2014年08月23日

就職難

先日、就職活動について語り合っている学生2人組を見かけました。

なにやら色々な流儀があるようで大変そうです。

多くの友達(同級生?知り合い?)と結託して情報交換しながら
仲間意識を強要されつつ、かつライバルとして就職活動する。

そこに Line だ Facebook だ Twitter だと
さまざまなSNSの繋がりが含まれるみたいです。

ネット上や会話の最中では、お互いに励ましあい
でも表に出さないところで、上手くいった友人への嫉妬や
他の人が上手くいかなかったことへ安心したりもする…。

さらには、そういった心の奥から沸いてくる気持ち、
つまり仲間意識と相反するような自分勝手な想い
に対して、ときおり自己嫌悪に陥ることもあるのでしょう。

話を聞いていて、表情を見ていて、多くの葛藤が感じ取れます。

学生時代に自己分析といったって、
過去の経験から強みを判断しようとしても経験の量が少なく、
何よりも色々な経験を通して大きく変わり続けている時期ですから
「これが自分」とか「自分のやりたいのはこれ」などと
ハッキリいえるほうが少ないものだと考えられます。

出会った人が多ければ、他者との比較の中で
自分の傾向を見出すこともできるものですが、
学生時代までに出会う人の種類なんて限られています。

そもそも大学生ぐらいが最も、似通った人たちと接する時期じゃないでしょうか。

公立の小中学校ぐらいだと勉強の得意・不得意や
家庭の生活環境などにもバリエーションがありますが、
受験を通じて選ばれた高校生以降となると共通点も増えてくる気がします。

同じような成績・点数が求められる学校となると
勉強をしてきた量、そのための生活スタイルなども似てくるのではないか、と。

高校生・大学生ぐらいになると仲間に属していることへのプレッシャー
(ピア・プレッシャー)が強まるものですし、ニュースなどで知る限り
Line などを使った仲間はずれ的なイジメもあるそうですから、
仲間はずれにならないようにする傾向は相当に強いものだと思われます。

就職活動に励んでいる学生であれば、そうした集団への帰属意識も強く、
個性という他人との違いに目を向ける機会よりも
皆と同じになるための努力が多かったでしょうから
他者との違いで「自分らしさ」を自覚することは難しいと思われます。

実際には、小学校ぐらいでも地域の差は大きいものです。
どういう世代の、どういう職種の人が選ぶ街かというのは違いがあります。
小・中学校のほうが高校よりもバリエーションが大きかったようでも、
その地域ということだけでも意外と共通点があるわけです。

大人になって他の地域で生まれ育った人と話をしてみたり、
色々な場所を訪れてみたりすると、
いかに自分が狭い世界にいたかを実感できるものでしょう。

でも大学生ぐらいのときに、そのことを自覚するのは大変なはずです。
比べる体験がありませんから。

一方で、会社の側の人たちは多くの学生や新入社員を見てきていますから
そうしたバリエーションに対して知識がある。
たくさんの人の中での比較として判断しやすいわけです。

その意味では、学生自身よりも「その人らしさ」を掴みやすいともいえます。

学生として自己分析ができていることがどれだけ重要なのか
僕にはサッパリ分かりませんし、
「自分らしさ」を参照する基準も多くない時期に得た自己分析が
どれだけ意義のあるものなのかも分かりません。

むしろ、採用側が学生をしっかりと理解できるほうが
ずっと求められることなんじゃないか、という気もします。

自分を分析できているかとか、どんな強みがある(と主張しているか)よりも、
これまでに育まれてきた個性の土台や、技術や知識、経験ではない能力など
入社後にも変化しにくい部分を判断できるような見方ができれば
本当に求めている人を見つけやすいんじゃないかと思います。


そして何よりも重要なのが、
 会社と学生の間で価値観が合うか
でしょう。

ここが合わないと、会社に入ってから苦しみます。
自分が大事にしたいことと、組織が求めることがズレますから。

当然ですが、価値観を自己分析するのも
学生時代では簡単とはいいにくいところ。

まだまだ移り変わりの途中だともいえますし、
やってみて初めて違和感に気づくこともあるはずです。

その意味で、学生の側が価値観を自覚しておくのが
どれぐらい意味のあることなのかは判断しにくい気がします。

どちらかというと、組織との価値観のズレに気づいたとき、
そこで働き続けないことのほうが幸せなことだと認めて
気軽に会社や職種を変えられるような風潮があれば
望ましいのかもしれません。
(現状からすると簡単ではないのでしょうが…)

もう1つのポイントとして、
企業側が価値観を明確にしていないことが多いようにも見えます。

ビジョンやミッション、企業理念などを示すのも大切でしょうけれど
現実として社員に期待していること、
組織として優先したい・大切にしたいこと(=価値観)を
どれだけ明確に伝えているか、ということです。

学生の側を評価して判断するのが採用の形態ということだけでなく、
企業の側を学生が判断しやすいように示すのも
双方の価値観のマッチングという観点では重要だと考えられます。

学生の話を聞くとか、個人的に目に入ってくるとか、
限られた情報の範囲内ではありますが、
どうも「価値観の合う人を採用しよう」というスタンスは
あまり重視されていないのではないかと感じます。

企業の側は自社の素晴らしいところをアピールして
いわゆる「優秀な」学生が集め、選べるように意図する。

学生の側は就職が大変だといわれる世の中だからこそ
自分の「優秀さ」をアピールするために、自分の見せ方を努力する。

双方が世間的に「素晴らしい」とされる姿を見せようと
過度に装っているようなところがあるのかもしれません。

学生としても型通りの「優秀さ」を示したほうが
企業にとって分かりやすいため
そちらの方向で誰もが努力をする。

そこで示したものが普段の自分にとっては無理のかかるものでも
目下の目標のためには頑張って乗り切ろうとすることでしょう。

結果として、採用した企業からすると
「こんなはずでは…」といった想定外を経験する可能性があります。

一方、企業としても「素晴らしい」会社アピールをしていれば、
新入社員が入社後にギャップを感じることも大きくなりそうです。

お互いが自らの大事にしたいことを明確に伝えていないのが
このように後からギャップに気づく理由の1つだと思われます。


その上で、就職難といわれる時期だからこそ
学生の側には苦労を乗り越えて入った会社に対して
期待がふくらみやすいことも想像されます。

苦労をして得た結果に対しては
「良いものだ」と思いたいところもあるんでしょう。

企業側だって素晴らしいところをアピールするわけですから
入ってみて「期待していたのと違う…」と感じることも少なくない。

期待が大きかった分、ガッカリも大きくなる、と。

最近のニュースで目にすることが多い『新入社員の離職』には
そういった「過度な期待が生み出す失望の大きさ」も
関係しているのではないでしょうか。

「良い」会社、「良い」学生、という評価もさることながら
「お互いの価値観の相性」という視点も大切な気がします。


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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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