2016年09月16日

人間的成長

『成長』というと、なんだか
「もっと良くなること」のようなイメージを持っていました。

何かの技術を身につけたり、
前よりももっと上手く対応できるようになったり、
今までどうにもならなかったことに対処できるようになったり。

つまり「上達」や「向上」と結びつけていたようなところがあったと思います。

これは僕だけの話ではないかもしれませんが。


ここで「良くなる」というのは
 何かの目的に沿っていて、目的とするほうへ向かうのに役に立つ(効果的)
ことだといえます。

技術を身につけるにしても、その技術はその分野の中で役に立つもののはずです。

例えば、コミュニケーションの技術としてコーチングの質問を学んだとしたら
それができることでコミュニケーションに役に立つという前提がある、と。

もっというと「コミュニケーションに役に立つ」という中にも
 誤解がなく、もめごとがなく、お互いが気持ちよくいられて、
 しかも自分が望んでいるような関係性に進んでいく
などの想定があるでしょう。

仕事の技術においても、その仕事で求められる成果を出しやすくなるのが
「良くなる」という意味に当たると考えられます。

僕が書道の技術を磨いて上達しようとし続けているのも
書道の分野における基準に沿ったことがしやすくなる(=役に立つ)方向性です。

あるいは野球のバッティングで苦手な内角に対応できるようにするのも
「ヒットを打って得点に繋げる」という野球の目的に沿っています。

こういうのは「向上」なんだと思います。
「良くなっている」ということ。


ただ、気にしないでいると「良い」とされる内容に対して
それが当たり前のことのように捉えてしまいがちなようです。

「良い」とされることには目的とする方向性がセットになっている。
「こっちの方向に進むものだ」という想定があるわけです。

この想定を意識に上げなくても、頭の中で省略してしまって
「これが良いこと」という想定だけで対応できてしまいます。

そもそも何を求めていたのかを知らなくても
「これが良いことだ」と与えられた基準だけで
「向上」しようとすることもできます。

スポーツぐらいならシンプルだから心配には及ばないかもしれません。
ルールが設定されていて、競技の目的も決まっています。
ルールの中で決められたゴールに近づきやすくする努力が役立ちます。

ところが「良いコミュニケーション」とかになると
何をもって「良い」とするのかも曖昧です。

もめごとがないほうが「良い」のか、
積極的に意見交換がなされるほうが「良い」のか、
自分の思い通りに他人を動かすのが「良い」のか、
思いつくままに全てをぶつけ合うのが「良い」のか、
お互いを思いやって気を配るのが「良い」のか?

目的とする方向性が一概に定まらないわけです。
あくまで好みの問題。
価値観です。

ですから言い換えると、「良い」とは
 特定の価値観を満たすのに役立つこと
となります。

実際、英語のアカデミックライティングやディベートなんかだと
「○○が良い」という主張をするために話を組み立てますが、
そこでは「○○の選択をすると△△の価値観を満たせる」というポイントが
『理由』となります。

しかしこうした主張はどこまでいっても
「ある価値観を満たすのに効果的だ」という話でとどまり、
「価値観Aと価値観Bではどっちが大切か?」という結論には至りません。

価値の順列に基づいて最終的な結論を出すのは
もうただの好みでしかありません。

そうなると社会一般で「良い」とされていることだって
「暗黙のうちに文化で共有されている価値観に沿っている」
ぐらいの話だと思えてきます。

そういう風に考えると、「良くなる」ということは非常に曖昧なものだと感じられます。

スポーツや学校の勉強のように基準がハッキリした中での「良い」はともかく、
人生全般や人間関係などのように多様な価値観の中での「良い」となると
何をもって「良い」とするかは難しいものではないでしょうか。


その一方で、世の中には「人間的成長」とか
「個人としての成長」などの表現があるようです。

僕自身も「人としての成長」といった曖昧なものを
「良くなること」という更に曖昧なものと結びつけていたところがあります。

「人間として良くなる」とはどういうことでしょう?

この疑問に1つの結論を出すのは大変そうです。

ですが「成長」と「良くなる」を別物とすれば
「人間的成長」に関しては理解がしやすくなると思われます。


そもそも「成長」は「植物が成長する」、「子供が成長する」などのように
ただ「大きくなる」のような意味がありそうです。

もちろん進化論的に考えれば、大きくなることには
生存や子孫を残すうえでのメリットがあるのかもしれませんが、
もっといえば、植物や動物の成長はあくまで自然な時間経過です。

種から芽が出て、幹を太く、枝を広げながら大きくなっていく。
植物はそうなっています。

魚も時間がたつほどに大きくなっていきます。
広大な海の中で大きいことに何のメリットがあるかは分かりませんし、
身体が大きいほど餌の必要量が増えるデメリットもあるでしょうが、
それでも大きくなっていきます。

そういう自然な時間経過に伴った変化としての『成長』もあるようです。

人間的成長についても、自然と変化していくことだと捉えれば
それが良いかどうかとは無関係に捉えられそうです。

「なるようになっていく」という意味での成長には
「良くなる」かどうかとは別の話として
受け入れやすいニュアンスがあるような気がします。

できなかったことができるようになる「上達」は喜ばしいでしょうし、
目的に役立つ技術を身につける「向上」も楽しいものです。

ただ、そういうのとは別に
成長とはきわめて自然に起きることじゃないかと思った次第です。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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