2009年01月12日

決まりごとが増える

新春ワークショップが終わった後、打ちあわせがありました。

黙ってきていたことを一度おおっぴらに口にしてしまうと、
それを再び言わないようにするというのは以前よりも大変になるものですね。

ダムに小さな穴を開けてしまったような感じ。
しっかり塞いでないと危険なことになりそうな。

NLPについて話を聞いていると、どうも業界全体の流れのようなものを感じます。
僕自身は他の人たちへの興味が少ないので知らないことも多いのですが、
どこかが何かを変えると全体のバランスが変わる、という
システム的な影響に思いを巡らせます。

NLPというものの伝えられ方が様々なようなので
元締めが指針を作っていくのは当然のことだと思いますし、
それによってNLPというものを大切にしたい気持ちも分からないではない気もします。

ただ、制度で状況をコントロールしようとするのは
どうにも難しい印象を受けてしまいます。

まるで政治家が経済への影響を政策でコントロールしようとするように。

確かに、仕組みやルールは人に影響を与えるものです。
しかし、そこにはルールの内容そのものとは違った裏のメッセージも
同時に伝わっていることを意識する必要があると思います。

言葉で伝えるメッセージの他に、裏のメッセージが伝わる。

例えば、「好きなようにやって下さい」と言ったとき、
その際に込められている気持ちは非言語のメッセージとして
相手に何となくの印象を与えるわけです。

「大丈夫ですよ。安心して好きなようにやって下さい。
 不安なことがあれば、気軽に聞いて下さい。」
そういう気持ちがあれば、行動や声の様子、表情などに表れます。
見守っている雰囲気や信頼感がなんとなく伝わるんです。

一方、「あとは、あなたたちの勝手だから好きなようにやって下さい。
自分たちで話し合って、問題解決の力をつけて下さい。」
というような気持ちで伝えた「好きなようにやって下さい」には、
放任や無関心のメッセージが伝わります。
話しかけにくい雰囲気、困惑、心配、慎重さなどが生まれます。

「自分たちだけで何とかしなくてはいけない」というのは
信頼の結果として生まれる気持ちではありません。

「何とかする」というのは、全てのことに責任を取ろうという気分が含まれます。
最後まで自分たちでやり切らなくては、ということです。

信頼があった場合には、「自分たちだけでやってみよう」という気持ちになります。
意志が生まれるわけです。
義務は発生しません。

どうしようもなくなったら、何とかしてくれる。
だから思い切って自分たちでやってみよう。
…そう思える状態が信頼されているときではないかと思います。

責任をとってくれる人がいるかどうか、とも言えるかもしれません。

「自分だけで何とかしなくてはならない」という状態を作り出すのは
自立を促しているのではないと僕は思います。
それは放任しているだけです。

なぜなら、人間はいつも通りのパターンに固まりやすいからです。

自分だけで何とかしなくては、という思いに駆られたとき
人は心の余裕を失います。
必死にはなるかもしれません。
でも安心感はありません。

その状態では柔軟性が発揮されずらいわけです。
硬直しやすいものなんです。

いつも通りのパターンに固着して、上手くいかないことを繰り返す。
上手くいっているかどうかの判断さえできない状態だったとしたら、
いつも通りのパターンで行動を続けていくのが普通ではないでしょうか。
心のどこかで「これでいいのかな」という不安を抱えながら。

集団に対してそれを行えば、「自分たちだけで何とかしなくては」の状態は
チームビルディングどころか、完全に決まった人間関係のパターンを生み出します。
家族システムの多くが固まってしまいやすいように、関係性までも硬直してしまいます。

成長する、チームビルディングを学ぶというのは、
人間関係の柔軟性を生み出して、いつもと違うやり方をしながら
望ましい結果に近づけていくことだと思います。

いつもリーダーシップを発揮する人がいて、その人に逆らえない人がいる。
その関係が変わって、自由に振る舞えるようになることが成長だと思うんです。
いつものパターンから抜け出して、選択肢が広がったということです。

信頼された状態においては、安心があります。
何をしても大丈夫だという安心があります。
それこそが人を柔軟にし、いつもとは違う行動を手助けするんです。

「好きなようにやって下さい」という言葉のメッセージにも
裏のメッセージが同時に伝わっているわけです。

信頼が伝わるか、それとも放任が伝わるか。
それは態度に表れているものです。

メッセージを受け取る側はハッキリと意識できないことも多いですが、
なんとなくの印象が人の内面に大きく影響しているのは間違いありません。

そういうダブルメッセージを巧みに利用していたのがミルトン・エリクソンでした。
グレゴリー・ベイトソンは、そうしたメッセージをダブルバインド理論で説明しました。

ルールや仕組みは、信頼していないメッセージを伝えている気がします。
お願いや依頼には、信頼している度合いが感じられます。

NLPはエリクソンやベイトソンに学んだ部分が大きかったはずなんですけどね。

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この記事へのコメント

1. Posted by atsuco   2009年01月14日 12:50
わかります!わかる気がします!(^^;

原田先生はまめに更新されるので、毎日楽しみに読んでいます。

そして身近で起こる様々なシーンにあてはめて考えたり、ホッとしたり。



2. Posted by 原田幸治   2009年01月16日 00:01
atsucoさん

いつも読んで下さって、ありがとうございます。

身近で色々なコミュニケーションの中に残念な部分もあり、
逆に嬉しくなるようなこともありますね。

ホッとして頂けるのは、こちらとして嬉しくもありますが、
その裏側に大変な部分もおありだろうと想像します。

気づかなければ単調に過ぎていく時間も、
気づくことができると、そこに彩りを感じられるような気がします。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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