2016年12月01日

言語のメタ認知

母国語であっても間違って覚えていることは意外と多いもののようです。
しかも間違っているかどうかにも本人は気づけません。

僕の場合、学生時代から「傾向性」という単語が気になっていました。
研究発表でデータを解説するときに「〜な傾向性が見られます」
のように言う人がいたんです。

「性」の部分は「〜な性質」、「〜な特徴」を述べています。
例えば「積極性」となれば「積極的な性質」つまり「積極的に行動する傾向」です。
「性」は「傾向」と同じような意味だといえます。

いわば「〜な傾向がある傾向が見られます」のような感じ。

実際に辞書で「傾向性」をひくと単語そのものは存在していて
それはもっと抽象度の高い意味、つまり
「傾向を持っている性質」ということになります。

例えば「動物の行動には傾向性がある」など。
「動物の行動はランダムではなく、ある傾向を示す」という性質を述べる場合です。

もちろん僕が研究発表で聞いた「傾向性」はこっちのニュアンスではなく
「傾向」そのものの意味で使われていました。

このあたりのことは「なんとなく多くの人の使い方と違う気がする」という
違和感のレベルで気づくことはできます。

が、そこから辞書で調べようとでもしない限り
違和感のままで流されてしまうことが多いのではないでしょうか。

違和感さえも抱かなければ、意識にさえ上がりません。

僕の場合、「傾向性」は違和感として記憶に残っていたんです。
そのあとも何人か「傾向性」ユーザーと出会いました。
もちろん指摘しませんし、そのことについて話すこともありません。

ところが英語を勉強するようになって
「傾向」にあたる単語「 tendency 」を使おうとするうちに、
外国語だからこそ言葉の使い方に慎重になってきたようです。

「 tendency =傾向」という翻訳だけでは使い方がよく分からず
結局のところ、英語のままで「 tendency 」の使い方を気にするようになりました。

結果として日本語での「傾向」についても理解が深まったわけです。

日本語でも気になりますから「傾向性」についても調べてみようと思えましたし、
「じゃあ英語でも”傾向性”にあたる単語があるのか?」と調べたりもしました。

ちなみに調べた範囲では、「傾向性」にあたるのが「 tendentiousness 」のようですが、
意味合いは日本語の「傾向性」とはチョット違う印象を受けます。

「 tendentiousness 」は「偏向性」のような感じみたいです。
「特定の方向に強く偏っていること・性質」といったニュアンス。


なんとなく気になっていたレベルの言葉が
外国語を勉強することでハッキリしてくるみたいです。

同様に母国語だけだと、
似たような言葉の意味の違いが分かっていないこともあるようです。

例えば「関係」と「関係性」。

「夫婦関係」と「夫婦の関係性」はどのように意味が違うでしょうか?

「関係」は「関係がある」という動詞から派生しているものだと思いますが、
「AとBには関係がる」なんて表現を当たり前にしておきながら
「関係」と「関係性」の違いは、よく分かっていないまま過ごしていました。

これも英語で勉強しているうちに納得できた部分です。

英語の場合、「関係」は「 relation 」で、「 relate 」という動詞が名詞化したものです。
一方「関係性」は「 relationship 」。

つまり「 A relates to B」が「AはBに関連している、AはBと関係している」なので
「AとBとの間には何らかの関わりがあって、独立にバラバラなわけではない」
という話をしていることが分かります。

その「 relate 」が名詞になったので、「 relation (関係)」は
「何かと何かが関係していること(独立してバラバラではないこと、影響があること)」
だといえます。

ですから「AとBの関係」となると、
「AとBは互いに独立で影響し合っていませんか?
 それとも何かしらの関わりがあって影響が及ぶ範囲にいますか?」
のような話だと考えられます。

そうなると「AとBは夫婦という関係です」のように
「二人が近い距離にいて、家族を構成するメンバー同士」の意味が出てくる。

「親子の関係」、「友人の関係」、「教師と生徒の関係」のような使い方です。
お互いが独立ではなく、それぞれが相手に対して役割や立場を持っている。
そんな話になる、と。

一方「 relationship (関係性)」は、
「その関係( relation )がどのような性質をもっているか」の話。
「How does A relates to B?」を説明する内容です。

なので「AとBは親密な関係性にある」とか、「関係性が良好・悪い」
「関係性が改善する・悪化する」などのように使われるはずです。

AとBが関わりを持っていることを前提として、
「じゃあ、その関わりの様子はどんな感じですか?」
という話が「関係性」の中身ということでしょう。

僕のこの理解は日本語の辞書で調べたものではありません。
英語学習者として大人になってから「 relation 」と「 relationship 」について
客観的に理解しようとしたために見えてきた部分です。

おそらく英語ネイティブの人でも、
日本人が「関係」と「関係性」の使い分けを曖昧にしているのと同様に
「 relation 」と「 relationship 」の使い分けが曖昧な人もいると想像します。

大人になっての語学は、客観的に分析する視点が身についているからこそ
言語そのものの性質にも学びをもたらしてくれるように感じます。

そしてそれは母国語にも影響する。

外国語学習は、母国語も含めて
言語能力そのものを上げてくれるような気がします。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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