2007年04月13日
カウンセリングの王道
古典というのは勉強になりますね。
僕は高校から理系まっしぐらでしたから、古文とか漢文の授業は得意ではありませんでしたが、嫌いでもありませんでした。どちらかというと歴史を感じられて好きな部分もあったのですが、なにせ読みにくい。言葉として慣れないので、意味が自分の中に入ってこない感じがしていたんですね。ただ、今にして、古文とか漢文とかを味わえたらいいだろうなぁ、なんてことを想像したりします。
文学の世界に限らず、古典の名作というのは残ってきている理由があって、いささか使い古された感があったとしても本質は一向に揺るがないような気がします。
心理療法の世界でも古典的な手法もあるでしょうが、それらは一つの手法として今もなお活用されている方法なのです。
人の内面に関わっていくとき、その基本として大切にされていることがあります。
それは「聞く」ことです。
カウンセリングの中心として広まっている「傾聴」というものです。
よくリーダーシップ研修などではLEADERの6文字を分解して
Listen
Explain
Assist
Discuss
Evaluate
Response
などと言いますが、そこでもListen(聞く)が一番に出てきますね。聞くことの大切さは、あなたも良くご存知だと思います。
で、先日、古典的なあるビデオを見たんです。「グロリアと3人のセラピスト」というものです。これが面白い!
かなり古いものです。現在でも使われている心理療法の創始者が実際に心理療法を行っている場面を録画、解説したビデオです。英語での会話に通訳の日本語が重なってますから、声のトーンなどは注目しにくいのですが、その心理療法の流れやセラピスト自身の在り方などは十二分に感じられるものでした。
随分と前置きが長くなってしまいましたが、僕が一番驚いたのはカール・ロジャースに対してだったんです!
周りの人からは僕がカール・ロジャースに似ているっていう話もありましたけど、外見的な話でビックリしたわけじゃないですよ、もちろん。・・・まぁ、確かに首から頭にかけて似ている感じはしましたよ。
僕が驚いたのは、ロジャースの面談のやり方だったんです。
ある程度は見る前から予想をしていました。きっと人間的な魅力でもって、クライアントを解決に導いていた部分が大きかったんだろう、と。同じようなテクニックで面談をしてもロジャース以上に効果をあげた人は少なかったのではないだろうか、と。ロジャースの手法よりも、ロジャースの人間的な本質の部分(Being)が、ロジャースを一流のセラピストにしていたんだろう、と思っていたんです。
ところが予想はくつがえされました。
ロジャースは違ったんです。
カール・ロジャースについて詳しくご存じない方もいらっしゃるでしょうから少し説明をします。ロジャースはアメリカの臨床心理学者で来談者中心療法(クライアント中心療法)の創始者として有名です。全ての人間が本来持っている自己実現の力(NLP的に言えば「リソース」)を信じる考え方だったそうです。人は自然と良くなっていく。そのためのお手伝いをするのがセラピストの役割ということです。そこで彼がやったのが、受容と共感のスタンスで、クライアントの話を積極的に「傾聴」するというもの。
その際の傾聴の仕方において、ただ話を聞く、ということが取り上げられていた場面があったそうです。相手の言ったことを繰り返す、オウム返しが印象的だったようです。
このように、ただクライアントの話を聞くだけ、というやり方はロジャースの初期のものらしいんです。ロジャース自身も色々と柔軟に考えを変えていったそうです。いわゆる来談者中心療法と呼ばれるものは本来、カウンセラー自身の在り方が重要視されていたとのことです。
そして晩年には、オウム返しの印象ばかりが強まってしまった来談者中心療法と一線を画するためか、パーソン・センタード・アプローチ(PCA)と名称を変え、自分の目指す方向を少しずつシフトしていったそうです。
で、この初期ロジャース派のオウム返しを中心とした「傾聴」を体系化して体験学習の時間を多く設けて学んでいくのが、現在の日本のカウンセリングの勉強に近いような気がします。カウンセラーの方がこれを読まれると、否定されたような感じを受けることもあるかしれませんが、決してそんなつもりはありません。とても大切な部分だと思っています。僕が今回ビデオを見て再認識したのも聞くことの重要性でしたから。
僕自身はカウンセラーの養成講座を受けた訳ではありませんから、多くのカウンセラーの実態というのは知りません。ですから僕の誤解も沢山入っているかもしれません。実際に僕が出会ってきたカウンセラーの方から受けた印象と聞いた話だけで推測させていただくと、日本で主流になっているカウンセリングのやり方というのは、この初期のロジャース派に非常に近い印象を受けるんです。
何が言いたかったかというと、僕はロジャース派というものを「積極的に話を聞く人達」と認識していた、ということです。特に日本のカウンセラーの中心になっているのはロジャース派で、その方々は一生懸命に話を聞くと認識していたんです。
だから当然、その創始者であるカール・ロジャース自身は、とにかく話を聞くんだろうと予想していたわけです。
でも、そうじゃなかった。
ロジャースは結構、チャレンジしていくんです。
クライアントの中に介入していくんです。
クライアントの話をさえぎって、話し出したりするんです。
「全然、ロジャース派じゃないじゃん!」
それが僕の一番の驚きだったわけです。
技術的に分析していくと、凄いことをやっていました。クライアントが自分自身で勝手にリフレーミングされるような言葉がけが多々ありました。いつでもクライアントの本当の気持ちを考えようとしているようでした。話している内容以上に、クライアントが発している本当のメッセージを大切にしているようでした。優しいんです。クライアントは、自分が言っていないことを分かってくれるような印象を受けたのではないでしょうか。
非常に勉強になりました。
一流のセラピストだということを強烈に感じました。
きっともう一度見たら、また別の部分に気づけると思います。
見たところ、クライアントにとっては相当厳しいような言葉も言っていましたし、核心に迫るような、もしかすると触れて欲しくないかもしれない言葉も言っていました。クライアントの話にかぶせて話し始めることもあれば、完全に自分の意見を言うこともありました。でも、クライアントとの信頼関係はずっと維持されていたように見えました。
クライアントは最後のほうに「先生がお父さんだったら・・・」みたいなことも言っていたほどです。
その信頼関係を築いたのは、やっぱりクライアントを大切にして、まずは話を聞きましょう、っていう態度だったように思うんです。
クライアントにとって、文字通り「親身」になってくれたからこそ、クライアントは安心して話が出来たんじゃないでしょうか。
短期間でクライアントに変容をもたらすには色々な手法があります。でも初めの一歩はやっぱり、話を聞くことなんだなぁと思った次第です。
古典的名作にはまだまだ学べることが多そうですね。
僕は高校から理系まっしぐらでしたから、古文とか漢文の授業は得意ではありませんでしたが、嫌いでもありませんでした。どちらかというと歴史を感じられて好きな部分もあったのですが、なにせ読みにくい。言葉として慣れないので、意味が自分の中に入ってこない感じがしていたんですね。ただ、今にして、古文とか漢文とかを味わえたらいいだろうなぁ、なんてことを想像したりします。
文学の世界に限らず、古典の名作というのは残ってきている理由があって、いささか使い古された感があったとしても本質は一向に揺るがないような気がします。
心理療法の世界でも古典的な手法もあるでしょうが、それらは一つの手法として今もなお活用されている方法なのです。
人の内面に関わっていくとき、その基本として大切にされていることがあります。
それは「聞く」ことです。
カウンセリングの中心として広まっている「傾聴」というものです。
よくリーダーシップ研修などではLEADERの6文字を分解して
Listen
Explain
Assist
Discuss
Evaluate
Response
などと言いますが、そこでもListen(聞く)が一番に出てきますね。聞くことの大切さは、あなたも良くご存知だと思います。
で、先日、古典的なあるビデオを見たんです。「グロリアと3人のセラピスト」というものです。これが面白い!
かなり古いものです。現在でも使われている心理療法の創始者が実際に心理療法を行っている場面を録画、解説したビデオです。英語での会話に通訳の日本語が重なってますから、声のトーンなどは注目しにくいのですが、その心理療法の流れやセラピスト自身の在り方などは十二分に感じられるものでした。
随分と前置きが長くなってしまいましたが、僕が一番驚いたのはカール・ロジャースに対してだったんです!
周りの人からは僕がカール・ロジャースに似ているっていう話もありましたけど、外見的な話でビックリしたわけじゃないですよ、もちろん。・・・まぁ、確かに首から頭にかけて似ている感じはしましたよ。
僕が驚いたのは、ロジャースの面談のやり方だったんです。
ある程度は見る前から予想をしていました。きっと人間的な魅力でもって、クライアントを解決に導いていた部分が大きかったんだろう、と。同じようなテクニックで面談をしてもロジャース以上に効果をあげた人は少なかったのではないだろうか、と。ロジャースの手法よりも、ロジャースの人間的な本質の部分(Being)が、ロジャースを一流のセラピストにしていたんだろう、と思っていたんです。
ところが予想はくつがえされました。
ロジャースは違ったんです。
カール・ロジャースについて詳しくご存じない方もいらっしゃるでしょうから少し説明をします。ロジャースはアメリカの臨床心理学者で来談者中心療法(クライアント中心療法)の創始者として有名です。全ての人間が本来持っている自己実現の力(NLP的に言えば「リソース」)を信じる考え方だったそうです。人は自然と良くなっていく。そのためのお手伝いをするのがセラピストの役割ということです。そこで彼がやったのが、受容と共感のスタンスで、クライアントの話を積極的に「傾聴」するというもの。
その際の傾聴の仕方において、ただ話を聞く、ということが取り上げられていた場面があったそうです。相手の言ったことを繰り返す、オウム返しが印象的だったようです。
このように、ただクライアントの話を聞くだけ、というやり方はロジャースの初期のものらしいんです。ロジャース自身も色々と柔軟に考えを変えていったそうです。いわゆる来談者中心療法と呼ばれるものは本来、カウンセラー自身の在り方が重要視されていたとのことです。
そして晩年には、オウム返しの印象ばかりが強まってしまった来談者中心療法と一線を画するためか、パーソン・センタード・アプローチ(PCA)と名称を変え、自分の目指す方向を少しずつシフトしていったそうです。
で、この初期ロジャース派のオウム返しを中心とした「傾聴」を体系化して体験学習の時間を多く設けて学んでいくのが、現在の日本のカウンセリングの勉強に近いような気がします。カウンセラーの方がこれを読まれると、否定されたような感じを受けることもあるかしれませんが、決してそんなつもりはありません。とても大切な部分だと思っています。僕が今回ビデオを見て再認識したのも聞くことの重要性でしたから。
僕自身はカウンセラーの養成講座を受けた訳ではありませんから、多くのカウンセラーの実態というのは知りません。ですから僕の誤解も沢山入っているかもしれません。実際に僕が出会ってきたカウンセラーの方から受けた印象と聞いた話だけで推測させていただくと、日本で主流になっているカウンセリングのやり方というのは、この初期のロジャース派に非常に近い印象を受けるんです。
何が言いたかったかというと、僕はロジャース派というものを「積極的に話を聞く人達」と認識していた、ということです。特に日本のカウンセラーの中心になっているのはロジャース派で、その方々は一生懸命に話を聞くと認識していたんです。
だから当然、その創始者であるカール・ロジャース自身は、とにかく話を聞くんだろうと予想していたわけです。
でも、そうじゃなかった。
ロジャースは結構、チャレンジしていくんです。
クライアントの中に介入していくんです。
クライアントの話をさえぎって、話し出したりするんです。
「全然、ロジャース派じゃないじゃん!」
それが僕の一番の驚きだったわけです。
技術的に分析していくと、凄いことをやっていました。クライアントが自分自身で勝手にリフレーミングされるような言葉がけが多々ありました。いつでもクライアントの本当の気持ちを考えようとしているようでした。話している内容以上に、クライアントが発している本当のメッセージを大切にしているようでした。優しいんです。クライアントは、自分が言っていないことを分かってくれるような印象を受けたのではないでしょうか。
非常に勉強になりました。
一流のセラピストだということを強烈に感じました。
きっともう一度見たら、また別の部分に気づけると思います。
見たところ、クライアントにとっては相当厳しいような言葉も言っていましたし、核心に迫るような、もしかすると触れて欲しくないかもしれない言葉も言っていました。クライアントの話にかぶせて話し始めることもあれば、完全に自分の意見を言うこともありました。でも、クライアントとの信頼関係はずっと維持されていたように見えました。
クライアントは最後のほうに「先生がお父さんだったら・・・」みたいなことも言っていたほどです。
その信頼関係を築いたのは、やっぱりクライアントを大切にして、まずは話を聞きましょう、っていう態度だったように思うんです。
クライアントにとって、文字通り「親身」になってくれたからこそ、クライアントは安心して話が出来たんじゃないでしょうか。
短期間でクライアントに変容をもたらすには色々な手法があります。でも初めの一歩はやっぱり、話を聞くことなんだなぁと思った次第です。
古典的名作にはまだまだ学べることが多そうですね。