2009年01月09日

嫌われ役

ミルトン・エリクソンは、ユーモアやジョークを好んだようです。
時には悪ふざけとまで言えるようなことまで。

そこにはアメリカ文化ということもあるでしょうし、
自分自身が身体に大きな障害を抱えているという立場も
そうした態度を受け取らせやすくする部分があったように思えます。

そして徹底的にクライアントのために行動していたようです。

ユーモアも、悪ふざけも、クライアントを見て選んでいたはずですが、
それが治療に役立つものだったから利用していたのでしょう。

エリクソンの徹底ぶりは、治療という目的のためであれば
自分の評価を気にしないところに強く感じられます。

クライアントに嫌われることも、怒らせるようなことも
平気でやっていたような記録があります。

今の僕には到底できないことです。
だから僕には、エリクソンのその部分が凄いことに思えるのかもしれません。

エリクソンは場合によって、クライアントを罵倒することもあったそうです。
露骨な悪口を言ったり、一般的には相手を傷つけるようなことを言ったりして、
それに対して沸いてくる怒りや不満を治療に利用したということです。

強迫的に何かを気にしてしまうような人には、
あえて侮辱することでエリクソン自身に対する怒りを常に意識させ、
結果的に強迫的に気にしてしまう癖を弱めさせる。

確かに、強迫的な状態は悪循環になることもありますから、
それを断ち切るために過激な介入をするのは有効な方法なんでしょう。

ただ、そのために自分に怒りの矛先を向けさせるというのは
普通では、なかなかできない方法のように思えます。

クライアントは怒って帰っていくわけです。
予定通りだったとしても、不満を持ったまま帰っていくわけです。
気分を害しているわけです。

感謝されようなんて気持ちは毛頭ないのでしょう。

もちろん、その結果として、クライアントは良い方向に進んでいくのですから
最終的にはクライアントのためになっているはずです。
クライアントのためを考えれば当然なのかもしれません。

それでも僕は、クライアントも不愉快にならず、それでいて
良い方向に進んでいくような別の方法を考えたくなります。

もしかするとエリクソンには、そういう別の効果的な方法も見えていたかもしれません。
ただ、より即効性のある方法を選択したに過ぎないのかもしれません。

クライアントは困っているからエリクソンの元を訪れるわけです。
それに対する最大限の優しさは、一分一秒でも早く楽になることだとも言えます。
エリクソンは早く効果を出すために、あえて過激な方法も選んだような気がします。

それが「クライアントのためになることをする」という意味で
エリクソンが徹底していた部分だと思うんです。


親身になって話を聞く。
クライアントに共感する。
それも優しさでしょう。

しかし、一時的に負担をかけてでも、少しでも早く良くなってもらう
というスタンスも、とても優しい心遣いだと思います。

それには技術が必要です。

技術よりもクライアントを思う気持ちが大切だ、というのは
正論に聞こえますが、技術も同じくらい大切ではないでしょうか。

クライアントを思う気持ちが強いからこそ、
どこまでも技術を磨くことに力を注げるのだと思います。

クライアントのために何ができるか、何が役立つか。
そのことを徹底できる優しさがあれば、自分がクライアントから嫌われることなど
気にならなくなってしまうものなのかもしれません。

本当に相手のためを思って、あえて相手を傷つける。
これは簡単にできることではないでしょう。

日常生活においては、ますます難しいことのはずです。
自分のために相手を傷つけることはあっても
本当に相手のためにすることは大変なことです。

そう考えると、エリクソンの偉大さを少し垣間見れた気がします。

常日頃から、「相手のため」と思っている自分の心と
正面から向き合う必要がありそうです。

 それは本当に「相手のために」しようとしていることだろうか。
 その状態の相手を受け入れられない自分がいるだけではないだろうか。

いつもそう意識していたいと思います。

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この記事へのコメント

1. Posted by okinawa   2009年01月11日 21:24
うーん、
僕は自分のためにですね〜

お前のためを思って・・・
なんていいながら、
結局自分のためにやっちゃってます。


自分、自分、自分で
世の中回っています。

どーにかならないかなと
思います。
2. Posted by 原田幸治   2009年01月15日 23:51
okinawaさん

コメントありがとうございます。
おっしゃる通りですね。
自分、自分の世の中。
そんなに自分が大事なら、
もっと自分で自分を大切にすればいい気がします。


「相手のために」というのは本当に大変なことだと思います。
と同時に、いつでも「相手のために」では自分のことが
ないがしろになってしまう部分もあるわけで、
そのあたりのバランスも難しいところでしょうね。

僕の場合、だからこそ無意識に何かをするのではなく、
自分のためか、相手のためか、ハッキリと意識化させて
選択することに気をつけています。

「相手のため」と言いながら「自分のため」になっているよりは
「自分のため」だと分かってしたほうが
結果に責任を持てるような気がします。
3. Posted by okinawa   2009年01月17日 11:09
原田さん、

勉強になります。

自分のためか、相手のためか、ハッキリと意識化させて選択するのですね。

僕も今からやります。

ありがとうございます。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
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