2018年08月04日

無意識の深さと遠さ

無意識に「深さ」があるという発想が誤解を招きやすいと思います。

ある意味、フロイトやユングのやらかしちゃったところというか。
まあ、鵜呑みにした後続もでしょうけれど。

特に「氷山」をモデルにするような形だと、
「深い無意識」は表面に上がってこないイメージになります。

結果として、「深い無意識」(=「潜在意識」)は
「意識」の本人には計り知れないものとなって
「潜在意識に支配されている」とか
「潜在意識が90%以上」とか
「潜在意識に暗示を入れる」とか
「潜在意識を活用する」とか、
どこか他人事の対象になってしまうようです。


無意識のアクセスしやすさは、ただの距離。
深さはなく、遠いか近いかだけ。

言い換えると、
 親しみのある範囲ほど意識に近く、
 慣れていない(親しみのない)範囲ほど
 アクセスしにくい「遠い」ところの無意識になる
ということ。

深さで無意識のアクセスしにくさをイメージすると、
深いところはいつまでたっても意識できないかのように考えがちです。

氷山の水面下、深いところは水面に上がってこなそうですし、
水面に上がれるのは浅いところが浮上する程度の感じでしょう。

しかも表面に出た意識を「顕在意識」などと読びながら
「顕在意識」の内容が万人に共通しているかのように想定すると、
対応する「潜在意識」のほうにも万人に共通した性質があるかのように
仮定したくなるのかもしれません。

これはある程度、仕方のないことだと思われます。

人は基本的に、他人の内面を想像できるようになる過程で
自分の経験を参照しながら
「これが仮に自分だったとしたら、こういう風に思うはずだ。
 だったらこの立場の人は、こんな風に感じるのだろう。」
といった視点の切り替えをしていくといえます。

こういうのは小学校の道徳の授業でやるような訓練です。
「自分だったら、どう思う?」みたいな作業。

その想像の積み重ねによって、他人の行動を見たときに
「一般的にこういう風に考えたり、感じたりするものだ」
という知見が作られていって、
自動的に他人の気持ちを汲み取ることに慣れてくるわけです。

ですが同時に、「自分だったら」をベースにしている以上
「その立場にいる自分」を想像しているに過ぎなくて、
「その立場にいる相手」の気持ちを想像しているわけではありません。

相手の気持ちを想像するには、相手の「立場」をもとに考えるのではなく、
相手の表情や非言語メッセージから感情を読みとって
相手の「感情」をもとに想像する必要があります。

これはまた別の訓練を求められます。

しかしいずれにしても、自分の体験をベースにして察するので
「他人にも自分と同じ心の動きがある」と想定したくなるのが
自然な発想だといえます。

だから人間には共通した心の動きがあるという前提で
人は心理学を研究し始めたのでしょうし、
動物にだって人間と同じような心があると想定したくなるんです。

犬が走り回っていたら「楽しそう」だと想像しますが
果たして犬が体験しているものが、人間と同じ「楽しさ」かどうか
それは定かではないはずです。

動物だったら人間と同じような仕組みがある可能性もあるでしょうが、
それがアンドロイドだったりしたら、もっとハッキリすると思います。

明らかにアンドロイドだと知っていて、
プログラムされた通りに動いているだけだと知っていて、
そのアンドロイドが他のアンドロイドが壊れるのを見て
涙を流し、泣き声を上げ、人間と同じような表情や姿勢をしたら
きっとそこに「悲しんでいる」という解釈をするのではないでしょうか。

本当にアンドロイドの反応がプログラムなのか、
もしかしたら本当に心があるのか、
その判断ができなくなりそうなのは、結局
 人が他者の内面を、自分の体験をもとに想像するのが根本にあるから
だといえるでしょう。

そういう仕組みがある以上、
人に共通する「顕在意識」や「潜在意識」がある
と考えたくなるのも分からなくはありません。

そして共通すると想定するからこそ生まれてくる
氷山のような「無意識の深さ」のモデルについても。


でも実際に内面を探る作業を重ねていくと
そうじゃないことが沢山見えてきます。

「深い無意識」だと思っていたものも、
やり方を工夫すれば意識に上げることができます。

つまり、普段の意識状態ではアクセスされない情報だっただけで
意識の仕方を変えるだけで、意識に上げることは可能なんです。
その意味ではもう、「無意識」ではなくなります。

そして一度でも意識に上げたものは、
「深い」無意識ではなくなります。
すぐにアクセスできるものになる。

意識に近いところにやってくるんです。

より正確には、「意識」の範囲が広がるということです。

無意識と呼ばれているのは、意識に上げる方法に馴染みがないだけのこと。
アクセスするルートがないんです。

そしてそのルートの道のりが遠いほどアクセスしにくい。
近ければ、うろうろしている間に偶然たどり着けることもありますが、
遠くにあればチョットうろうろしたぐらいでは到着しません。

この距離とルートがあるからこそ、
意識と無意識のモデルは「氷山」よりも
平面的な「ジグソーパズル」のようなイメージのほうが
近いんじゃないかと感じます。

ピースが繋がって絵柄が分かっているところが「意識」。

その範囲に隣接するピースだったら、端っこの形と絵柄をもとに
次に当てはまるものを見つけやすいはずです。

これが近くてアクセスしやすい「無意識」の範囲。
そして一度ピースがくっつけば、繋がった面積が大きくなりますから
「意識」の範囲が広がったことになります。

一方、完全にピースが連続していなくても、
ちょっと離れた場所に小さな塊を作ることはできます。

ピースの形同士を繋げて、少ない数のピースのまとまりができる。
特にそれが主要な絵柄と関係するように見えれば
全体に対しての配置も想像できるようになります。

この場合、少し離れた”島”のような形で
「意識」が広がっているといえそうです。

そして隣り合うピース同士を繋げていくと
面積として広げなくても、細い道のように遠くまで
「意識」の行き先を進めていくことができます。

これが「無意識」を探るルートのようなもので、
その先に何か、全体の絵柄を決めるうえで重要な部分が
ピースの模様として見えてくることがあります。

こうなると「無意識」の意味に気づけたり、
過去の重要な記憶が戻ってくることになったりして、
遠い無意識にアクセスできたことになります。

つまり遠くにある情報にアクセスするには、
主要な意識の範囲である絵柄の分かった塊から
少しずつ隣のピースを繋げていって
遠くまでルートを伸ばしていく必要がある、ということです。

実際に無意識の範囲にアクセスる手法は、
こういう連想の広げ方をします。

沢山のピースからなるジグソーパズルにおいて
すでに絵柄の分かった塊の範囲がある。

そのメインとなる面積の大きな塊を「意識」として、
そこから近い場所のピースはアクセスしやすく、
遠い場所のピースにアクセスるには
隣接するピースをコツコツ繋げて
遠くまでルートを伸ばす必要がある。

そういうイメージが理解しやすいと思います。


なので実態としても、ある人にとっての意識に近い情報が、
その人にとってアクセスしやすくても、
同じ情報が、別の人にとってはアクセスしにくいことがあるんです。

つまり、ある人にとっては完全に無自覚な「潜在意識」の記憶や行動も、
別の人にとっては常日頃から自覚している「顕在意識」ということがある、と。

例えば…。

寂しいときに心の隙間を満たすために甘い物を食べる、という人は
自覚しながら甘い物を食べます。

寂しいときほど、それに気づいて、甘い物を食べたい気持ちが大きくなる。
だから、食べたいときに食べる。
逆に寂しくない日は、別に食べなくていい。

そもそも「なぜか食べてしまう」のではなく、
食べたいから食べているだけなんです。

一方、同じ理由なのに自覚できていないで、
「なぜか甘い物をやめられない」という人もいます。

すごく寂しい日も、あまり寂しくない日も
「なぜか」甘い物を食べる。
で、「また食べちゃった」と後悔する。

この人にとって、甘い物を食べるのは
『潜在意識に勝てない』というヤツなんでしょう。

ところが、「なぜか甘い物を食べてしまう」ほうの人が、
物事をコンスタントに予定通りこなしたりする。

そして「甘い物を食べたいときにだけ食べる」ほうの人が、
物事を先送りにすることもあり得ます。

前者は「やろうと思ったからやる」だけのことで、
そこに「つい先送りにする」という発想さえありません。

後者は「やらなきゃ」と思っても、なぜか「つい先送りにしてしまう」。
すぐやるか、後でやるかの決定プロセスが無自覚なんです。
だから『潜在意識に勝てない』。
「つい先送りにする」ことの『深層心理』が分からない、と。

ある人にとっては当たり前で、日ごろから意識的なわけです。
理由は明白で、そこに『深層心理』もありません。

でも同じことが別の人には
なぜか分からない『潜在意識』のことになっていて、
そういうときにだけ『深層心理』が登場する。

こうしたことも、単純に距離の近さ・遠さだけで考えればスムーズでしょう。

そもそも「意識」の範囲に個人差がある。
ジグソーパズルの中で見えている絵柄の部分が違うんです。

そこから近い範囲もあれば、遠い範囲もある。

そういう考え方のほうが上手く説明できますし、
個人差についても理解もしやすいでしょう。


無意識は「深さ」ではなく、
平面的な場所の「遠さ」で考える。

それがオススメです。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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