2011年09月19日
失敗から学ぶ
最近のオススメ本です。
一押し。
福祉の場面を想定した「やってはいけない」コミュニケーションを
特に『言葉がけ』を中心に解説してあります。
介護に関する場面が色々と状況別に設定されているので
専門家にとっても、実際に介護をしている家族の方でも
得られるものが多いだろうと思います。
介護の言葉かけタブー集
クチコミを見る
まず、非常に読みやすいんです。
構図や文章も見やすく、解説も平易な表現になっています。
かわいらしいイラスト付き。
あくまで「提案をしている」という体裁も、現場で働く人たちの気持ちを考えた
気配りを含んでいるように感じられます。
形式としては、1つ1つ場面を見開きで区切って、ある程度の状況設定がなされたあと、
実際になされた『タブー』の言葉がけが紹介されます。
そして、反対のページには、効果的な対応が紹介されるというパターンです。
特定の専門家が自分の考えを押し付けるようなものではない印象で、
実際、不特定多数の事例をもとに編集したような構成になっています。
ですから上手くいかなかったパターンも、実際に「やってしまった」話とのことですし、
上手くいくパターンも「効果的に対処できた」ケースをもとに説明されています。
僕からすると不満が残るのは、人物像の設定がないことでしょうか。
編者からすると、特定の事例を想定して解説しているようですから、
その人の性格や生活歴、バックグラウンドなども視野に入れて説明がなされています。
しかし、設定される状況は、あくまで一般論の範囲です。
どんな人物かは分からない。
しかも、イラストに印象を引っ張られます。
その場面で主役となる要介護者たちは、ほとんどが
かわいらしく描かれたお年寄り。
およそ、不満を爆発させるような人には見えません。
クライアントとして見たときには、その絵が物語る人物像は
自分の人生に積極的で、面倒見が良く、感情表現にも気配りのありそうな印象なんです。
関わる専門家は、その人の個性にあった対応をする限り、
相手のほうが自ら、専門家の対応に合わせて関わってくれそう。
トラブルが起きても、年配者に甘えながら「ごめんなさい!」と言えば
大人の余裕で許してくれそうであったり、
ソーシャルワーカー側が、大人の対応をして冷静に振る舞っていれば
それに合わせて大人同士の礼節を踏まえた態度で接してくれそうであったり。
とにかく、設定された状況と、イラストの絵を参考にしてしまうと、
「まぁ、個性に合った対応さえしていれば問題にはならないだろう」
と気楽に思えてしまいました。
なので、その後の解説で詳細な人物像の補足情報が出てくると
かなり印象を覆さないといけないことがあったりします。
この辺りが、ケーススタディの難しいところだと思います。
ケースを明確にするためには、詳細な情報が必要になる。
かといって、そこまでするとプライバシーの問題も出てくるし、
一般論として学びにくくなる。
文字数も増えますから、書籍としての販売を考えたときには
少し取っつきにくいものになってしまって、読者を選んでしまいます。
おそらく、この本は読みやすさや体裁から判断しても、
分かりやすくて親近感のある内容を盛り込みながら、
「問題ある対応」と「効果的な対応」を比較して紹介することで
介護の関わり方に対して『関心を高めてもらう』のが意図なんじゃないでしょうか。
ですから僕は途中から、自分なりに答えを考えながら読む、というのを止めました。
単純に状況設定と、やりがちなミスを、「あるある」ネタとして読む感じでした。
それでも幅広い実態を知ることができるのも興味深いですし、
どんなミスをしてしまいがちなのかを整理できるのも有用でした。
もちろん、似たようなケースを経験している方にとっては
非常に実用的な内容にもなると思われます。
全般的に僕が大切だと感じたのは、僕が本を手に取った理由にも繋がりますが、
この本が「ダメ」な対応を説明しているところです。
多くの技術や方法論を述べている本は、「効果的な方法」を解説します。
それはそれで役立ちます。
しかし、効果的な方法を沢山学んでいったところで、
「やってはいけない」対応に目を向けることがなければ
無自覚なままで問題を引き起こし続けるかもしれません。
問題になる対応を知っておくことは、
効果的な対応を知っておくことと同じぐらい重要なはずです。
場合によっては、効果的な対応を知っている以上に有効なこともあるでしょう。
効果的な方法は、それを知っていても、上手くできなければ効果が下がってしまいます。
しかし、問題のあるやり方は、それを回避さえできれば
100点の方法を知って、100点を目指すのは大変です。
今までは70点だったものを、100点にするのは相当な努力が必要です。
それに対して、今まで10点にも満たなかったような大きな問題点を
50点とか60点に引き上げるのは、より少ない工夫でできる可能性がある。
コミュニケーションの場合、ほんの小さな部分が
大きく悪影響するというのは特別なことではありません。
だからこそ、問題のある事例を知ることが有効なんだと思います。
何より、自分の失敗を指摘されるのは気分の良いものではありません。
教えられても受け入れにくい心情もあるでしょう。
ところが、こうやって本を通じて、他の人の失敗談を
「あるある」ネタとして説明してもらえば、ずっと内容を受け入れやすいはずです。
心のどこかに留めておくだけで、自分に対する注意点にもなる。
形式として、とても実用的だと感じます。
色々な観点から学べる本だと思いますのでオススメです。
気軽に読めますから手に取って眺めてみるのも良いんじゃないでしょうか。
…ただ、大型書店じゃないと置いていないかもしれませんが。
一押し。
福祉の場面を想定した「やってはいけない」コミュニケーションを
特に『言葉がけ』を中心に解説してあります。
介護に関する場面が色々と状況別に設定されているので
専門家にとっても、実際に介護をしている家族の方でも
得られるものが多いだろうと思います。
介護の言葉かけタブー集
クチコミを見る
まず、非常に読みやすいんです。
構図や文章も見やすく、解説も平易な表現になっています。
かわいらしいイラスト付き。
あくまで「提案をしている」という体裁も、現場で働く人たちの気持ちを考えた
気配りを含んでいるように感じられます。
形式としては、1つ1つ場面を見開きで区切って、ある程度の状況設定がなされたあと、
実際になされた『タブー』の言葉がけが紹介されます。
そして、反対のページには、効果的な対応が紹介されるというパターンです。
特定の専門家が自分の考えを押し付けるようなものではない印象で、
実際、不特定多数の事例をもとに編集したような構成になっています。
ですから上手くいかなかったパターンも、実際に「やってしまった」話とのことですし、
上手くいくパターンも「効果的に対処できた」ケースをもとに説明されています。
僕からすると不満が残るのは、人物像の設定がないことでしょうか。
編者からすると、特定の事例を想定して解説しているようですから、
その人の性格や生活歴、バックグラウンドなども視野に入れて説明がなされています。
しかし、設定される状況は、あくまで一般論の範囲です。
どんな人物かは分からない。
しかも、イラストに印象を引っ張られます。
その場面で主役となる要介護者たちは、ほとんどが
かわいらしく描かれたお年寄り。
およそ、不満を爆発させるような人には見えません。
クライアントとして見たときには、その絵が物語る人物像は
自分の人生に積極的で、面倒見が良く、感情表現にも気配りのありそうな印象なんです。
関わる専門家は、その人の個性にあった対応をする限り、
相手のほうが自ら、専門家の対応に合わせて関わってくれそう。
トラブルが起きても、年配者に甘えながら「ごめんなさい!」と言えば
大人の余裕で許してくれそうであったり、
ソーシャルワーカー側が、大人の対応をして冷静に振る舞っていれば
それに合わせて大人同士の礼節を踏まえた態度で接してくれそうであったり。
とにかく、設定された状況と、イラストの絵を参考にしてしまうと、
「まぁ、個性に合った対応さえしていれば問題にはならないだろう」
と気楽に思えてしまいました。
なので、その後の解説で詳細な人物像の補足情報が出てくると
かなり印象を覆さないといけないことがあったりします。
この辺りが、ケーススタディの難しいところだと思います。
ケースを明確にするためには、詳細な情報が必要になる。
かといって、そこまでするとプライバシーの問題も出てくるし、
一般論として学びにくくなる。
文字数も増えますから、書籍としての販売を考えたときには
少し取っつきにくいものになってしまって、読者を選んでしまいます。
おそらく、この本は読みやすさや体裁から判断しても、
分かりやすくて親近感のある内容を盛り込みながら、
「問題ある対応」と「効果的な対応」を比較して紹介することで
介護の関わり方に対して『関心を高めてもらう』のが意図なんじゃないでしょうか。
ですから僕は途中から、自分なりに答えを考えながら読む、というのを止めました。
単純に状況設定と、やりがちなミスを、「あるある」ネタとして読む感じでした。
それでも幅広い実態を知ることができるのも興味深いですし、
どんなミスをしてしまいがちなのかを整理できるのも有用でした。
もちろん、似たようなケースを経験している方にとっては
非常に実用的な内容にもなると思われます。
全般的に僕が大切だと感じたのは、僕が本を手に取った理由にも繋がりますが、
この本が「ダメ」な対応を説明しているところです。
多くの技術や方法論を述べている本は、「効果的な方法」を解説します。
それはそれで役立ちます。
しかし、効果的な方法を沢山学んでいったところで、
「やってはいけない」対応に目を向けることがなければ
無自覚なままで問題を引き起こし続けるかもしれません。
問題になる対応を知っておくことは、
効果的な対応を知っておくことと同じぐらい重要なはずです。
場合によっては、効果的な対応を知っている以上に有効なこともあるでしょう。
効果的な方法は、それを知っていても、上手くできなければ効果が下がってしまいます。
しかし、問題のあるやり方は、それを回避さえできれば
100点の方法を知って、100点を目指すのは大変です。
今までは70点だったものを、100点にするのは相当な努力が必要です。
それに対して、今まで10点にも満たなかったような大きな問題点を
50点とか60点に引き上げるのは、より少ない工夫でできる可能性がある。
コミュニケーションの場合、ほんの小さな部分が
大きく悪影響するというのは特別なことではありません。
だからこそ、問題のある事例を知ることが有効なんだと思います。
何より、自分の失敗を指摘されるのは気分の良いものではありません。
教えられても受け入れにくい心情もあるでしょう。
ところが、こうやって本を通じて、他の人の失敗談を
「あるある」ネタとして説明してもらえば、ずっと内容を受け入れやすいはずです。
心のどこかに留めておくだけで、自分に対する注意点にもなる。
形式として、とても実用的だと感じます。
色々な観点から学べる本だと思いますのでオススメです。
気軽に読めますから手に取って眺めてみるのも良いんじゃないでしょうか。
…ただ、大型書店じゃないと置いていないかもしれませんが。