2009年11月18日

「美人薄命」仮説

人の注意は色々なところに向けられるものです。

意識は同時に2つのことをできないというのは必ずしもそうではない。
いくつかのことを同時に作業できます。

その中で、人によって意識しやすいところに個人差があります。
自分の体の外で起きている出来事を観察するのが好きな人もいれば、
自分の頭の中に湧き上がるイメージに敏感な人もいます。
自分の体の中に起こる身体反応を感じることを中心にする人もいます。

このような意識の向く部分には個人差があっても
注意の向け方を心がけていけば、あまり今まで意識していなかった情報にも
気づけるようになっていくはずです。

ただ、これは意識的な取り組みをすれば、という話。
人が普段、生きている中で自分の注意が向いているものに
個人的な偏りがあるなんてことを自覚する人は滅多にいません。

僕がこういうことを知ったのは、NLPを体験して、
それを自分なりに整理して、多くの人を見て、話を聞いて、
その中で気づいてきた過程があるからです。

僕の場合、感覚情報に注意を向けるという発想をNLPで学んでいなければ
こんなことは知らなかっただろうと思います。

ですから、自分の感覚情報への注意の向け方の癖を
他人と比較することなく自覚できている人は少ないと思うんです。
であれば、それを意図的に変えようとする人も少ないでしょう。


ところが、直接的に感覚情報への注意の向け方を変えようとするのではなく、
何かの目的のために、感覚情報に対する注意の癖が変わっていくことはあるようです。

僕は元々、体の内側で起きる反応を素直に感じ取っていた時期がありますが、
理系に進み、生物化学系という観察・分析主体の分野をやっていくうちに、
自分の体の外側に注意の対象の大部分を向ける癖ができました。

最近はコミュニケーションやら心理やらというのを仕事にするようになって
自分の体の内側にも注意が向くようになりましたが、
僕にとっては体の反応を比較的無視していた時期が長かったように思います。

そのような職業的なトレーニングによって注意の方向が変わることはあります。

自分の振る舞いをコントロールする仕事の人は
否応なしに注意の方向が自分の体の外側に向かいやすいでしょう。

自分の振る舞いの全てをコントロールするといえば、
典型的にはミス・ユニバースの代表になるような人たちです。

自分がどう見られているかを常に意識する人たちと言ってもいいかもしれません。
指先の動きや細かな姿勢、体の動かし方の細部にまで注意を向ける人。

それを「周りからどのように見られているか」という視点で観察しますから、
注意は自分の体の外側を客観的にモニターするようなところに移ります。
鏡に写っている自分をいつも見ている状態。

意識的に「美人」を作り出そうとしていくと
注意の大部分が体の外側に向いていくわけです。

人によっては「内面からも美しく」ということを言ったりしますが、
その場合の内面は、自分の考え方とか感情とかを指すことが多いようで、
それもやはり外側からどのように見られるかという発想に繋がっていたりします。

自分の感情さえも、その様子がどのように見られるかという観点で
意識的にコントロールしていく人までいます。

素晴らしいプロ意識だと思います。
それは確かに一部のスキもない美しさに結びつくでしょう。


しかし、感情は複雑なものです。
日常の様々な場面で、自分の体の中には複雑な身体反応が表れます。
生理的な反応が起こるわけです。

このような生理的な反応は、ホルモン類が引き起こす体の状態として
常に自分自身によってモニターできる仕組みがありますが、
強く外側に注意を向けるということは、この反応を無視している傾向と言えます。

体の外側に注意を向ける度合いが高いほど、
体の内側に起きる環境適応のための自然な反応に気づきにくくなるんです。

とりわけ、身体反応の変化は非常に複雑で、
一言で「怒り」の身体反応と呼べないような
色々な想いが入り混じった反応もあるものです。

それを感じないようにするのは、自分の気持ちのある部分にフタをするようなもの。
自分の本当の気持ちや体からのメッセージを聞いていない状態でしょう。

すると、その身体反応がストレス対応のものとして重要であったりすると
体はその反応というメッセージを自覚できるレベルにするために、
反応を強めたり、何か違った形の反応に変えたりする傾向があるようです。

つまり、体の痛みとして表れる。

ストレスを無視していると、体に不具合が出てくるというわけです。

程度問題の差はあれ、例えば、肩コリがあるというのは
肩コリの状態になる前から、目や首や腕に疲労感の身体反応を出しているものです。

それに気づかないか、気づいていても対処できない状況があって無視していて、
その結果として疲労が蓄積してくると、分かりやすいメッセージとして
肩コリという体の症状になって出てくる。
そんな傾向かもしれません。

肩コリになる前の体の反応を敏感に感じ取って、
「疲れてきたから休もう」とか「少しリフレッシュしよう」とか
そういう発想を抱ける人は肩コリになる前に体のケアができてるということです。

弱い身体反応のレベルで意識できるぐらい、常日頃から体の内側に注意が向いていれば
身体的な痛みにまで発展することは少ないと考えられます。

痛みは人にとって自覚しやすい重要な感覚ですから
ストレス対応のメッセージを痛みにして出してくるのは分かりやすい手段なんでしょう。

その痛みにさえ気づかなかったりすると
胃潰瘍のようなストレス性の病気になったりもするのだろうと思います。

運動をすることは、そのようなストレスケアの方法の1つですが、
体を動かして体に蓄積した疲労の状態を取り除く以外にも、
自然の体の内側に意識がいきやすくなる効果もあると考えられます。

僕はヨガを勧められたことが多いんですが、
ヨガをやれば体の内側の状態に注意が向きやすくなり、
それによって自然と体の内側とコミュニケーションする時間が取れるから
という理由もあるようです。

そして、美人の中にも同様にヨガをやる人がいます。
セレブの間で流行っていたりするのも理由でしょうか。

しかしながら、自分がどのように見られているかを常に意識する美人は
ヨガをやっていても自分の体の内側に注意を向けるよりも
自分のポーズが美しいかどうかに注意が向きやすいかもしれません。

すると体を動かすことで疲労は軽減されたとしても、
依然として体の内側に注意が向く機会は得られないままです。

例えるなら、体が「大変だよ」と教えてくれているのに
「まあまあ」と言って、なだめてしまう状態。
表面的なケアはしてくれても本当に大事なメッセージは無視されてしまう。

そういう状況が続くと、体のほうも最後の手段に出るのかもしれません。
痛みでもってもストレス反応を自覚してもらえないとなると
残りはもっと深刻な体の症状になってくる…。

推測ですが、そんな可能性もあるんじゃないかと思います。


美人は「自分がどのように見られるか」という外部の意識を高め過ぎるあまり
自分の体の内側に注意がいかなくなり、体からのメッセージを受け止めず、
体の内部に身体的な問題が蓄積していったりしやすいと考えてみる。

すると「美人薄命」という言葉にも、シックリくる部分があったりします。

全ての美人が短命ではありませんし、
世間で美人と呼ばれる人たちの中にも体の反応を自覚している人もいます。

実際には、自分の体の内側の反応と上手に関わり、
自分の中の問題をケアしていくことで、内面が外見に影響するケースのほうが
僕の身の回りでは頻繁に見て取れるんですが。

プロ意識とはいえ、片寄りがある部分には気をつけるポイントがありそうです。

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この記事へのコメント

1. Posted by わかたか   2009年11月21日 00:11
自分の内側に目を向けてない人が、痛みとしてカラダに出やすいというのは、良く感じます。
特に、こうしなければならない、ああしなければならないという、信念に縛られている人の慢性症状は、身体の治療だけではなかなかよくなりません。

痛みに対していうと、「痛み」という便利な言葉が呪いになっているケースが多いです。

腰の辺りが、重い感じ、ギュッとした感じ、押されたような感じ、締め付ける感じ・・・
痛いというラベルを貼らないで、そういうサブモダリティで症状を伝えてくれる人は治りが早いように感じます。

いつも興味深く読ませて頂いています。
ありがとうございます。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
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