2011年06月25日

感情の取り扱い

感情や気持ちは、体の中に起きている反応を
感覚として感じ取ったものに対して名前を付けて呼んでいる
…というのが原則的なところで、
どの感じ方を、どの名前で呼ぶかには個人差があります。

だからこそ、気持ちや感情を言葉で説明するのは難しい。
同じように「悲しい」とか「嬉しい」とか言っても、
その中身として感じているものは別の可能性が高いわけです。

一方、専門用語や学術用語は定義が明確なので
同じ言葉で呼ばれるものは、話す人が違っても
同じものとして理解しやすい特徴があります。

研究者などは専門用語だけでディスカッションできてしまうので
自分の使っている言葉と他人が使っている言葉の中身に
違いがある可能性に意識が向きにくい傾向があるでしょう。

体の中で起きていることを感じ取って
それを感情や気持ちとして自覚している、
というのがポイントです。


ですから、自覚していなくても、体の中には
その感情や気持ちと同じような反応が起きていることがあります。

そして、その感情や気持ちとして自覚される体の反応が
何によって引き出されているかまで、正確に理解することは
非常に難しいものです。

体調が悪くて体の反応が変わっているのか、
何かの出来事に対して体の反応が引き出されているのか。
それすらも理解は難しいものです。

さらに、実際にはペーシングの結果として
お互いの生理状態が近づいていくことも起きているようです。


心理学の実験で、被験者に黙ってアドレナリンを投与して
その後に不愉快な出来事を経験させると
普段よりも過激に怒りの反応を示した、という話があります。

ところが、アドレナリンを投与するときに
「この薬の影響でイライラしやすくなります」と説明すると
同じ不愉快な出来事に対しても、怒りの度合いは下がった、と。

つまり、生理状態としてイライラしたときの体感覚が
体の中に起きていたとき、
それが何に由来するものか自覚できていない場合には、
外で起きている出来事に対して理由を見つけてしまうわけです。

「自分がイライラしているのは、この不愉快な出来事のせいだ!」
そんな風に理解して気持ちを整理しようとしていたとしても
実験においては薬の影響だったという話。

体の中で起きていることが、何によるものかを自覚するのは
それだけ難しいことだと思います。

そして重要なのは、その自覚ができないために、
本来の理由と違った対象に、感情を向けてしまうことになる
という場合があることです。

最初からイライラしていたから、些細な出来事に怒りをぶつける。
クレームを言う人が、クレーム対応の悪さに怒りが強まり
二次クレームに発展していくというのは、まさにこの例でしょう。

最初から不満があるから、次の不満を感じやすい。
特に、言い訳でもされようものなら、それが正論であるほど
正々堂々と不満をぶつけられる対象が無くなり、
不満の感情だけが残ってしまうことになります。

その体感覚としての不満の状態が続いている中で
不満をぶつけられる対象が見つからないと、
別の不満の対象を見つけ出してクレームの方向が変わる。

…そういう流れです。


こうした身体感覚としての感情や気持ちが収まるためには
何かしらの行動に移す必要があります。

感情は行動に繋がる。
そう理解しても間違いではないぐらいでしょう。

行動を通して発散されるんです。
筋肉を積極的に動かすことで体の中の状態が変わるんです。

ここには段階があります。

一番早いのが、体の中の状態が変化したときに
その変化に合わせて行動が変わるタイプ。
感情や気持ちとして自覚するよりも先に、体が動きます。

次が、体の中の状態の変化に気づき、その感情に浸るタイプ。
自分の気持ちを自覚します。
すぐには行動に結び付けないので、長く感情を自覚して、
普段と違う自分の感情や、ネガティブな気持ちになっている自分に
さらに二次的な気持ちが沸く場合もあります。
「イライラしている自分が嫌…」という感じ。

その次が、体の中の状態の変化を自覚しないタイプ。
自分自身の感情的な体の反応に鈍感になっていることもあれば、
出来事を冷静に、知的に理解することで自分を納得させ
「仕方がない」と言い聞かせるように感情にフタをすることもある。
溜めこんでいくようなイメージでしょうか。

…もちろん、混ざったような場合もあって、例えば
感情に沿って、すぐに行動に移しながら、
同時に体の状態も感情として自覚している、とか。

行動にも変えないし、感情としても自覚しないけれど、
生理的な反応としては体の中に強いものが起きていて
他人からは非言語メッセージとして感情が分かりやすい、とか。


望ましいのは、全てをバランスよく使い分けていく形かもしれません。

何でもすぐに行動に結びつけるのでは、
時には衝動的な振る舞いで人間関係を損ねる可能性もあります。
やってから後悔する、というのは苦しいものでしょうし。

だからといって、自覚してばかりでも辛い。
心地良くない体の反応が長期間にわたって自分の中にあれば
それを意識しているだけで、さらに気持ちが滅入るかもしれません。

知的に自分を納得させようとしても、体の中には反応は残ります。
いわゆる「合理化」と呼ばれるものです。

なので、まず自分の身体反応に気づき、感情として自覚する。
それが何によるものかを理解する必要はありません。
理由を自覚して「仕方ない」と考えるようにするのは
合理化で感情を抑え込む方向に進みかねませんから。

気づいたら、自分の状態を落ち着いたものにするよう工夫します。
深呼吸するとか、姿勢を整えるとかで、安定感を取り戻す。
そして、その状態で、その状況を乗り切る方法を考えます。

そして実際に行動してみて対処する。

このままでは、感情は発散されていませんから、
後から別の手段で感情だけを発散させるようにします。

感情の発散は、筋肉を積極的に動かすことで起きやすいので、
走るとか、大声を出すとか、何かを叩くとか、投げるとか、
重いものを持ち挙げるとかして、体の中の鬱憤を晴らすわけです。

スポーツや音楽は、その意味でも有効ですが、
技術に思い入れを持っている場合(上手くやりたいとき)は
結果の良し悪しで気持ちが左右されますから、
できるだけシンプルに筋力を発揮する方法が望ましいでしょう。


常日頃から、体の中の状態を感情や気分として気づきながら、
その状態が生理的なものであると理解をした上で、
体を動かすことを通してメンテナンスをしておく。

今この瞬間の出来事によって引き出されたのではない感情が
現時点の体験の受け取り方に混ざり込んでくるのは
色々な部分で、もったいないことじゃないかと思います。

「物の見方を変える」とか「受け取り方を変える」とか
意識の仕方で日々を明るくする方法もあります。

一方で、気分の良いときは、全てが明るく感じられる
という側面も人間にはあるわけです。

積極的に自分の生理状態を整えるようにしていくのも
日々を明るくする1つのコツかもしれません。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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