移動をしてから都庁のパスポート発券所までやってきた。

「面倒なことをこなしてから最終地点にやってきた」という印象がありました。

ところが僕が持ってきたスピード写真は、メガネに光の反射が写り込んでいて
パスポート用には使えないというんです。

このとき、ドライに事務的な説明をする人であれば
 「メガネが反射して光っている写真は使えません。
  もう一度撮り直して来てください。」
のように伝えて終わりでしょう。

しかし窓口担当者は、申請に来ている人の気持ちを汲み取る能力を持っていました。

分かりやすく問題点を指摘するだけでなく、ダメな理由も教えてくれます。
しかも、ダメな理由を手続き上の問題としてではなく、
申請者個人のトラブルの原因として指摘してくれました。
 「あー、こうやってメガネが光ってしまっていると、パスポートに使えないんですよ。
 ごめんなさいね。これだと目の色が分からないでしょう。
 海外だと目の色で本人かどうかを確認するので、
 この写真でパスポートを作ってしまうと、海外に行ったとき
 入国審査でなかなか通してもらえないと思います。
 ちゃんと目の色が分かるようにメガネが反射していない写真にしてもらえますか?」

そのうえで、写真を撮り直せる近くの場所も教えてくれて、
心配だったらメガネをはずして写真を撮っても良いとも指示してくれる。

(受付の部屋の目の前に、パスポート用写真でビジネスをしている写真屋があるのに
 半額ぐらいで済む普通のスピード写真の場所まで教えてくれました)

しかも、一通り説明をしたうえで、こちらの気持ちを配慮した気配りまで。
 「せっかく写真を持ってきてくださったのに、
 無駄になってしまって申し訳ありませんね。
 お手数ですけど、撮り直してきて、また持ってきてもらえますか?
 今、並んで待っていただきましたから、写真を撮って戻ってきたときは
 もう並ばないで結構ですからね。
 こちらをスタッフに見せていただいたら、そのまま手続きに進めますから。
 じゃあ、すみませんけど、お願いします。」

実際の負担として並ぶ必要がないようにしてくれていますし、
手間とお金が無駄になったことへの気配りも示してくれました。

それだけで気分よく手続きを進められると思います。


それに対して、チェック後の手続きのカウンターは、実に淡々としたもの。
ひたすら作業内容をこなし、こちらの質問にも素っ気なく返答するばかり。

手続きが終わっているのかどうかさえ不安になるぐらいのものでした。
スタッフとして自分の作業を完了させるのが意図になっている感じ。

どれぐらいの経験のある人なのかは分かりませんが、
書類に書かれたものを入力して、パスポート作成の流れに乗せ、
あとは申請者に受け取り日時の紙を渡すだけですから、
事前チェックと比べると随分とシンプルな作業だと思われます。

パスポートに関する実情について知識が豊富で
受付窓口としてのコミュニケーションにも長けている人が事前チェックを担当して、
慣れていない人が申請書類処理のほうを担当する。
そういう区別があるとも推測できそうです。

あとは事前チェックの窓口を担当できるスタッフが何人いるかという話。
確実性を採ると、正規のカウンターを余らせることになって
事前チェック窓口に行列ができるとしても、今の形に落ち着くのかもしれません。

もし無理やりチェック用のカウンターを増やしてトラブルが多くなってしまったら
そちらのほうが問題になる可能性もあります。

つまり現状のスタッフの教育レベルでは
この形が最善という判断かもしれない、という見方です。


僕個人の印象としては、
行列ができる場所には工夫の余地がありそうだったとはいえ
一番厄介なはずの書類確認を気分よく通過できるのは助かりました。

行列に並ぶのは「混んでいる」という理由づけだけで
意外と我慢できるものなのかもしれません。
日常生活のなかで並んで待つことは少なくありませんから。

とくに長く待つ回数が少ないのは喜ばれると思います。

これが仮に、書類チェックで並び、写真撮影で並び、書類申請で並び、
手続き終了のアナウンスまでにも並ぶ…などとなれば
トータルの待ち時間が同じだったとしても不満は溜まりやすい気がします。

目に見えて分かる行列の長さを指標に、一度必要なだけ待てば
あとはスムーズに待たないで手続きをしてもらえるという形は、
最初に覚悟したハードルだけを越えれば良いので
それ以上の不満が溜まっていくリスクは少ないと考えられます。

同じ込み具合を処理しなければいけないんだとすると、
一見するとアンバランスとも思える窓口配置が
実は効果的なんじゃないかと感じました。

役所の手続きのように、満足感を提供するタイプではなく
問題なく当たり前が維持されるのを期待されるタイプの仕事では、
不満を最低限に抑える工夫が重要なのかもしれません。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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