2009年12月30日

直面するエネルギー

人は、自分の内面の状態に気づくことができても
その状態が何によって起こっているものかまでは、
なかなか自覚するのが難しいものです。

電車の中でイライラしていた状態を引きずったまま会社にいって
部下の仕事の失敗に対して吐き出してしまったり。

セミナー会場の圧迫感や匂いの不快感を
セミナーの内容への不満に投影してしまったり。

自分の内面に深く気づくのは大変かもしれません。


ところで、NLP「でメタプログラム」と呼ばれる人間の性質の分類法に
(NLPでは人間の最上位のプログラムだと言われていますが…)
「目的志向型」と「問題回避型」の両極に注目するものがあります。

何かを行動したり、考えたりする時に
○目的・目標とするところを意識しやすい人
○問題を回避しようとするところを意識しやすい人
がいる、と。

単純に「目的型」と「回避型」と呼んだり、
「目的追求型」「問題回避型」と訳されたりすることもあるようです。
何かに「向かっていく」感じか、何かから「離れようとする」感じか。
そんなイメージでも良いでしょう。

進んでいきたい目標に目を向ける傾向と
避けたい現状の不満に目を向ける傾向という分け方です。

こうした傾向は、僕には表面的なものに思えるので
その傾向を作り出す内面的なプロセスは色々とあると思います。

物事の時系列や因果関係を幅広く意識できる人であれば
現状の不満を回避することと、回避した結果として進みたい方向を意識することは
あまり大きな差としては自覚されないでしょう。

言葉の言い回しとしては「〜にならないように」という注意が出るかもしれませんが、
それも現状の不満を避けるためだけに使われる言葉ではなく、
目標達成に向けたリスクマネジメントとして出てくることもあります。

多くの関係性を同時に考えられれば、
あまり強い目的志向の雰囲気は出ないとも考えられます。
複数の可能性を考えるので、目的が1つに特定されにくいからです。

一方、物事に1つ1つ集中して取り組み、その瞬間を最大限に体験していく人は
物事の因果関係を同時に捉えるというのが難しいものですから、
その状況によって目的志向の傾向と、問題回避の傾向が強く表れると考えられます。

その瞬間に目的に意識が向いていれば、そのことに集中する。
その瞬間に問題に意識が向いていれば、そのことに集中する。

不満ばかり口にするや、不快な対応に文句を言いたくなるときなどは
問題状況に集中して体験している状態と言えます。
そうなると、問題回避すらしようとしていない状態でしょう。
問題志向とでも言ったほうが良さそうなぐらいです。

2つに分けようとすれば、問題について話をしているので
「問題型(問題回避型)」に分類されるのかもしれませんが、
その問題から「離れようとしている」かと言われれば、必ずしもそうではない。

問題に集中している時は、逆に目的を意識させることで
「目的志向」の発想に導くこともしやすかったりします。

1つの出来事に集中して入り込む傾向がある場合には
「目的型」も「問題型」も強く表れるということです。
そのタイプの人が何かの目的を強く意識すれば、
自然と「目的型」の雰囲気は強く出てくるでしょう。

「目的」か「問題」か、あるいは「向かう」か「避ける」か
だけでは説明できない部分もあるということを分かった上で、
傾向の分類を利用するのが大切だと僕は思います。


また、一般的なイメージからすると
「目的志向型」のほうが目標に向かってモチベーションを高く持ちそうですが、
変化に向かって進んでいくエネルギーの強さと、
「目的志向」・「問題回避」の傾向は無関係です。

目的を強く意識していながら、目の前の一歩が目的と結び付けられず
なかなか前に進めないような人もいます。

目的を意識しているつもりが、本当の問題から目を背けているだけで
現状維持を続けていくこともあります。

問題に強く入り込んで、身動きが取れなくなってしまうこともあれば、
問題を回避しようとして強烈なエネルギーを発揮することもあります。
強い後悔がエネルギーになって変化を引き起こすことは多々あるものです。

物事の関係性を幅広く捉えて、リスクマネジメントを上手くできる人は
目的に向かってガンガン進むようには見えないでしょうが、
一歩一歩着実に前に進んでいくこともあるでしょう。

前進していく、変化していく力があるかどうかは、
目的志向、問題回避とは関係なく、その人の自信やセルフイメージと関係します。

重要なのは、自分がどうなりたいかを、自分自身と向き合って気づいていくこと。

そのためには、目標・目的を設定して行動を起こし、
それを少しずつ修正していくという方法もあります。

ダイレクトに、自分にとって最も重要なテーマへ目を向けて
本質的な不満や欲求を満たしていく方法もあります。

どちらにせよ、自分と向き合って、自分の進んでいる方向を吟味するのが肝心です。
そして、自分と向き合うのは負荷のかかる行為です。
エネルギーが要ります。

ですから、自分と向き合うエネルギーを持っていて、
変化への強い動機がある場合には、自分の不満に目を向けるほうが早いわけです。

エネルギーがない場合には、エネルギーを上げていくほうが優先されます。
そのときには自信をつけていくプロセスが役立ちます。
コツコツと目標に進んでいる実感が自信に繋がることもあります。

「目的を意識するか、問題を意識するか」よりも
「どれだけ自分と向き合える状態か」のほうが大事だということです。
そこに合わせて関わるのが大切だと思います。


特に、ある程度エネルギーがあって、
前に進んできた結果として自信をつけてきたような人が
目的志向の傾向を強く持ち続けてしまうと、
自分の内面と向き合う部分が少なくなってしまうことがあります。

自分と向き合いながら目標に向かって進み続けていけば
何を自分の目標と設定するかが見えてくるでしょうが、
1つの目的に向かって進んできた流れのままで目的を持ち続けてしまうと
自分の内面と向き合うことをしなくなることがあるようです。

 仮に大きな不満を2つ持っている人がいたとします。
 その人が1つの不満をベースに、目標を設定して目的志向で進んでいく。
 目標が達成されるたびに次の目標を設定して、満足度も上がっていきます。

 それでも目標に限度はありませんから、次々に目標が更新されるでしょう。
 その方向では十分に満足が得られてきていても、
 更新された次の目標を達成することが目的になります。

 その一方で、もう1つの不満のほうには目が向けられていないまま。
 自分と向き合うプロセスを十分に取っていれば、
 もう1つの不満を満たす方向での目標だって設定できるはずです。

 でも、自分と向き合うことを十分にせずに、目的志向だけを強め過ぎると
 いつまでも違った方向で目標を達成し続けていくことになってしまうかもしれません。

目標や目的は、現状から離れたところにあります。
目標と現状の両方を意識することが重要ではないでしょうか。

目標や目的ばかりに集中していると、現状の自分の気持ちに向き合えません。
現状の不満ばかりに集中していると、どうなれれば良いかという目標が見えません。

両方が大事なんです。

人は自分の気持ちを明確に意識するのが難しいようです。
不満があっても、それを違う形で対処しようとしてしまうことはザラにあります。

現状の気持ちに向き合い、それに見合った目的を決める。

その意味において、「目的志向型」が「問題直面の回避型」になっていないか、
「問題回避型」が「目的意識の回避型」になっていないか、
十分にチェックする必要があると思います。


どうやら昨今は不安の多い時勢のようです。
多くの人が漠然とした不安を抱えている。

それに対して、その不安に直面できずに何かの目標に意識をズラす人もいます。
不安な気持ちに浸ってしまって、嘆き苦しむ人もいます。

全体が不安に満ちて、エネルギーを失いそうに見える状態だからこそ、
力のある人が不安の状態に向き合って、本当の目的を探すタイミングなのかもしれません。

願望実現や目標達成は素晴らしいですが、
不安の中核に直面していける人も大切だと思うんです。

今後は、そういう技術が求められていくような気がします。

その会話は
「あなたの目標は何ですか?」とか
「あなたの抱えている問題は何ですか?」
とかから始まるものではないでしょう。

きっとこんな感じです。
「今回、取り組みたいご自分のテーマは何ですか?」

cozyharada at 17:16│Comments(0)TrackBack(0)clip!NLP | 全般

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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