2019年01月12日

語学のゴール

外国語を積極的に勉強するようになったのは
2010年の夏だったと記憶しています。

英語を集中的に勉強し始めました。

当時はTOEFLの対策が主な目的でしたから、当然のように
TOEFL対策の講座を探して、そちらで勉強した形です。

TOEICの場合、一般的にはリーディングとリスニングだけで、
スピーキング・ライティングはオプションのテストになってますが、
TOEFLはスピーキング・ライティングも含めた4技能を
一度にテストする形式になっています。

むしろ4技能すべてをテストしないTOEICのような形式のほうが
世界的に見たら珍しいようですが。

TOEFLはリーディング、リスニング、スピーキング、ライティング…と、
4つのセクションで4時間ぐらいかけてテストを行います。

しかもTOEFLの場合、4つのセクションと言いながら
4技能が独立してテストされるわけではないんです。

スピーキングやライティングのセクションの中にも
ある程度の長文を読んだり、講義を聞いたりする時間があって、
読んだり聴いたりして理解した内容を、自分なりに整理しなおして
アウトプットする、という能力が求められます。

純粋な「話す」「書く」の能力だけではなく、
内容を理解する能力や、上手く内容をまとめる能力なども
一緒にテストされているといえます。

これはTOEFLが大学や大学院の入試の基準に使われるからでしょう。
アカデミックな場面に適応できるかを現実的にチェックしてくれるわけです。

なお、TOEFLと並んで広く使われる英語試験にIELTSというのがあって、
こちらのほうが4技能を独立してテストする形式になっています。
(アメリカ以外の地域を視野に入れるとIELTSのほうが主流のようです)

僕はTOEFLから英語の勉強に入った形ですから
4技能の全てをトレーニングする必要がありましたが、
僕は最初、スピーキングとライティングからは逃げていたんです。

TOEFL講座のトライアル授業(=見学)のとき、
たまたまスピーキングの回に参加して、あまりの自分のできなさに
嫌気がさしたところもありました。

適切な言い方をすれば、レベルに合わないと感じたわけです。

なので、まずはリーディングとリスニングから集中的に勉強し始めました。


これは今から振り返ると、なかなか良い戦略だったようです。


当時の講座は8週間で計画されていて、2回目の再受講が可能でした。
つまり、8つ回分を2周受講できる、と。

同じ内容を2回やって意味があるのか?と思われるかもしれませんが
実はこの復習にもなった2回目がかなり効果的だった気がします。

1つには、かなりの部分を忘れている、ということ。

それから2周目になると、それまでの勉強・トレーニングの成果が
実感として感じられるようになっていること。

2周目で間違えたところで、弱点をハッキリさせられること。

こういった理由から、再受講はかなり役立ちました。

この一周目の8回の間、リーディング一回とリスニング一回、
週に二回、講座に通いながら、ひたすら単語を覚えました。

そもそも読めない、聞き取れない、の最大の理由が
単語を知らないからだったわけです。

幸い、僕は学生時代に、かなりの量の読解を練習していたので
文法的な部分や、文の構造の理解、論理展開の把握などは
それなりにトレーニングされていたようです。

なのでリーディングで苦労したのは、とにかく単語が分からないこと。
それから読むのに時間がかかること、でした。

ですから、とにかく出てきた単語は全部覚えて、
そのほかにも課題として与えられた頻出単語のリストを
簡単なほうから順番に覚えていきました。

毎日7,8時間、英語に費やしていたと思います。
単語の暗記と、読解の復習と、聞き取りのトレーニングと。

リスニングセクションについても、
単語が分かると聞ける部分が増えてきます。

しかし、実際の発話の中で、どのように単語の発音のされ方が変わるのか、
弱くなったり、速くなったり、他の単語とくっついたり…
そういう部分が分かっていないと、意味が分かる前に
どの単語を言っているのかを捉えられません。

そのためのトレーニングとして、ひたすらディクテーションをやりました。
それが課題だったんですが。

問題文のCDを聴いて、全文を書き出す、という作業。

これを授業中にも、ひたすらトレーニングさせられました。
そして、このトレーニングで、徐々に聞けるようになっていくのが
実感として得られたんです。

講座も2周目ともなると、実力がついているのが感じられました。

そうやって、とにかく単語力をつけて、
高度な文章でも、読んだり聴いたりして理解できる土台を作ったわけです。

まず1周目の2か月間は、単語と復習と、ディクテーションとを
ひたすらやり続けました。


2周目に入るころには、同じ教材でのディクテーションは
もうトレーニングとしてやりにくくなっていますから、
別の教材を使って練習をする必要がありました。

自分で教材を買って、同様のトレーニングを続けたわけです。

同時に、トレーニングの比率を少し変えました。

単語を覚えるのも、主要なものは頭に入ってきていたので
スピーキングとライティングに取りかかり始めたんです。

このときから、いわゆる英会話学校に通い始めます。

ですが、最初は全く言葉が出てきませんでした。
聞けばわかる単語、読めばわかる単語も出てこないし、
調べたらすぐに「ああ、こんな簡単な単語なのに…」というのも
アウトプットの段階だと出てこないことばかりだったんです。

ここからは、ひたすら地味に発話のトレーニングを続ける日々。
といっても話す機会は英会話教室ぐらいしかありませんから
なかなかスピーキングは伸びなかった記憶があります。

とにかく、もどかしい思いばかりをしていました。

なぜそんなにも、もどかしさが強かったのか?
それは「言いたいこと」が頭に浮かんでくるのに
そのことを英語で表現できなかったからです。

まず単語が出てこない。

名詞や形容詞、副詞の場合は、一単語そのもので思い出せませんでした。
動詞の場合だと、日本語で一単語のものでも、英語では
前置詞や名詞との組み合わせからなる数単語の表現になったりして、
思い出せないことも、知らないことも両方ありました。

なので、アウトプットの典型的な形として
口に出せるフレーズを用意しておく必要が出てきました。

そのために役立ったのが、ライティングです。

英会話教室で、たまにライティングの宿題が出たんです。
書く作業であれば、辞書を使いながら時間をかけることができます。

表現したくても言葉が出てこないとき、
会話では時間がなくて調べられなくても、
書くときには自分で1つ1つを調べることができる。

なので表現したいけど言葉が見つからないタイミングで
コツコツと辞書を使って見つけていくことができたんです。

こういう作業をすると、よく使う言い回しなどは
毎回調べなくても、自然と覚えて書けるようになっていきました。
アウトプットできるボキャブラリーが増えていったわけです。


このアウトプット可能なボキャブラリーのことを
「アクティブ・ボキャブラリー」と呼んだりします。

逆に、インプットとして読んだり、聞いたりして理解はできるけど
書く・話すというアウトプットができない種類のボキャブラリーが
「パッシブ・ボキャブラリー」。

一般的に、アクティブ・ボキャブラリーのほうが少ないんです。
これは母国語でもそうです。
聴けば分かる、読めば分かるけれど、自分では使えない言葉がある、と。

僕の英語学習の場合、そもそもが英語論文を読んだりしていて
パッシブ・ボキャブラリーのほうが多かったわけです。

一方で、英会話はほとんどやっていなかったので
発話可能なアクティブ・ボキャブラリーは非常に少なかった。

そこへさらに、TOEFLのリーディング・ライティングに対応するため
一気にパッシブ・ボキャブラリーの量を増やしました。
アクティブ・ボキャブラリーとの差が大きくなったわけです。

知っているのに出てこない。
その感じは「なんで、この単語が出てこないんだろう」のように
もどかしさを強める一因にはなっていました。

が、その一方で
パッシブ・ボキャブラリーをアクティブにするだけのことではあるので、
ライティングを通じて時間をかけたアウトプットを繰り返すだけで
徐々にアクティブ・ボキャブラリーの量が増えていって
話すほうでも言葉が出てくるようにはなっていきました。

ですから書くトレーニングをするのは、スピーキングの土台作りとして
かなり大きな効果を持っていると思われます。

実際、僕は今、フランス語でも
 一度書いた内容を話して報告して、それについて意見交換をする
という流れでスピーキングのトレーニングをしています。

このやり方は効果が実感できるものです。
負荷がかかりますが、その分、
アクティブ・ボキャブラリーを着実に増やしていくことができます。


こうしたボキャブラリーの問題は、語学において
非常に重要な側面の1つです。

もう1つは運用力の側面。

運用力のほうは、ボキャブラリーがなくても
慣れだけで対応できるものです。
知っている言葉を、どれだけスムーズにアウトプットできるか?
それだけの話。

運用力については、小学生ぐらいを想像すると分かりやすいと思います。
小学生でも母国語の運用力は高いものです。
いわゆるペラペラに話せる状態。

日本人の小学生は日本語ペラペラですし、
アメリカ人の小学生は英語ペラペラです。

アクティブ・ボキャブラリーの比率が高いうえに、
それを組み合わせる作業がスムーズだということです。

ただし、このことと話の内容とは関係がありません。

運用力が高くても、複雑な考えを言葉にして説明できるわけではなく、
また抽象度の高い概念を言葉で扱えるわけでもない。

パッシブ・ボキャブラリーそのものが少なければ
知らない単語も多くて、大人の話は分からない可能性もあります。

僕は中学生のころ、テレビのニュースで政治の話になると
政治家が何を話しているのか全く理解できないことがありました。
こういうのは、考えの複雑さとパッシブ・ボキャブラリーの量が
話の内容に追いついてない例です。

ですから、運用力が高ければ「ペラペラ」の状態にはなるけれど
それは複雑な内容の話ができるかどうかとは関係がない、といえます。

ここが大人になってからの外国語学習が厄介なポイントでしょう。

大人はすでに、母国語で複雑なやり取りをしているんです。
母国語におけるパッシブ・ボキャブラリーの量が非常に多く、
それに伴ってアクティブ・ボキャブラリーも多い。

その沢山あるアクティブ・ボキャブラリーを使いこなせる運用力もあって
複雑な考えを言葉に変換できるようになっているわけです。

こういう複雑な思考が日本語として頭に浮かんでくる。
これを英語に変換しようとすると…。
どう表現していいか分からない、という事態になります。

アクティブ・ボキャブラリーの量の差が
日本語と英語で激しいので、「言葉が見つからない」もどかしさが
非常に大きなものとして出てきてしまいます。

逆に子供のころであれば、そもそも
日本語でのアクティブ・ボキャブラリーが少ないですし、
考えとして浮かんでくる内容もシンプルなものになっています。

論理展開や文章構造としても複雑ではない。

だから、とにかく日本語に対応する英語を覚えて
それをアウトプット可能な状態にさえすれば
かなり早く高い運用力を身につけられます。

ペラペラになるのが速いんです。


こうした思考内容の複雑さとボキャブラリーの量は、
日本語で見ても違いは表れているはずです。

例えば、友達とご飯を食べに行ったとします。

「この前、友達と表参道へランチに行ったんだけど
 すっごい良かったんだよねー。
 ご飯もおいしいし、良い人が多かったし、全部いい感じだった。
 もう最高って感じ。」

…と、こういう内容がスムーズに出てきたら、
日本語はペラペラだとは言えます。

ただ、内容の複雑さを考えると、同じようなことでも
次のような感じに話す人もいるわけです。

「3日前に、前の職場の同僚と表参道の駅前でバッタリ会って
 そのまま一緒に近くのカフェにランチに行ったんだ。
 たまたま近くにあったから入っただけで
 別に有名な店ってわけじゃないと思うんだけど、
 店の内装もヨーロッパ風のレトロな感じで、
 食器とかテーブルとかまで全体の雰囲気を合わせていて
 まるで本当に近代のヨーロッパにタイムスリップしたみたいで…。
 ご飯も食材からコダワリがあって、わざわざ現地から輸入したもので、
 スタッフのサービスも心がこもった感じで丁寧で…。
 昔の同僚と久しぶりに会えたことも嬉しかったけど
 その時間を店のおかげでもっと充実させられた感じがして
 すごく良いお店と出会えたのも嬉しかった。」

…となると、詳しさが違うだけとも言えますが
説明のために必要なボキャブラリーの数も
説明したい考えの複雑さも、随分と違いがあるはずです。

大人になってから語学を始めると、後者のパターンのように
複雑な考えが頭に浮かんできて、それを英語に変換できず
もどかしい思いをすることになる…というのが多いようです。


ですから、どちらのパターンの”ペラペラ”を目指すかを
設定してから習得に取り組む必要があります。

それによって取り組み方が変わってきますから。

僕は後のパターン、つまり
複雑な思考を複雑な英語にするほうを目指しました。

そのために、ひたすらボキャブラリーを増やし
それをライティングでアクティブにして
スピーキングの練習で運用力をつけていく。

そんな流れです。
が、これは労力と時間を要します。

同時に、自分の中にすでに備わっている複雑な思考を
そのまま英語でも言語化できるようにする、というゴールのためには
いたって効率的な取り組み方だったと、今にして思います。


それに対して、もう一方のパターン、シンプルな言葉で表現するほうは
シンプルな思考をシンプルな英語にするだけなので習得は早い。

ポイントは、日本語で複雑に考えられるようになった思考の内容を
一度シンプルな言い回しに変換する作業です。

この「簡単な日本語で表現する」訓練をすると
比較的短期間で”ペラペラ”にはなれます。

世の中にはこちらのスタンスで英語を教えている人もいます。

また多言語を習得している人の多くも、決して全ての言語を
母国語レベルの複雑な思考ができるところまでは磨いておらず、
流暢にコミュニケーションができるけれど内容はシンプル
…という前者のタイプのペラペラにしているようです。

しかも、このシンプルな内容で話すトレーニングを一回終えると
そのシンプルな表現方法のパターンを、様々な言語に置き換えるだけで
複数の言語で”ペラペラ”になることができます。

短期間で外国語を”身に着け”、ネイティブと流暢に会話できるようになる
という目的には、理にかなった方法だといえます。

ただし、会話や読解の最中に、分からない表現が多く出てきますから
それをその都度、質問して教えてもらって対話を成立させる必要はあります。

日常的な運用には困らないけれど、
ビジネスや学問にまで応用するとなると困難。
そういう段階を目指すスタンスでしょう。


どのぐらいのレベルで外国語を使えるようになりたいのか。

そういう趣旨での目標設定が重要だという話です。

「英語を使えるようになったら、どんないいことがあるか?」
「英語を使って何をしたいのか?」
というメリットの観点からヤル気を高めるためにではなく、
『どういう勉強法、トレーニングをすることになるか』
を決めるためにこそ、習得のゴールが重要になるわけです。

cozyharada at 23:52│clip!NLP | コミュニケーション
おしらせ
 ◆ セミナー情報 

New!

《コミュニケーション講座》
育むコミュニケーション


【日時】 
  2018年12月23日(日)
  10:00〜16:30


【場所】 
  滝野川会館
  304集会室

   JR上中里駅より7分
   JR駒込駅より10分
   南北線西ヶ原駅より7分

詳細はこちら>>
次回は1月〜2月の予定


 ◆ 過去の講座 

《新カウンセリング講座》
 〜まとめと実践〜


当時の内容はこちら>>


《勉強会》 

【テーマ】 変化の流れを考える

当時の内容はこちら>>
次回は未定



 ◆ お問い合わせ 
  技術向上、
  コンサルティング、
  スーパーバイズ、
  執筆・講演…

  諸々のお問い合わせはこちらへ>>



ホームページ
バナー1


プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
Archives
最近のコメント
QRコード
QRコード