2010年06月26日

タイプ分けのタイプ分け

世の中には、色々なタイプ分けがあります。

大きく分けると、それらは
 ・人を大まかに分類して、理解を簡単にしようとするもの
 ・人の細かい特性を見て、相手を少しずつ理解しようとするもの
というように、2つに分類できると思います。

「大まかに分類して理解を簡単にしようとする」というのは
極端な例だと、血液型別の性格分類のような場合です。

A型の人は几帳面で神経質、O型の人は大らかで大雑把、といった感じでしょうか。

僕はあまり血液型の話は詳しくなくて、どちらかというと
血液型を決める遺伝子や、タンパク質に結合している糖鎖の種類とか
そういった分子レベルの話のほうが情報量が多いぐらいです。

血液型別の性格分類は、相手の血液型を聞いて、
その情報を元に相手の性格を推測して、
相手を理解するのを簡単にしようとするものでしょう。

「あの人はA型だから、几帳面な性格のはずだ」といった具合い。
また、その人の几帳面な部分を見たときに「やっぱりA型だ」と安心したり。

こうしたタイプ分けは、相手をシンプルに理解して、
分かったつもりになることで自分が安心しようというスタンスだと言えます。

で、僕は、その手のタイプ分けが好きではないので
ここで例を数多く挙げるほど批判ばかりになってしまいますから
とりあえずは、よく耳にする血液型ぐらいにしておきます。

手短にいうと「〜タイプ」というのを数種類用意して
全ての人をそれに分類して当てはめてしまうものです。

なぜ、僕がその手の分類を嫌うかというと、
それは人を分かったつもりになって、
実際の目の前の人を見なくさせる手段だからです。

全体的な傾向を理解して、世の中の動向を把握したりするような場合には役立ちます。

例えば、新しく会社を立ち上げる時期には
情熱的で、行動力があって、目標意識が強い人が活躍し、
その会社が安定してきた頃からは
冷静で、分析力があって、問題解決能力の高い人が活躍する、
といった感じ。

これは、もう最初から全てが全体的な傾向の話だけで進んでいますから
大雑把な分類であっても問題は起きにくいでしょう。
当然、例外的なものもあるでしょうが、最初から傾向の話ですから
「そういうことが多い」という理解で構わないと考えられます。

ところが、こうした大雑把な人の分類の仕方を
特定の個人との人間関係に当てはめた場合、それは問題になってくると思います。

目の前の相手が例外的な人である可能性があるからです。

この手のタイプ分けは、複数の特性をセットにしていることが特徴です。
「情熱的で、行動力があって、目標意識が強い」のを1つのタイプにする。

ただ、世の中には「情熱的で目標意識が強い」特性を持っていても
自分から何かを始めるような行動力を持ち合わせない人もいます。
夢を情熱的に語ることで、周りの人を巻き込んでいく人などでしょうか。

ところが、「〜タイプ」だと思って当てはめて見てしまうと
「情熱的で目標意識が高い」から、当然「行動力がある」はずだと
勝手に想像してしまう危険性があるんです。

これが問題なんです。

人を大きく数タイプに分類した時点で、
目の前の人を見ながら、相手そのものを見なくなるんです。

多くの人が経験する話に当てはめると、
初対面で「良い人そうだ」と印象を持って関わっていたら
長く関わっていくうちに予想外の嫌な部分を見てしまって
「こんな人じゃないと思っていたのに…」なんてガッカリする、
というのに似ています。

自分の中の特定の人物像に当てはめて相手を見ていて、
目の前の相手を見なくなるんです。

一般的に、人は他人をそうやって理解するものです。
過去のパターンに当てはめて推測しながら関わるんです。

良く言われる「人間関係では第一印象が大事」というのは、そのためでもあります。
相手は一瞬のうちに過去のパターンに当てはめて、自分のことを判断してしまうんです。

そんな特性が誰にだってあるにも関わらず、
数少ないタイプに分類して人を見るようにさせるという行為は
ますます目の前の人を見なくさせる問題を含んでいると思うんです。


特性という考え方自体が、人の振る舞いを全体的に眺めて
傾向を見ていくことで生まれるものです。

「この人は、初対面の人に対して自分から話しかけに行くことが多いなぁ」
という印象が
「この人は『積極的』な人だ」
という特性を見させるわけです。

実際には、「初対面の人に対して自分から話しかけに行った」
という出来事を見たのですが、そこから特性の判断に移行していく。
それは推測なんです。

ただ、この推測は当たることが多い。
なぜなら、人は自分の行動をパターン化しているものだからです。

一瞬一瞬で求められる行動を、全て意識的に判断していたのでは
考えることが多すぎて大変ですから、人はそうした日常的な行動に慣れて
パターン化した対応を取るようになります。

その意味で、行動のパターン化された特徴は
似たような状況では、同じような行動を取らせると考えられるわけです。

もちろん、例外的なことがあるのは当然ですが、
傾向として強く表れる特徴というのが目につくのは実際に良くあることでしょう。

なので、細かい特性を見ていく行為は、
相手を理解していく上での1つの材料になるわけです。

「この人は以前に、初対面の人に自分から話しかけに行っていたから
 きっとそういう積極性を持っていて、今日も話しかけるんじゃないだろうか?」
と推測することができる。

外れたら、外れたで、違いに目を向けて更に細かい情報が得られます。

特性という見方は、その人を細かい部分に分けて見ていく行為なんです。

アメリカのプロファイリングの手法の中には、コンピュータを使って
人の特性を100以上の要素に分解して整理するものがあるそうですが、
特性に注目するということは、そうやって細かい要素の集まりとして
人を理解していく行為だと言えるでしょう。

最初に挙げた2通りのうち
「人の細かい特性を見て、相手を少しずつ理解しようとするもの」
というほうは、人を細かく見ていく方法ということです。

ここで重要なのは、その特性同士の関係性を
あまり積極的に考えないという部分。

「積極的に話しかける」傾向と「目標意識が高い」傾向の2つは独立していて
「積極的で目標意識が高い」人もいれば、「積極的で目標意識が低い」人も
「消極的で目標意識が高い」人もいると考えるんです。

喩えて言うと、
「数学と物理が得意でも、化学は苦手」といったところです。
もう一方の、少ないタイプに当てはめる発想だと
「数学と物理が得意」なら「理系」だから「化学も得意なはずだ」
という具合に考えてしまう。


これらの違いは非常に大きいと思います。

「目の前の人を理解するために、その人の特徴を見ていこうとする」発想と、
「目の前の人の大まかな特徴から、その人をタイプに当てはめて
 そのタイプの人として接していこうとする」発想。

「あの人はA型だから、私とは気が合わない」といって
関わることを避けてしまうのは、人間関係の可能性として勿体ないと思います。


まぁ、血液型に関していえば、あまりにも広まり過ぎていて
几帳面な人を見たときに「A型っぽい」と表現する人もいるようなので、
事実上は「几帳面」か「大雑把」かという特性に注目している可能性も考えられます。

場合によっては「A型っぽくない」なんていう言い方もされますから
完全に血液型の情報だけで接しているわけではないのかもしれません。
「A型だから気が合わないと思っていたけど、
 実際に接してみたら意外と話が合った」という感じかもするのでしょう。

それぐらいに参考程度の情報だったら問題ではありません。
楽しみとしても良いでしょう。

ですが、気をつけないと、タイプ分けを過剰に利用する人がいるのも事実です。

人を、いとも簡単にタイプに分類して分かったつもりになる。
それで目の前の人のことなんて何も見ていない。

そんな風になってしまうリスクを含んでいることは知っていたほうが良いと思います。


確かに、実用的で役に立つタイプ分けもあります。

石井裕之さんが提案した「Meタイプ」と「Weタイプ」という分類は
大きく2つの方向性に人を区分していこうという発想ですが、
真っ二つに分けるものではありません。

程度問題で考えるんです。
「Meタイプが70%ぐらいかな」といったように。

NLPであれば、視覚・聴覚・体感覚の中では
「視覚が一番強そうだ」といったように見ていきます。

この手の分類は、複数の特性を関連付けていますが、
ただ分割して分かろうとするのではなく
程度に注目しているのがポイントでしょう。

程度を意識しようとすると、判断基準を求めて
相手を理解しようとする意識が高まります。
相手へ気持ちが向きやすくなるんです。

特に、Meタイプ・Weタイプや、視覚・聴覚・体感覚の分類などは
相手の外見的特徴を元に判断していく部分もポイントです。

相手を観察する必要性があるんです。

ここで相手に気持ちを向けることができる。

大切なのは、目の前の相手を良く見て、相手を理解しようとする度合いです。

石井裕之氏はMeタイプ・Weタイプを通じて
目の前の相手を観察させることを意図していたそうですが、
その意図が伝わり切らなかった部分もあったのではないかと思います。

NLPでも、気をつけないと
「私は視覚優位だから…」というような決めつけが出てしまいます。

大事なのは、タイプに分類して分かったつもりになることではなく、
相手を分かろうとして目の前の相手を良く観察するということでしょう。

昨日と今日では、違っている可能性だってあるんですから。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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