2018年12月17日

オシャレのために

外来語を使うとオシャレになる、という日本文化は
これだけ外国人観光客が増えている昨今でも根強いようです。

例えば、スターバックスの商品名なんて
不思議なカタカナ語の羅列になっていたり。
英語とフランス語が混ざって使われていることもありました。

まぁ、そもそもアメリカのスターバックスでも、
サイズ表記はShort, Tall, Grande, Venti, Trentaとなっていて、
Grande以降の大きいサイズはイタリア語になっています。

(Grandeは「大きい」、Ventiは「20」、Trentaは「30」。
 Ventiサイズは、20オンスなので約570mlという意味のようです。)

外国語がカッコイイと思うのは、
日本に限ったことではないのかもしれません。


ですが、外国語がカッコイイとしても、それは自国の人にとっての話。
日本人にとっての英語、アメリカ人にとってのイタリア語は
外国語だからカッコよく映るんでしょう。

外国語が使われているけれど、その表記を目にする対象は
主に現地の人であって、外国人ではないわけです。

一方、最近は外国人観光客や海外からの移住者が増えていることもあって
街中に外国語表記の看板や注意書きが増えてきています。

新大久保駅構内のアナウンスは、十か国語以上で流れていますし、
モノレールのアナウンスや電光掲示板は、
日本語、中国語、韓国語、英語の4か国語で表されています。

最近は、小田急線の車掌が英語アナウンスを自力でやっていて、
これなんかは、かなり勉強した形跡が認められるものです。

新幹線は以前から上品なオーストラリア英語のアナウンスがありましたが
この頃は車掌や乗務員が肉声のカタカナ英語で、
わざわざ毎回決まったアナウンスを読み上げています。

ホテルには当然のように英語表記の注意書きが多いですし、
飲食店などでもトイレに英語の注意書きが増えてきた気がします。

こういうのは日本人のためのオシャレな外国語ではなく、
外国人のために書かれた内容のはず。

だったら、ちゃんと、その言語が分かる人に依頼するとか
少なくともネイティブにチェックしてもらうとか、
それぐらいの工夫はしても良さそうなものです。

ところが実態は…。
結構、「なんじゃこりゃ」みたいのも多いようです。


先日、打ち合わせで
地下鉄の四ツ谷駅出口の近くにあるカフェを利用しました。

店の名前は東京メトロなので、「Marche de Metro」。

Marcheはフランス語で市場、マーケットのことです。
その店はカフェだけではなく、フードコートになっていて
多くの種類の飲食店が集まっていますから、Marcheにしたんでしょう。

フランス語にしたのは、オシャレの要素ということで
これもよくある範囲だと思います。

「Metro」の部分は、フランス語だと「Metro」という綴りですが、
まあ、東京メトロは英語表記が「Tokyo Metro」らしいので
固有名詞の一部としての「Metro」を使っていると考えれば
「Marche de Metro」ではなく「Marche de Metro」なのは問題なさそうです。
(フランス語話者が見たら気になると思いますけど)

で、その店はフードコート形式なので
座席は利用者が自由に選んで座る仕組みになっています。

かといってセルフサービスではないので、
食べ終わった食器はテーブルの上に残していくルール。

なので、食べ終わってもう帰ったのか、
一時的に席を離れているだけでまだ途中なのか、
を示す必要があるようです。

その意思表示をするためのカードがありました。
それがこちら。

Marche de metro



















上から、英語、日本語、フランス語で書かれています。

内容に全く統一感がありません。
が、英語だけ分かる人、日本語だけ分かる人にとっては
問題なく意味を汲み取れる表記にはなっていると思われます。

英語のほうは
「この面を上にしてあったら、私どもでテーブルを片づけます」
といった感じの意味。

お客さんが読んで、
「ああ、この店は食器をそのまま置いていって構わないけれど
 このカードを使って食事が終わったことを示す必要があるんだな」
というルールは伝わるでしょう。

文章の主体は、店側になっています。
店側からお客さん側にアナウンスをしている形。


一方、日本語は「食器を下げてください」と
お客さん側の状態を代弁するメッセージになっています。

日本人であれば、これを読めば
「自分が食事を終えたときに、このカードを使って
 終わったという状態を伝えてあげる必要があるらしい」
と汲み取れます。

自分の状態に合ったほうの面を選んでテーブルに置いておく。
そういうルールが伝わる表記でしょう。


ところが一番下のフランス語は…。

「Debarassez pas la table, s'il vous plait. J'ai finis mon repas.」
とあります。

まずフランス語表記としてエラーがあります。
フランス語だと
「Debarassez pas la table, s'il vous plait. J'ai fini mon repas.」
のはずです。

アクセント記号が足りないのと、
「fini」が「finis」になってしまっているのが間違い。

アクセント記号については、このカードを作った人のパソコンで
記号つきのアルファベットを出せなかった可能性がありますから
まぁ、目をつぶることはできるでしょう。

「fini」と「finis」は、どちらも不定形が「finir」ですが
文法上、かなり使われ方が異なります。

「fini」は過去分詞、「finis」は一人称現在形。
「J'ai fini」で「私は終わりました」という過去形になります。
「Je finis」だと「私は終えます」という現在形。

ここは混ぜてはいけないところ。

それでもまだ、タイピングミスとかの可能性はあります。

ですが、文章全体の意味を考えると、これは明らかに問題です。

一文目
「Debarassez pas la table, s'il vous plait.」
は、
「テーブルを片付けないでください」
という意味です。

ここまでだと、誰から誰に対してのメッセージなのかも分かりません。

店側からお客さんへのメッセージだとすると
「テーブルはそのままにしていってください」
とお願いしている、ルール説明だと受け取れます。

英語と日本語の意味から考えると、この解釈になりそうです。

にもかかわらず次の文、
「J'ai fini mon repas.」
は、
「私は食事を終えました。」
という意味です。

主語は私という単数形ですから、店側ではありません。
食事を終えるのもお客さん側の立場。

となると、この2文は
お客さん側の状態を代弁する形式だといえそうです。

日本語表記のスタンスと同じ、英語表記とは逆だ、と。

そうすると2つを組み合わせたときの意味、
「テーブルを片付けないでください。私は食事を終えました。」
は、
なんだか意味がよく分かりません。

「テーブルを片づけてください。私は食事を終えました。」
だったら、
お客さん側の状態を代弁する意思表示のカードなんだと伝わりそうです。

逆に
「食べ終わってもテーブルはそのままにしておいてください。
 私たちで片づけます。」
というメッセージなら、店側からお客さんへのルール説明として伝わります。

そのどちらでもないわけです。

元のメッセージをできるだけ残すとしたら、
「テーブルを片づけてください。私は食事を終えました。」
のほうになるでしょう。

おそらく「片づけてください」を
「片づけないでください」と書き間違えたと想像できます。

本来は
「Debarassez la table, s'il vous plait. J'ai fini mon repas.」
にしたかったんだと思います。

否定文と肯定文の間違えは、意味が真逆になりますから
かなり大きなミスではないかと…。

誰にもチェックを依頼していないんでしょうね。


そう考えると、
一見したらお客さんのための注意事項のようなカードも
その実態にはオシャレ目的の内容が含まれている、
ということなのかもしれません。

本当に注意書きとして店のルールを伝える目的なのだとしたら
オシャレ要素のために情報を混乱させるのは避けた方が無難かもしれません。

そもそも最後のフランス語の文章がいらない。

日本に来ているフランス語話者でも英語を分かる人は多いでしょうから
英語とフランス語の2つを見たときに、
わざわざ余計な混乱をさせるだけになってしまいます。

英語だけだったら、最初からそちらしか読もうとしないはずなので
むしろ逆効果とも言えそうな気がします。

日本人の立場に置き換えてみると、
ハリウッド映画に出てくる”日本人街”に
ちょっとおかしな日本語が書かれているのを見たときのような感じ。

あるいは変な意味の日本語のタトゥーを見たときとか。

突っ込みたくなるとか、気恥ずかしくなって目を背けてしまうとか。

そんな気持ちにさせている可能性があります。

オシャレのための外国語と、
情報伝達のための外国語とは、
目的が異なります。

情報伝達を目的とするなら、それなりのチェックをするほうが
目的に沿っていると言えるんじゃないでしょうか。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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