2015年06月21日
お察しします
インターネットにあげられている記事だとか
たまに耳に入ってくる会話だとかで
「波動が高い」
という言い回しがあります。
意味は察することができます。
どうやら
「波動の振動数が高い」
という意味合いのようです。
その人たちが話題にしている「波動」というのがあって
それに「高い/低い」があるんだ、というんです。
同様の内容で「軽い/重い」、「細かい/粗い」と
言い分けられることもあるみたいですから、
話の内容と言葉の表現から察すると
何らかの波動の振動数についてだろうとうかがえます。
波動の「振動数」が高いのであれば
「波長」は短くなって、波形は細かく見えそうです。
波の移動速度の速さや、振幅の大きさ、位相の違いではなさそうですから
「振動数が高い」という意味で話しているのは、ほぼ確実でしょう。
「波動が高い」でも言いたいことは伝わります。
物理では「波動が高い」という表現は使われない気がしますが
何を言わんとしているかは察することができます。
同じくインターネットの記事だとか、ニュースだとか、テレビの情報番組とかで
「酵素が健康に良い」という話を耳にします。
意味は察することができます。
どうやら
「発酵食品は体にいい」
か、
「非加熱の野菜は体にいい」
ということのようです。
実際に生化学の用語として使われる『酵素』は
化学反応を触媒するタンパク質の分子のことです。
アミノ酸が連なったものです。
20種類のアミノ酸の並び順が異なると性質が変わり、
その並び順は遺伝子にコードされています。
ものすごく限定された化学反応だけを促進して、
反応速度を劇的に上げることで知られているものです。
生体内のわずか37℃の環境で、
あれだけ複雑な化学反応のプロセスを進められるのは
膨大な種類の酵素が存在しているからに他なりません。
生体内の化学反応の流れ(代謝)は、電車の路線図のように
代謝マップとして描かれますが、この複雑なマップでは
通常、1区間に対して1種類の酵素が決まっているんです。
そして、その全ての酵素が、遺伝情報を元に作られている。
全ての酵素は、その個体の遺伝子を元に作られるんです。
食べ物から摂取した酵素を利用することはありません。
何より、経口摂取したものは胃酸(塩酸)の中を通り、
消化酵素にさらされて分解されます。
その食物の分解のときに、食品の細胞内に存在する消化酵素も
同時に作用して、消化(分解)を促進する場合はありますが、
食べ物に含まれる酵素の類が機能をもつのは、ここまでです。
(ちなみに胃や腸は「体内」ではありません。
腸から吸収されてからが体内です。)
どんなに酵素の豊富な食品をとっても、大部分は胃酸で活性を失い、
ペプシンやトリプシンなどのタンパク質消化酵素で分解されます。
そして、アミノ酸の形になって吸収される。
その意味では、肉や魚などの筋肉組織としての
タンパク質を食べるのと違いがありません。
ですから酵素を多く含む食品を摂取するメリットは
消化されやすい
ということぐらいだといえます。
「非加熱(=生)の食材は酵素が多い」という意見は
この消化酵素の話なのかもしれません。
まぁ、事前に加熱調理すれば、食材に含まれる消化酵素が壊れても
炭水化物やタンパク質の分解が熱によって進むわけですから、
加熱調理と非加熱と、どちらが消化に良いかは分かりませんが…。
もう1つ「酵素」という名前で呼ばれているのが「発酵食品」のことのようです。
野菜や果物、穀物を中心に、発酵させた食品。
滋養強壮、栄養補給などの観点で推奨されます。
こういう発酵の大部分は、乳酸菌の働きです。
ヨーグルトほど乳酸菌を限定して作ってはいませんから、
漬物に近いと考えていただければいいでしょう。
乳酸菌そのものが腸の働きに良いとか、
発酵させる過程で特定のビタミンが増えるとか、
事前に発酵のプロセスで食材を分解しておくと消化吸収が良いとか、
そういったメリットが伺えます。
で、そのようなタイプの発酵食品を、なぜか「酵素」と呼ぶようなんです。
「酵素ドリンク」、「酵素ペースト」の類は、こちらです。
人によっては、この「酵素の元」を使って
自家製豆乳ヨーグルトなどを作るそうですが、
それだって乳酸菌の働きでしょうから、
生化学としては「乳酸菌」のことなんだろうとうかがえます。
たしかに乳酸菌の細胞内には酵素が沢山含まれているといえます。
ただ、だとすると納豆菌だって、パン酵母だって、麹カビだって
どれも酵素を同じぐらい含んでいるはずなので、
乳酸菌だけが「酵素」と呼ばれる理由は分かりません。
健康食品業界の慣例なんでしょうか。
とにかく生化学での学術用語としての「酵素」と
「酵素は体にいい」というときの酵素は
たぶん別物なんだろうと思えます。
呼び方が紛らわしいですが、産業界特有の呼び名はあるものですから
それは仕方のないことなんでしょう。
こちらで意味を察して受け取っておきます。
以上のような話は、
何かについて説明したいときに
専門用語とは違った単語を使ってしまっている
というだけのことですから、
受け取る側が頭の中で変換すれば
その意味合いを察することはできます。
しかし、音楽業界やビジネス界の人たちが
「化学反応」という表現については
なぜか僕は納得がいかないんです。
どうやら言わんとしているのは、
「異質なものを組み合わせると、予想外の相乗効果が生まれる」
ということのようです。
「シナジー」という単語だと、ただの相乗効果です。
単体を別々に使うよりも、同時に使うと効果が増す、ということでしょう。
一方、この人たちが使う「化学反応」には
「予想外の」といったニュアンスが感じられるんです。
ええ、察します。
意味はお察しします。
何を言いたいかは汲み取れます。
でも、です。
化学反応は予想外ではありません。
予想通りです。
理論を元に、予想を立てて行うものです。
適当に混ぜてみて、「お、なんか面白いことが起きた」っていうのは
化学ではないんです。
誰かと誰かが一緒に仕事をすると「化学反応」が起こる…。
言いたいことは汲み取れますけど、同時に
この人は化学のことを誤解している
ということも汲み取れてしまいます。
ただの単語の使い方の違いに留まらず、
意味を誤解しながら比喩的に使っているように思えます。
ただの言い間違えよりも、勘違いの度合いが大きい気がしてしまうんです。
話の内容は察することができますが、
それ以上に引っかかってしまうんです。
たまに耳に入ってくる会話だとかで
「波動が高い」
という言い回しがあります。
意味は察することができます。
どうやら
「波動の振動数が高い」
という意味合いのようです。
その人たちが話題にしている「波動」というのがあって
それに「高い/低い」があるんだ、というんです。
同様の内容で「軽い/重い」、「細かい/粗い」と
言い分けられることもあるみたいですから、
話の内容と言葉の表現から察すると
何らかの波動の振動数についてだろうとうかがえます。
波動の「振動数」が高いのであれば
「波長」は短くなって、波形は細かく見えそうです。
波の移動速度の速さや、振幅の大きさ、位相の違いではなさそうですから
「振動数が高い」という意味で話しているのは、ほぼ確実でしょう。
「波動が高い」でも言いたいことは伝わります。
物理では「波動が高い」という表現は使われない気がしますが
何を言わんとしているかは察することができます。
同じくインターネットの記事だとか、ニュースだとか、テレビの情報番組とかで
「酵素が健康に良い」という話を耳にします。
意味は察することができます。
どうやら
「発酵食品は体にいい」
か、
「非加熱の野菜は体にいい」
ということのようです。
実際に生化学の用語として使われる『酵素』は
化学反応を触媒するタンパク質の分子のことです。
アミノ酸が連なったものです。
20種類のアミノ酸の並び順が異なると性質が変わり、
その並び順は遺伝子にコードされています。
ものすごく限定された化学反応だけを促進して、
反応速度を劇的に上げることで知られているものです。
生体内のわずか37℃の環境で、
あれだけ複雑な化学反応のプロセスを進められるのは
膨大な種類の酵素が存在しているからに他なりません。
生体内の化学反応の流れ(代謝)は、電車の路線図のように
代謝マップとして描かれますが、この複雑なマップでは
通常、1区間に対して1種類の酵素が決まっているんです。
そして、その全ての酵素が、遺伝情報を元に作られている。
全ての酵素は、その個体の遺伝子を元に作られるんです。
食べ物から摂取した酵素を利用することはありません。
何より、経口摂取したものは胃酸(塩酸)の中を通り、
消化酵素にさらされて分解されます。
その食物の分解のときに、食品の細胞内に存在する消化酵素も
同時に作用して、消化(分解)を促進する場合はありますが、
食べ物に含まれる酵素の類が機能をもつのは、ここまでです。
(ちなみに胃や腸は「体内」ではありません。
腸から吸収されてからが体内です。)
どんなに酵素の豊富な食品をとっても、大部分は胃酸で活性を失い、
ペプシンやトリプシンなどのタンパク質消化酵素で分解されます。
そして、アミノ酸の形になって吸収される。
その意味では、肉や魚などの筋肉組織としての
タンパク質を食べるのと違いがありません。
ですから酵素を多く含む食品を摂取するメリットは
消化されやすい
ということぐらいだといえます。
「非加熱(=生)の食材は酵素が多い」という意見は
この消化酵素の話なのかもしれません。
まぁ、事前に加熱調理すれば、食材に含まれる消化酵素が壊れても
炭水化物やタンパク質の分解が熱によって進むわけですから、
加熱調理と非加熱と、どちらが消化に良いかは分かりませんが…。
もう1つ「酵素」という名前で呼ばれているのが「発酵食品」のことのようです。
野菜や果物、穀物を中心に、発酵させた食品。
滋養強壮、栄養補給などの観点で推奨されます。
こういう発酵の大部分は、乳酸菌の働きです。
ヨーグルトほど乳酸菌を限定して作ってはいませんから、
漬物に近いと考えていただければいいでしょう。
乳酸菌そのものが腸の働きに良いとか、
発酵させる過程で特定のビタミンが増えるとか、
事前に発酵のプロセスで食材を分解しておくと消化吸収が良いとか、
そういったメリットが伺えます。
で、そのようなタイプの発酵食品を、なぜか「酵素」と呼ぶようなんです。
「酵素ドリンク」、「酵素ペースト」の類は、こちらです。
人によっては、この「酵素の元」を使って
自家製豆乳ヨーグルトなどを作るそうですが、
それだって乳酸菌の働きでしょうから、
生化学としては「乳酸菌」のことなんだろうとうかがえます。
たしかに乳酸菌の細胞内には酵素が沢山含まれているといえます。
ただ、だとすると納豆菌だって、パン酵母だって、麹カビだって
どれも酵素を同じぐらい含んでいるはずなので、
乳酸菌だけが「酵素」と呼ばれる理由は分かりません。
健康食品業界の慣例なんでしょうか。
とにかく生化学での学術用語としての「酵素」と
「酵素は体にいい」というときの酵素は
たぶん別物なんだろうと思えます。
呼び方が紛らわしいですが、産業界特有の呼び名はあるものですから
それは仕方のないことなんでしょう。
こちらで意味を察して受け取っておきます。
以上のような話は、
何かについて説明したいときに
専門用語とは違った単語を使ってしまっている
というだけのことですから、
受け取る側が頭の中で変換すれば
その意味合いを察することはできます。
しかし、音楽業界やビジネス界の人たちが
「化学反応」という表現については
なぜか僕は納得がいかないんです。
どうやら言わんとしているのは、
「異質なものを組み合わせると、予想外の相乗効果が生まれる」
ということのようです。
「シナジー」という単語だと、ただの相乗効果です。
単体を別々に使うよりも、同時に使うと効果が増す、ということでしょう。
一方、この人たちが使う「化学反応」には
「予想外の」といったニュアンスが感じられるんです。
ええ、察します。
意味はお察しします。
何を言いたいかは汲み取れます。
でも、です。
化学反応は予想外ではありません。
予想通りです。
理論を元に、予想を立てて行うものです。
適当に混ぜてみて、「お、なんか面白いことが起きた」っていうのは
化学ではないんです。
誰かと誰かが一緒に仕事をすると「化学反応」が起こる…。
言いたいことは汲み取れますけど、同時に
この人は化学のことを誤解している
ということも汲み取れてしまいます。
ただの単語の使い方の違いに留まらず、
意味を誤解しながら比喩的に使っているように思えます。
ただの言い間違えよりも、勘違いの度合いが大きい気がしてしまうんです。
話の内容は察することができますが、
それ以上に引っかかってしまうんです。