2011年06月21日

求められる特性

人それぞれ個性というのがあって、それは全て持ち味で
長所や短所という評価をするのは難しいと思います。

その特性が役に立つ場面と、上手く機能しない場面がある。

重要なのは、その場面で求められることをする上で、
その特性が役に立つかどうか、ということでしょう。

1つの行動や振る舞いの傾向というか、能力や特性が
多くの行動に結びついているのが大切なポイントです。

場面に応じて、違う特性を発揮できれば
柔軟性が高いということになるわけですが、
決して簡単なことではないようです。

例えば、文字を書くときに、
どんな状況でも普段通りに、同じように書く人もいますし、
状況に応じて書く文字を変える人もいます。

研究職として一緒のチームで仕事をしていた方々にも、
いつも読みやすい丁寧な文字を書く人、
いつもスピーディーにサラサラッと文字を書く人、
自分用のメモには汚く素早く、他人に見せるものには丁寧に書く人
…などと個性が分かれていました。

当然、実験をするときにも、
これらの文字の書き方の違いが反映されました。

いつも丁寧な字を書く人は、実験も全て丁寧。
「そこは雑でも良いんだけど…」というものも丁寧です。
ミスはないし、着実で安心感があるものの、
急ぎの作業は得意ではなかったようです。

いつもスピーディーに字を書く人は、
長期間保存されるような書類やサンプルのラベルの文字も
ササッと素早く書きあげます。
「本当は、一目見て識別できるように丁寧に書いたほうが…」
というものも、自分用のメモ書きも同じ文字で書く。

同様に、実験作業も全てスピーディーですから
仕事はどんどん進みます。
スピードが求められる作業は大活躍するものの、
丁寧さが必要な場面ではミスに繋がったり
結局やり直す必要が出てきたり…という部分もありました。

場面に応じて文字を書き分ける人は、
スピードが求められる仕事ではスピーディーに、
丁寧さが求められる仕事では安全確実に、と
作業の進め方を使い分けているようでした。
ただ、求められていることが何なのかが分からないと
ストレスを抱えることもあったようです。

文字の場合には、ペン習字や書道をやっていると
参考にならないことがあります。

それは、文字を書くという作業が意識的になるからです。
文字を綺麗に書くことそのものが目的になっていて
「仕事の場面」という状況と切り離されていることがあります。

個性や特性が表れるのは、
意識せずにやっているときが顕著です。

「頭で分かっていても、ついついやってしまう」
ように、いつものパターンを繰り返すのも
意識していないのになっているという意味で同様です。

自然と自覚なくしている行動や振る舞いにこそ、
その人の特性が色濃く反映されやすいというわけです。


で、繰り返しになりますが、その特性自体には良し悪しがない。
あるのは、状況に対する『向き・不向き』です。

そう考えると、能力や特性を改善しようと努力するというのは、
その状況に向いていない特性を変えようとする行為かもしれません。

物事の可能性を十分に予測して、リスクの対策を考えてから
慎重に行動に移していく特性を持っている人がいたとします。

その人が、とにかく行動力が求められる職場にいたとしたら
状況として期待されている振る舞いが違うわけです。

「考えている暇があったら、さっさと行動しろ!」と言われても
そういう特性の人ではない。

それを「優柔不断で行動力が無い」という短所に捉えるのは
その状況が、素早い行動を求めているからです。

そこは、「行動力がある」というのが長所になる場面なんです。

だったら、行動力をつけるようにしたらいいか?
『それも』できるようになるのは有効だと思います。

場面によって違う振る舞い方ができるようになると
効果的な対処ができるものが増えていきます。

しかし、もしそうなったとしても、その人の個性は
やっぱり「良く考えてから行動する」というところにある。

考えるよりも先に行動することを求められる日々が
ストレスに感じられる可能性もあります。

もしかすると、長くやっているうちに考えることを止め、
「とにかく行動する」という特性に変わっていくかもしれません。

そうなったときには、「慎重に良く考える」という特性が
長所として役に立っていた別の状況で、
上手くいかないことが出てきてしまう可能性だってあります。

状況に合わせていくほうが良いのか、
特性に合った状況にいるほうが良いのか。

これは難しい問題だと思います。


求められる個性とは違う人でも、
そこに夢や希望を抱く場合があります。

本当は人前で何かを主張するのが苦手なのに、
歌が好きだからという理由で歌手を目指す、など。

夢をかなえる喜びもあるでしょうが、
同時に、ストレスも抱えることになるかもしれません。

その人の全ての個性が発揮されるような状況を
自らが作り出して仕事にしていければ、
それは理想的なようにも思えますが、
組織に属するとなると、それも難しい気がします。

場合によっては、個性として不向きなこともあって、
別の場所では長所として評価される個性が
短所としてみなされ、活躍もできず苦しい思いをする、
なんていうこともあるでしょう。

そのときに、環境を変えるほうが幸せなのか
期待していた状況に居続けるほうが幸せなのか、
判断は難しいところです。


一方で、世の中には、社会が厳然と
ある特定の個性や特性を求める仕事もあると思うんです。

お金の管理をする仕事の人は、
「細かいことを気にしない大らかさ」でもって
「あれ、計算が合わないなぁ…、まぁ、いいか!」
というわけにはいきません。

社会に対して、
あるいは個人が相手であっても、
影響力や責任が大きい職業があるんです。

他者の人生に深くかかわる仕事ほど、
求められる特性というのがあると思うんです。

この場合には、夢や信念だけでやってもらっては困ります。

もし、どうしてもその仕事をしたいという強い想いがあるのなら、
求められる特性に自分を合わせていく義務さえあると思います。

関わる相手に迷惑をかけるかもしれないんです。
他の人の一生に悪影響を及ぼしているかもしれないんです。

その自覚があるかないかは重要じゃないでしょうか。

悪影響を与える可能性に対して自覚があって、
それでも自分は、そのことが良いことだと信じていて、
その上でやっているというのなら、
僕はそれを尊重しますけど。

cozyharada at 23:27│Comments(0)TrackBack(0)clip!NLP | 全般

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
おしらせ
 ◆ セミナー情報 

New!

《コミュニケーション講座》
 〜人を育てる指導力〜

【日時】 
  2019年6月16日(日)
   10:00〜16:30


【場所】 
  北とぴあ 601会議室

   JR王子駅より2分
   南北線王子駅直結

詳細はこちら>>


《瞑想講座》

【日時】 
  2019年6月22日(土)

  午後の部 13:30〜16:30
  夜間の部 18:00〜21:00

【場所】 
  北とぴあ 第2和室

   JR王子駅より2分
   南北線王子駅直結

詳細はこちら>>


《怒りの取り扱いマニュアル》
 〜期待の手放し方と
  ゆるしの技法〜


【日時】 
  2019年7月6日(土)
     7月7日(日)
   10:00〜18:30


【場所】 
  滝野川会館

   JR上中里駅より7分
   JR駒込駅より10分
   南北線西ヶ原駅より7分

詳細はこちら>>
次回未定


 ◆ 過去の講座 

《新カウンセリング講座》
 〜まとめと実践〜


当時の内容はこちら>>


《勉強会》 

【テーマ】 変化の流れを考える

当時の内容はこちら>>
次回は未定



 ◆ お問い合わせ 
  技術向上、
  コンサルティング、
  スーパーバイズ、
  執筆・講演…

  諸々のお問い合わせはこちらへ>>



ホームページ
バナー1


プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
Archives
最近のコメント
QRコード
QRコード