2009年12月17日

ボトム寄りの人として

NLPでは「人には色々なレベルのプログラムがある」と説明しています。
価値観とか、信念とか、習慣とか…。


一般論として、抽象度の高いモデルを先に考えて、そこからトップダウン式に
実体験として感じられる具体的な出来事を説明しようとするやり方は、
そのモデルに執着するあまり、説明が強引になるケースがあるような気がします。

具体的な出来事を分析して、そこからパターンを見出してモデルを作るやり方は
地味で時間がかかりますし、多くのことを説明できる抽象度まで上げていく過程で
何度も矛盾を包括しながらモデルの修正を必要とされる難しさを持っていると思います。

僕が研究職時代に扱っていた生化学の分野でも
生体活動をモデル化してシミュレーションしようとするトップダウン側の人たちと
具体的な生命現象を実験的に解明しようとするボトムアップ側の人たちがいました。

どちらもそれぞれの課題を抱えていて、両者が1つになるのには
かなりの時間がかかりそうな印象を感じていたものです。


NLPも1人の人物が体系化したものではありませんから
色々な人の着眼点が含まれていて、統一的な理解が難しい部分もあるようです。

元々のNLPは、心理療法家たちの言語パターンの分析から始めたものですから、
かなりのボトムアップ型のスタンスで進んでいたわけです。

それらの言語パターンは実際に有効だった質問や語りかけの内容ですから
応用の仕方によっては非常に効果があるモデルになるのも当然でしょう。

ただ、良く使われる質問や言葉かけのパターンとして分析した結果、
「どのようなコミュニケーションの流れの中で」、「何を目的として」使うか
という観点が抜けている印象は否めません。

通常のコミュニケーションでは、会話の流れを捉えた上で
その先の会話の展開を予測しながら言葉を発するものです。

相手の言葉に対して文法的に正しいだけの返答をする方法はいくらでもありますが、
文法的に正しくても意味としてコミュニケーションが成立しなければ
空気の読めない人と言われてしまうはずです。

「時間が分かりますか?」と聞かれれば「はい、分かります」ではなくて、
「今、○○時です」と答えるほうが求められた形だということです。

その会話がなされる場面として、どういう流れがあって
どんな感情を持っていて、何が期待されているかによって、
効果的な言葉は変わってくるわけです。

ですから「〜できません」という言葉に対して
「もしできたとしたら、どうですか?」という質問をする方法は、
ある場面で有効であったとしても、逆効果にすらなるときもあるんです。

ただ単純に、言葉のパターンを分析した対象の心理療法家たちは、
クライアントが「〜できません」と言った後に、
「もしできたとしたら?」という質問をするケースが多かったというだけでしょう。

あえて、その質問をしなかったときだってあったはずです。
それが、言語パターンとして分析すると、「発言→質問」の一対一対応になってしまう。

「どういう流れで使うか」というレベルまで体系化しようとすると
作業としては難しくなってしまいますし、具体的な場面に限定し過ぎると
今度は心理療法の場面以外では使えない技術になってしまう可能性もあります。

技術として、広く使える可能性を残しながらパターンを抽出した結果として
コミュニケーションの流れを無視したものになったのかもしれません。


NLPの中には、このように「役に立つことが最優先」といったフシが感じられ、
全体として理論的な整合性が取れている必要性を無視してきた印象も受けます。

元々はボトムアップ型の分析結果だったところに
トップダウン型で理論を説明しようとする人も混ざってきたのでしょうか。

まとまりの弱い感じのする部分もあるようです。

「無意識」や「プログラム」といった言葉で説明すると、
なんとなく「そんなものなのか…」と受け入れてしまいやすい。

仮に違和感があったとしても、それをNLPの考え方のモデルと捉えれば
正しいか間違っているかではなくて、1つの思想になります。

心理学の言葉で説明するか、脳科学の言葉で説明するか、NLPの言葉で説明するか。
そんな説明のための用語の問題として片付けられます。

NLPには時々、そういうNLP用語を使った便利な説明モデルがあって
そのトップダウン型の説明の仕方が、具体的な技術と繋がりにくい場合がある気がします。

僕自身は生化学の分野で徹底的にボトムアップの研究をしていましたから、
観察して分析するというスタンスが好みです。

というよりも、そのスタンスが好きだったから生化学を選んだのかもしれません。

今の仕事もセミナーやカウンセリングを通じて、人を観察することが多い。
日常でも世の中を観察するスタンスは変わらない気もします。

なので、僕としてはNLPのボトムアップのスタンスに期待があります。

誰かが作ったモデルに当てはめて世の中を見ようとするのではなく、
世の中に起きていることを見た結果として、少しずつモデルを作っていく。

土台を広げて、シッカリとさせていく作業も必要だと思うんです。
土台を確実にしないまま、上だけを大きくするのは無理がかかるでしょうから。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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