2019年01月30日

3つの理由

アカデミックライティングとか論理的な説明の仕方として
紹介されるもののとして見かけるものに、
 結論を最初に述べて、
 理由を3つ説明する
というスタイルがよくあります。

英会話学校に通っていたときにも
そういう説明の仕方をする先生はいました。
それなりにあるやり方なんでしょう。

このスタイルが論理的とされるのは、
「結論」と「理由」という説明に重要な要素が
コンパクトにまとまっているからではないかと想像します。


しかし、「論理的」かどうか、というのは
結論と理由が説明されるかだけで判断されるものではありません。

むしろ結論と理由を結ぶ「論理展開」にこそ「論理性」が表れます。

その意味では、1つの結論に対して3つの理由を述べるスタイルは
コンパクトに情報をまとめているがゆえに、逆に
論理展開が急激になって「論理の飛躍」が起きるリスクも高いはずです。

日本人は一般的に、この論理の飛躍に対して鈍感です。
おそらく聞き手、読み手の側が「空気を読む」「行間を読む」のが
重要だとされるからでしょう。

論理が飛躍している場合には、受け取る側がその飛躍を埋めようとして
なんとか理解しようとしてくれるわけです。

それに対して西洋文化は、説明責任を問われる背景があります。
伝わらないのは説明する側の責任。
受け取る側が「分かろう」と頑張らなくても1つの理解に落ち着くように
明確な説明の仕方をすることが求められます。

そしてそれこそがアカデミックライティングや論理的説明である、と。

なので論理の飛躍がない理由づけの説明が
論理的な文章として評価される傾向があります。

結論が最初にあって、その理由を後から説明すれば
それで論理的な説明になるというわけでは必ずしもないわけです。


僕が英語のライティングを教わった先生はアメリカ育ちの日本人で
学校教育が全てアメリカだった人ですが、
だからこそ論理展開に対して厳格な傾向が強かったと感じます。

ハッキリ言えば、僕の甘い論理展開の仕方は
この先生のおかげで修正されたと思われるほどです。

特に僕のケースではTOEFLのライティングに向けた講座でしたから
TOEFLの採点基準をベースにトレーニングしてもらった形です。

このTOEFLのライティングの基準には、文法やボキャブラリーに加え
・トピックとの関連性
・内容の一貫性
・アイディアの具体性
などが含まれます。

「トピックとの関連性」は議論の内容がテーマと沿っているか。
つまり違う話をしていないか、です。

題材として質問が投げかけられて、それに対して返答する形ですから
質問と違うことを書いていてもダメですよ、ということです。

例えば、「学校は制服を採用すべきである」などのテーマに
賛成か反対かを述べる形だと、あくまで議題は制服の話になるわけです。

話が逸れてしまうのは、よろしくないとされているんです。


そして2番目の「内容の一貫性」ですが、
これこそが理由を3つ説明するスタイルが評価を下げるポイントです。

理由が3つあったら、それだけで
「理由が一貫していない」とも解釈されかねません。

むしろ理由は1つに絞って、その理由の根拠として
3つぐらいのポイントを挙げていくような形のほうが
「1つの理由を一貫して説明している」として評価されやすい、と。

例えば、「学校は制服を採用すべきだ」という話に対して
3つの理由を挙げるとしたら
・お金がかかる
・個性を抑え込むことになる
・洗濯が不便だ
のようになります。

もちろん、3つのりゆうを挙げるスタイルでも
それぞれの理由について
「こうなって、こうなって、するとこうなって、だから〇〇だ」
のように論理の展開は含むはずです。

ここが話の具体性を高める部分。
理由についての具体的な根拠として、事例を挙げる箇所です。

しかし、この形だと事例の具体性が高まりにくいんです。
実際の経験談のようなレベルまでは具体的にしにくい。

なぜなら、そこまで具体的にしてしまうと
ただのエピソードとして読めてしまって、
それが理由とどのように関連しているかが不明瞭になるからです。

ストーリー展開として順序に飛躍がなかったとしても
話の具体性に飛躍が出てしまうといえます。

仮に「お金がかかる」の理由だとしたら…。

「1つ目の理由は『お金がかかる』ということです。
 例えば、私が中学生の時、同級生にこんな家庭の友達がいました。
 彼の家は…」
なんて話になると、
読み手の側が「このエピソードがどうお金と関係するんだ?」
と想像しながら読む必要が出てきます。

こうしたプロセスが、受け取り手に対しての負担でもあるわけです。

理由は1文、なのに急にエピソードが出てくる…という形だと、
理由とエピソードの関連性が不明瞭になる、と。

だからといって
「1つ目の理由は『お金がかかる』ということです。
 制服の値段は通常、〇〇円ぐらいです。
 3年間のうちに一着では済まないとしたら、その額は大きくなります。
 制服の値段が余計な支出を生むので、お金がかかります。」
という形だと、
論理展開は比較的スムーズ(順序は明確)ですが
今度はエピソードといえるほどの具体性はありません。
一般論で終わってしまっている。

採点基準にある「アイディアの具体性」が不足してしまうんです。

論理を飛躍させず、アイデアの具体性を高める。
そのためには理由を1つに絞って「一貫性」を出すほうが効果的です。


一貫性のある説明とは、理由を価値のレベルで示して
それに関する根拠を複数示す形です。

つまり、理由は1つで、その根拠を複数挙げるようにする、と。
そしてそれぞれの根拠について、具体例を複数挙げる。

そうすると「理由ー根拠ーエピソード」のように
具体性のレベルを飛躍することなく展開することが可能になります。

例えば、「学校は制服を採用すべきだ」という話に対して
理由を1つ「お金がかかる」に絞るとしたら…。

「制服を採用すべきではありません。
 なぜなら制服はお金がかかって経済的ではないからです。
 特に中学校のような成長期・思春期では、余計にお金がかかります。
 経済的でない側面としては次の2つが考えられます。

 1つは制服が追加の出費を生むということです。
 中学生に必要な服は制服だけではありません。
 家に帰れば制服から着替えて、普段着で生活する場面も多くあります。
 制服は普段着に追加する形で必要になるということです。
 例えば、私が中学生の頃、同級生にこんな家庭の友達がいました。
 彼は…(以下省略)。

 2つ目は制服そのものが高価だということです。
 一般的な制服の値段は〇〇円ぐらいです。
 これを中学校の間に買い替える場合もあります。
 総額としての出費は比較的大きなものとなります。
 例えば、私の同級生に、中学校で急に背が伸びて
 制服を2回買い替えた友人がいました。…(以下省略)」

こういう形だと「お金がかかる」という理由だけを
一貫して説明していることになります。

しかも一般論での論理展開で因果関係を保ちつつ、
「理由ー根拠ーエピソード」という具体性のレベルも
急激な飛躍を小さくしながら変えて説明できます。


このように、具体性のレベルでも飛躍を少なくし、
かつ因果関係としても飛躍を少なくするには、
主張に対する理由づけは一点に絞り込まれているほうがやりやすく、
かつ論理の一貫性も高めることができるわけです。

理由を3つも挙げるのは、議論の量が多いとき。

ちょっとしたエッセイ程度だとか
シンプルな説明だとかの場合には、
1つの理由について、一貫性のある根拠を追加しながら
具体例まで示せるほうが論理性も説得力も高まると考えられます。

というより、それが
 アカデミックライティングでトレーニングされる内容で、
 論理的な文章展開として認められている
といった話なんだと思われます。

「結論(主張)から先に述べて、後から理由を3つ追加する」
といった形で示せる論理性は、実は
さほど高いわけではないのかもしれません。

それだけで論理的な印象を与えられるテクニックとしては有効でしょうが
論理性を高めようとした場合には、もっと工夫する余地は沢山あるようです。

まあ、そもそも日本人は、
論理的な説明のトレーニングを受けないのが大半ですから
そんなに心がけなくても構わないという考え方もあるんでしょう。

論理性を追求するのであれば、理由の数を絞って
根拠に一貫性をもたせる方法もある、という話です。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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