2016年08月12日
『あなたは、なぜ、つながれないのか』
珍しく購入した本の中に、興味深いものがありました。
こちらです。
『あなたは、なぜ、つながれないのか:ラポールと身体知』(春秋社)
著者の高石宏輔という人物は、カウンセラーとして活動しているそうですが、
以前は水商売のスカウトやナンパなどもやっていたとのことです。
元々あった対人恐怖やパニックを乗り越えるキッカケとなった催眠を学びながら
自らのコミュニケーションの幅を広げるために
街中で人に声をかけることを沢山重ねていたようです。
ここまでは、まあ、結構聞くパターンでしょう。
カウンセリングと催眠の両方に興味を持つ男性の中には
対人関係への苦手意識からナンパを実践する人たちがいます。
この著者がチョット違うのは、そこからさらに体の使い方に興味を持ったところ。
身体意識を高める方向でコミュニケーションを磨こうとしていったみたいです。
どういう経緯で身体の使い方に興味を持ったのかは定かではないですが、
催眠関係からだと野口整体を知って、それからボディワーク全般に広がる…
という流れは比較的よく耳にします。
ともあれ、ボディワークと呼ばれる身体の使い方をコントロール方法を追求し、
身体意識を高めて敏感にすることで、自分の想いを適切な形で表現し
それによって、上辺だけの、言葉だけのコミュニケーションとは違った
深い心の交流を目指すようになったのだろうと思われます。
そして僕がこの本を紹介している一番の理由は、
『身体的な同調』という科学的に根拠が分からない現象を
当然のこととして詳しく解説しているところにあります。
身体的な同調こそが心の繋がりと対応するものだ、と。
いわゆるラポールのテクニックとしてのミラーリングとは真逆に、
身体への意識の向け方と、コミュニケーションの最中の注意の方向を変えていくと
身体的な同調は自然と起きるようになっている。
そのあたりを体験談を交えながら詳しく解説しています。
そのうえで身体意識のトレーニング方法として
ボディワークの練習方法が紹介されている。
そんな感じの本です。
なお、『同調』という現象そのものは、実は心理学でも扱われます。
英語の論文だと「 synchronization 」と書かれるようです。
ただし心理学ですから
どういうメカニズムで同調が起きるか?
は詳しくは解析できません。
「どういうときに」、「どういう関係性だと」同調が起きるのか?
そのあたりが中心でしょう。
一方、ラポールのテクニックとしての「ミラーリング」もまた心理学でも扱われます。
「ミラーリング」はNLP用語です。
心理学の論文では「 mimicking 」と書かれることが多い印象です。
「相手の真似をすると、どういう効果があるか?」を調べる研究が中心でしょう。
ちなみにNLPはミラーリングを、ミルトン・エリクソンのセッションを分析していて
相手に合わせる手法として紹介したみたいですが(出典不明)、
エリクソンがやっていたのは明らかに『同調』のほうに見えます。
同調ということを知らない初期段階では
エリクソンが真似をしているように見えたのかもしれません。
エリクソンはクライアントの心と深く繋がることで
自然と身体に同調という現象を起こしていたのだろうと思われます。
エリクソンは小児麻痺の影響で全身麻痺になったところから
意識的に自分の身体を動かせる状態にまで、自分で回復させた人物です。
どういう風に意識を向けると身体が動くのかをコツコツと調べ続け
全ての動作を17歳を越えてから再学習したわけです。
当然、身体への意識は一般人の範囲を大きく超えていたはずです。
そういうエリクソンのような身体意識の使い方をしながら
目の前の相手に注意を向けると、自然と身体は同調する。
この本とエリクソンの話は直接的に関係していませんが
同調という現象を丁寧に解説している本は滅多にありません。
トレーニング自体は本だけではなく、誰かに教わったほうが良い気がするものの
この内容をまとめているのは貴重だと思います。
著者が文学部出身のせいか、文章には文学的な雰囲気があります。
理系だった僕には馴染みの薄い文体。
好きな人は引き込まれるかもしれません。
好みの範囲を抜きにしても、大事な内容が書かれた本でしょう。
こちらです。
『あなたは、なぜ、つながれないのか:ラポールと身体知』(春秋社)
著者の高石宏輔という人物は、カウンセラーとして活動しているそうですが、
以前は水商売のスカウトやナンパなどもやっていたとのことです。
元々あった対人恐怖やパニックを乗り越えるキッカケとなった催眠を学びながら
自らのコミュニケーションの幅を広げるために
街中で人に声をかけることを沢山重ねていたようです。
ここまでは、まあ、結構聞くパターンでしょう。
カウンセリングと催眠の両方に興味を持つ男性の中には
対人関係への苦手意識からナンパを実践する人たちがいます。
この著者がチョット違うのは、そこからさらに体の使い方に興味を持ったところ。
身体意識を高める方向でコミュニケーションを磨こうとしていったみたいです。
どういう経緯で身体の使い方に興味を持ったのかは定かではないですが、
催眠関係からだと野口整体を知って、それからボディワーク全般に広がる…
という流れは比較的よく耳にします。
ともあれ、ボディワークと呼ばれる身体の使い方をコントロール方法を追求し、
身体意識を高めて敏感にすることで、自分の想いを適切な形で表現し
それによって、上辺だけの、言葉だけのコミュニケーションとは違った
深い心の交流を目指すようになったのだろうと思われます。
そして僕がこの本を紹介している一番の理由は、
『身体的な同調』という科学的に根拠が分からない現象を
当然のこととして詳しく解説しているところにあります。
身体的な同調こそが心の繋がりと対応するものだ、と。
いわゆるラポールのテクニックとしてのミラーリングとは真逆に、
身体への意識の向け方と、コミュニケーションの最中の注意の方向を変えていくと
身体的な同調は自然と起きるようになっている。
そのあたりを体験談を交えながら詳しく解説しています。
そのうえで身体意識のトレーニング方法として
ボディワークの練習方法が紹介されている。
そんな感じの本です。
なお、『同調』という現象そのものは、実は心理学でも扱われます。
英語の論文だと「 synchronization 」と書かれるようです。
ただし心理学ですから
どういうメカニズムで同調が起きるか?
は詳しくは解析できません。
「どういうときに」、「どういう関係性だと」同調が起きるのか?
そのあたりが中心でしょう。
一方、ラポールのテクニックとしての「ミラーリング」もまた心理学でも扱われます。
「ミラーリング」はNLP用語です。
心理学の論文では「 mimicking 」と書かれることが多い印象です。
「相手の真似をすると、どういう効果があるか?」を調べる研究が中心でしょう。
ちなみにNLPはミラーリングを、ミルトン・エリクソンのセッションを分析していて
相手に合わせる手法として紹介したみたいですが(出典不明)、
エリクソンがやっていたのは明らかに『同調』のほうに見えます。
同調ということを知らない初期段階では
エリクソンが真似をしているように見えたのかもしれません。
エリクソンはクライアントの心と深く繋がることで
自然と身体に同調という現象を起こしていたのだろうと思われます。
エリクソンは小児麻痺の影響で全身麻痺になったところから
意識的に自分の身体を動かせる状態にまで、自分で回復させた人物です。
どういう風に意識を向けると身体が動くのかをコツコツと調べ続け
全ての動作を17歳を越えてから再学習したわけです。
当然、身体への意識は一般人の範囲を大きく超えていたはずです。
そういうエリクソンのような身体意識の使い方をしながら
目の前の相手に注意を向けると、自然と身体は同調する。
この本とエリクソンの話は直接的に関係していませんが
同調という現象を丁寧に解説している本は滅多にありません。
トレーニング自体は本だけではなく、誰かに教わったほうが良い気がするものの
この内容をまとめているのは貴重だと思います。
著者が文学部出身のせいか、文章には文学的な雰囲気があります。
理系だった僕には馴染みの薄い文体。
好きな人は引き込まれるかもしれません。
好みの範囲を抜きにしても、大事な内容が書かれた本でしょう。