2010年01月26日

絵の描き方

先日、セミナー中に『牛』の絵をホワイトボードに描きました。
適当に描いた割に、意外と牛っぽい感じに仕上がったので自分でもビックリ。

実は、牛の絵を描こうとしたこと自体は以前にもあって、
そのときは急いでいたために大雑把な姿を描いたんです。

そうすると、パッとしません。
辛うじて『牛』という程度。
ホルスタイン的な模様にしたり、角を強調したりする必要がありました。

一方、先日のほうは、数十秒ぐらいかけて一頭を描いたので
ペン運びも倍以上ゆっくりとすることができて、
細かいラインの凹凸で写実的な感じの牛を描けたようです。

僕の場合、少し時間を長めにとっても、写実的に思い出しながら描いたほうが
全体の形としても、それっぽい絵になる傾向があるみたいなんです。

前者の大雑把な形というのは、マンガ的というか、イラスト的というか、
『牛』に必要な最低限の情報だけを盛り込んで表現されるものですが、
後者の詳細な形というのは、写真的な雰囲気で、
実物の牛をデッサンとして描いていくような表現と言えるかと思います。


僕が絵を描こうとすると、写実的に思い出そうとするほどに
鮮明な映像が頭の中に浮かんできます。
その傾向は部位に集中するほどに強くなるので、
細かい部分に注目しながら描き込み、全体とバランスをとる方法になります。

もちろん、どんなものでも鮮明に映像を浮かべられるわけではありませんが、
多くの場合、どこかで見た写真やテレビ動画のような映像が浮かびます。

その姿勢や角度は、僕の頭の中で勝手に置きかえられていますから
厳密な過去の記憶の1シーンではなくて、ある程度一般化されたものと言えますが、
一般化された記憶が詳細な映像情報を持っているようなんです。

もっと正確にいうと、詳細な映像情報で作られているイメージの記憶にアクセスして、
それを頭の中に思い浮かべるのが得意分野らしい、ということです。

…ちなみに、それを鮮明に浮かべられることと、それを絵に描けることは別問題で、
 絵を描くためには、また別の作業が必要になります。


つまり、僕の頭の中では、抽象度の低い写実的な映像情報が再構成されやすいわけです。
普段から、そのような外部情報の取り方をしているために、
具体的・写実的で詳細な情報が記憶の中に残りやすいのでしょう。

いわゆるサヴァン症候群であるように、極端に写実的な絵を描ける人というのは、
見たものの情報を一般化することなく具体的なままで保持できていて、
その映像記憶にアクセスして、鮮明に思い浮かべられるものと考えられます。

僕に具体的な情報を詳細に捉えようとする癖があることは、
観察を好んだり、生物化学系を専門にしたこととも関係していると思います。

一方、世の中には、抽象度の高いマンガ的な映像情報が作られやすい人もいます。
写実的ではないけれども絵が上手い人や
可愛らしい絵をサラサラッと描ける人というのは、
そもそもが一般化された特徴を捉えるのが得意な傾向と言えるでしょう。

そのものの見た目の特徴を強調して捉えながら、
近いジャンルのものと共通する部分はシンプルにまとめる。

『牛』であれば、四本足で、丸みを帯びた胴体、顔は長め…ぐらいの情報は
他の動物と共通している部分ですから、この辺はシンプルに描くことになります。

カバであっても、馬であっても、羊であっても、大きくは変わらない構図があって、
それをベースにして特徴を際立たせていくのだろうと推測されます。

牛の場合には、その顔に角をつけて、白黒の模様を入れて、鼻輪をつける。
胴体にも白黒の模様を入れるぐらいでしょうか。

このように抽象的な特徴を捉えてマンガ的に映像を思い浮かべられる人というのは
同じカテゴリーに共通する一般的な特徴も映像化できるように思います。

動物、とか植物とかいった大雑把なカテゴリーでもマンガで描ける。
で、個別の特徴も一般化されたイメージで捉えられていて、
それを大雑把なカテゴリーの映像に加えていく形で細かい分類ができている。

実際には、こういうマンガ的な映像の浮かべ方であっても
同時に三次元的な立体としての様子も含まれていますから、
シンプルで可愛らしくて絵がうまいという場合には
極端な特徴づけと立体的・動作的な表現が組み合わさっていることが多いようです。


まとめると、僕のように詳細な情報を具体的なままで思い出しやすいタイプは
細部の形の集合体として全体の映像が作られ、写実的な絵になりやすく、
特徴をシンプルに捉えて思い出しやすいタイプは、分類された特徴の情報(角や白黒など)
を組み合わせることで全体の映像が作られ、マンガ的な絵になりやすい、ということです。

この映像的な特徴自体が記憶の中で整理されていなかったり、歪められていたり、
過度に一般化されていたりすると、そもそも頭の中に
そのものの「それっぽい」イメージが浮かんでこない可能性が出てきます。

絵が苦手な場合には、イメージが浮かばず、
何を描いてい良いか分からないことがあるわけです。

別の可能性として、そもそも映像情報にアクセスすることが苦手で
記憶の中から映像を探し出して思い浮かべられないケースもあるでしょう。

イメージワークなどをやろうとしても映像が浮かばないとか、
目標達成のシーンを描こうとしても描けないとか言いながら
マンガ的な絵を描くのが上手い人がいたりしますが、その場合には、
具体的で詳細な情報よりも、一般化された特徴を捉えやすい人だと考えられます。

そういう人は、マンガを描く画力を持っているわけですから、それを活かして
静物画やデッサン、風景画などを細かく描く練習をすれば良いはずです。

また、映像情報へのアクセスが苦手な場合には、
何かを思い出して絵に描くというトレーニングから始めるのが良いと思います。


映像で整理されている情報も、概念記憶のネットワークという意味では
全てに共通しますから、言葉を話すときの特徴とも関係してきます。

マンガ的な絵を描くのが得意な人は、詳細な説明よりも
特徴を捉えて一般的に話すほうが上手い傾向が見受けられます。

僕は言うまでもなく、情報を詳細に捉えて分析するほうですから、
顕微鏡のような視点を持っていると言えるかもしれません。
その場合には、絵も話し言葉も、詳細な部分を意識しやすいわけです。

ということは、自分が得意ではない方法の絵を練習することで
会話の時の情報整理のパターンにも影響が出てくる可能性が考えられます。
かなり効果的な手法だと思います。

僕の場合には、抽象的なものを説明するときに、その中から同類と共通する情報を探し、
同時に、特徴的な情報を項目ごとに列挙していくようにすると良いのでしょう。

『牛』を説明するときに「角があって、鼻輪がついてて、白と黒のブチ模様の動物」
という具体に。

チョットそんなことも意識してみようかと思います。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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