2009年12月16日

一緒にスベる技術

ビジネスで上手くいくためには、顧客に合わせて上手にスベる必要がある。
そのことを、あるコンサルタントの方に学びました。

「スベる」というのは、その人の表現ですが、
「ズレる」とか「間違える」とかのほうが一般的な表現かもしれません。

人は普通、自分の本当の欲求に気づいていないものです。
自分が何を求めて、その瞬間の言動を決めているのか。
その奥底で求めている欲求が、形を変えて意識されて、問題や目標として表れてきます。

心理の分野から考えていけば、人の深いレベルの欲求を知ることもできると思いますが、
だからといって、それに気づいている必要もないでしょう。
知らなくても良いことに直面するのは大きなエネルギーを必要としますから。


セラピーをやっている人たちの中には
過去の心の傷を癒していく方向性を取る人もいますが、
必ずしも心の傷や満たされなかった想いは、そのもので癒す必要はありません。

幼少期に親から十分に愛されたと感じられなかった不満から
大人になって他人から認められようと仕事を頑張る、
というようなケースは沢山あるものです。

それで仕事で十分な評価を得ることができると
不足していた承認の気分を埋め合わせることができます。

発達心理で言われる発達課題のようなものは
タイミングがズレたとしても、後から埋め合わせ可能なわけです。

算数に喩えると、小学校の時に苦手だった文章問題が
中学で方程式を頑張ったら自然とできるようなった、という感じでしょうか。

達成できていない発達課題はツケのような形で後にまで影響する一方で、
やり方次第では別の方法でツケを埋め合わせできるということです。


心の中の満たされていない部分や傷として残っている部分は
形を変えて表面に表れてくる。

その形を変えて現れてきた願望や不満を満たすように取り組んでいけば、
表面的には満たされた状態になります。

ただ、本当に求めているものとズレた形で満たそうとしているわけですから
十分に満たされたという感じを味わうには相当な努力が必要なこともあります。
いつまでも満たされない状態を味わい続ける人もいるようです。

「十分なはずなのに満たされない」と感じる場合には
求めていた欲求が間接的に満たされて、次の本当に大事なことに気づけることがあります。
大金持ちになった人が、哲学や人生観にシフトしていくケースなどは、そうでしょう。

世間から見ると「もう十分だろう」という程なのに、
本人だけが「まだ不十分、満たされていない」と感じる場合には
求めているものがズレている分だけ欲求が達成されにくい可能性が考えられます。

「もっと、もっと」と続けていけば満たされる時がきて
別の本当の欲求に気づくケースもあるかもしれません。

逆に「いつまでたっても満たされない、求めているものが違うのか?」と
自分の願望がズレていたことに気づくケースもあるでしょう。

ダイエットに成功してモテたいのであれば、「モテたい」というほうが本質的です。
ダイエット以外の方法でモテることだってできるはずです。

もっと言えば、「モテる」という状態だって何のために、の部分があります。
チヤホヤされたいのなら、それによって感じられる気持ちを求めていると考えられます。

ダイエットの目標を達成したはずなのに、チヤホヤされないから気持ちも満たされない。
それで次にファッションのほうで努力を始める。
で、すごくオシャレになったのに、やっぱりチヤホヤされない。
それで人を引きつける話術を勉強して、少し人気が出てきて…。

そんな風に、本当の欲求を満たすために、ズレた行動を続けることは良くあるわけです。


一方で、的確に対処できれば、どの部分でも本質的な欲求が満たされることがあります。

心身の不調は分かりやすい例でしょう。
精神的なストレスが体の一部に負荷をかけ、
その影響が別の体の部分の痛みとして表出する。

あるいは、仕事上の都合で決まった姿勢を続ける必要があって
そのときの負荷が体に溜まり、陰鬱な気分になってくる。

例えば、パソコン仕事で眼精疲労が溜まっているとき、
良いメガネを使うことで、全体的にスッキリしていくこともあります。
目が疲れやすい姿勢を直すことで、バランスが取れてくることもあります。
運動不足を解消することで、良くなっていくこともあります。
骨格や筋肉の歪みを直すことで、良くなっていくこともあります。
食べ物や生活習慣を変えて、良くなることもあります。
的確な薬を処方してもらうことで、良くなることもあります。
仕事への不満を上司と相談して解消することで、良くなっていくこともあります。

心身の繋がりに対して、どこからアプローチしても良いはずなんです。
効果的なやり方であれば、どれでも全体的に良い方向にいく。

日常の行動や、個人的な目標についても同様です。

ダイエットに成功して、内面的にも自信がついて、
大勢の人にチヤホヤされることはなくても、
身近にいる大切な人間関係から認めてもらう経験をする。
それによって上手く欲求が満たされる、というケース。

オシャレの方向では上手くいかなかったけれど、
お笑いの方向では活躍できて、求めていた気持ちが満たされてくるというケース。

どの形に進んだ時に欲求が上手く満たされるかは分かりませんが、
求めている気持ちが満たされれば、何を用いても良いと思います。

その上手くいきやすい形というのが、その人の才能かもしれません。


本当に求めているもの、深いレベルの欲求を、どのようにして満たしていくか。

催眠やNLP、自己啓発系のワークの中には、
そこをダイレクトに扱う方法があります。

前述した「大金持ちが哲学的な方向にシフトする」ような場合に近いぐらい
自分の欲求を満たすことのできる方法。
それによって別の本当の欲求に進めるようになる。

そして、その本当の欲求というのも、やっぱり1つの表面化した形に過ぎません。
その人にとって一番大事なものというだけのことです。

社会の常識やルール、親や学校から与えられてきた価値観を鵜呑みにするのではなく、
自分自身の体験を通じて実感として大切にしたいと思えた価値観。
それが反映された欲求でしょう。

「スベる」とか「ズレる」とかいうのは、価値観の違いという言葉に変えられそうです。

自分の深いレベルの欲求を満たすために、何かの形に表面化させていくとき、
誰かから与えられた価値観にズラして意識することもできます。

「モテるためにはダイエット」という世間の価値観のところへズラして表面化させ、
その結果としてダイエットを目標にするようになる、などのケースです。
ファッションやブランド品、高級車などもそうかもしれません。

商品を手に入れた先に求めている内面にこそ欲求があって、
それを間接的に満たすために商品を購入する。
そのときのズレが人それぞれ違っているから、商品が沢山あふれているわけです。

ビジネスの上手い人は、そのズレを敏感に感じ取って
内面の欲求を間接的に満たせるような商品を提供しているという話です。

ズレた欲求に対して、一緒にズレてあげられる人。
もっと言えば、ズレを通して、本当の欲求まで満たしてあげられる人。
そういう人がビジネスで活躍しているのでしょう。

広告宣伝は、顧客のズレ具合に合わせた商品を紹介する行為となるでしょうか。

最近は、どの方向にズレていくかを教え込みながらビジネスをするケースもあります。
今までの世の中には知られていなかった魅力を教えながら商品を提供する。

任天堂のWiiなどは、ゲームに魅力を感じなかった世代の人々に
ゲームを通じて感じられる深いレベルの欲求を教えてあげたわけです。
家族との繋がりを感じるにはゲームでなくても良いはずだったにも関わらず、
「ゲームでも欲求が満たせるんですよ」という教育をしたと考えられます。

ゲームで家族団欒というのは、会話だけで家族団欒ができる人たちにとっては
随分とズレた欲求の解消方法に見えるかもしれません。
もっとコミュニケーションに目を向けるという解決方法もあります。

それでも、ゲームを通じて欲求が満たされれば、役には立っているんです。
上手くいくための方法としてゲームが役立ったという事実は動きません。

心身の不調を解消するために、整体に行くか、温泉に行くか、
カウンセリングにいくか、転職するか…、様々な対処法の中から
何を選ぶかという問題と、似たようなものです。

となると、後は好みでしょう。
その人の好きな方法、その人にって上手くいく方法で欲求を満たせばいい。

違いがあるとすれば、自分が「好き」な方法を選んでいるかどうか、ということです。

ファッションが好きなら、ファッションの方向で欲求を満たす。
車が好きなら、憧れの車に乗ることで欲求を満たす。

自分が好きなのではなく、周りに合わせた結果として
気づかないうちに選んでしまっているとしたら、
いつまで経っても満たされない感じを味わい続けるかもしれません。

才能を持った体、価値観を育んだ環境に生まれてきた自分にとって
好きなズラし方で欲求を満たせるようになること。
それができたら楽しいでしょうね。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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