2007年06月19日

わかっちゃいるけど

「欧米か!」

って流行ってますね。

個性というか、売りというか、代名詞というか、
何か1つの武器を極めることが大事なことなんだと感じさせられます。

自信を持ってこだわり続けたとき、誰かがそれを認めてくれる。
それがブレイクのきっかけになっていたのかもしれません。


別にお笑い芸人の話をしたかったわけではなくて、
欧米の文化と日本の文化の違いについて思ったことがあったんです。
今日はその話。


欧米では自己主張も議論も一般的であって、
しかも非常に良いと思われる要素として「意見と人間性を切り離せている」
ということがあるように思います。

感情と行動も割りと切り離せている傾向が強いですね。
あくまで日本と比べて、という前提が必要かもしれませんが。

それはディベートが深く浸透しているということとも関係あるかもしれません。


一方、日本の場合は行動が感情に引きずられてしまいやすい傾向が強く、
個人のレベルでも社会のレベルでも、全体性というか一体感が強いようです。
例えば何か1つのことを否定されたとき、
全体として否定されたように感じてしまうということです。

自分のある意見を否定されると自分自身そのものを否定されたように感じてしまう。

「遅刻をするな!」と言われると、
遅刻をする自分の人間性を否定されたように感じてしまうようなことです。

逆に、叱り方としても、遅刻という行動だけに切り離せずに
「また遅刻か!だからお前はダメなんだ!」
というように、その人全てを否定してしまうケースすら耳にします。

「自分の中には色々な要素があって、色々な自分がいて良いのだ」
ということが日本文化の中ではあまり浸透していない気がします。

もともと自然と人間を一体のものとして捉えてきた日本人は
分離して認識するということが染み付いていないのかもしれませんね。

「合理的に割り切る」とか「分別をつける」ということが
欧米文化と比べるとあまり得意ではないようです。
でも、それは情に厚いという日本文化の素晴らしさでもあると思います。


そんな文化的背景を考えると、人と人との関わり方というのも
色々なところで求められるものが変わってくると思うんです。

コーチングは行動にフォーカスします。
極論すると、ヤル気がない人にヤル気を出させる必要は無いわけです。
ヤル気がなければ、ヤル気がなくても行動するように手助けをすればいいんです。
感情と行動を切り離すことが重要な要素と言えるでしょう。

ロジャース派のカウンセリングは徹底的に話を聞きます。
自分の意見をハッキリと主張する教育を受けてきていれば
話を聞いてもらえることが大きな喜びになるかもしれません。

アサーション・トレーニングのような自己主張の仕方を学ぶ方法も
自己主張すること自体には抵抗がない欧米文化の人であれば、
上手く表現する方法を実践することで関係が改善するかもしれません。

論理療法のように合理的な考え方に説得していく方法も
感情に上手く分別をつけて論理的に納得できるような
議論の習慣が根付いている欧米文化では効果的な方法でしょう。


でも、日本人的な素養をベースに考えると。

自分のモノの見方が合理的じゃないから考え方を変えなさい、と
論理的・合理的に説得されても、なかなか納得できないでしょう。
「言いたいことは分かります。でも分かってても無理ですよ」と。

アサーション・トレーニングを積んで、上手な自己表現の方法を学ぶにしても
まず自分の気持ちにフタをせずに相手に伝える
という前段階から身につける必要があるように思います。
自己主張すること自体に抵抗がある場合も十分に考えられると思うんです。

カウンセリングで話を聞いてもらえたら、日本人も安心するでしょう。
一方で、「どうしたら良いか分からないんです。助けてください」
という部分もあるのではないでしょうか。

コーチングをやる場合でも、とにかく行動をする、という部分で
感情をコントロールするトレーニングも必要かもしれません。


「それが正しいのは分かっちゃいるけど、できないんだよ」
という状態になりやすいのは日本文化の1つの特徴ではないかと思います。

そして、それは非常に苦しい状態です。
そんなときに「分かっちゃいるけど正しい」ことを指摘されたら・・・。


日本で主流になっている心理的援助やコミュニケーションの方法論は
そのほとんどが欧米から輸入されてきたものです。

そのときに、日本人と欧米人との気質の違いを考えるのも重要ではないかと思うんです。

もちろん、それは欧米的か日本的かという相手の特性に応じたものであって
日本人だから、とか欧米人だから、といって単純に判断するものではないと思います。
相手が主張の強い人か、感情と行動を切り離せる人か、合理的な考え方が得意な人か、
そういった見立ての上で関わり方を変える必要があるのではないでしょうか。


その人に合わせる。
口で言うのは簡単ですが、こんなに難しくて大切なことはないでしょうね。

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この記事へのコメント

1. Posted by 螢一   2007年06月20日 22:27
異文化の交流って、価値観のストレッチですね。それって、別に国際交流とかじゃなくて、同じ日本人同士の交流でも、十分にあり得る事ですね。

今回の記事のテーマと違うかもしれませんが、これからは価値観が違う人の話も、興味を持って聞けそうです。
2. Posted by makichan   2007年06月21日 14:19
>その人に合わせる

学んだことを実践するたびに、この部分に行き着きます。
その人を受け入れ、その人の力を信じて、存在を愛する
それをいつも心にとめてコミュニケーションしていきたいと思います。
3. Posted by 原田幸治   2007年06月25日 01:57
螢一さん

相手の価値観を理解しようとすると
相手の行動も納得しやすくなる気がします。

相手の言動が納得できずに不満になったとしても
価値観が分かれば不満に思わなくなるかもしれません。

カウンセリングでも悩みの本質を探るために
クライアントの価値観を聞き出したりもしますね。

是非、僕の話も興味を持って聞いてください。



makichanさん

僕も同じようなことを感じています。
合わせるのはホントに難しく、だからこそ重要なんでしょうね。

自分が精一杯に相手を受け入れているつもりでも
その行動が相手に「受け入れられた」と感じさせるものでなかったら
それは受け入れていないのと同じようになってしまいますね。

いつも難しさと大切さを痛感しています。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
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