2015年07月11日

ネガティブにもリフレーミングする

コミュニケーションや心理に関することを勉強していると
『リフレーミング』という単語を目にすることがあると思います。

用語としてリフレーミングと呼んでいない流派の人でも
カウンセリングや心理療法の流れの中で自然と使っているというか、
そこを1つの着地点として捉えているケースも多いように見受けられます。

例えばトラウマを解消するようなセラピーにおいても
過去の出来事を思い出して、「抑圧されていた感情を出し切り」、
そのとき同時に、その出来事の解釈が変わる
という体験は起きやすいものです。

そして実際、トラウマが上手く解消できるかどうかを分ける要因として、
「抑圧された感情が出し切れたかどうか」よりも
「感情を解消したときに、出来事に別の解釈を与えられるか」のほうが
大きな意味を持っているように見えます。

辛かった感情に浸って泣きわめき、怒りや悲しみを再燃させるだけでは
不満は強化されて、辛かった過去はよりハッキリした記憶として定着します。

辛かった感情を吐き出しながら、そのときの出来事を大人の目線で見直し、
その中に望ましい要素を見つけたり、「仕方がなかった」と受容したりできると
辛かったはずの過去に新たな意味が与えられる。
それでトラウマに引きずられにくくなるようです。

このように「物事の受け取り方・解釈が変わること」を『リフレーミング』と呼び、
それによって、その後に遭遇する出来事を体験する際に
今までとは違った解釈で、より広い捉え方ができるようになるわけです。


では過去の辛かった出来事だけ思い返して、
そこへ別の意味を与えられるようにしたらいいのか?
というと、必ずしもそうではありません。

この別の意味を与える作業を無理やりに行うと、
辛かった感情を残したまま、その感情を止めるような形で
知的な作業として別な見方を強調することになりかねません。

いわゆる『合理化』のような感じでしょう。

辛かったという気持ちを切り離して
「あれは嫌な体験だったけど、まあ仕方なかった。
 あれがあったおかげで良かったこともあるじゃないか。」
という具合に
 「仕方ない」と思いこもうとする
状態になりやすい。

思いこもうとするのと、
自然と思えるのは違います。

リフレーミングは「見方を変えようとする試み」ではなく、
「リフレーミングされた」という「見方が変わった体験」のことを言います。

見方を変えようと努力し続けている段階では
まだリフレーミングされていないわけです。

新たな見方を与えようとするときに
辛かった気持ちのほうを無視することも、また
できないことなんです。

感情を解消して、
新たな見方を取り入れる。

両方セットにしたときに「リフレーミングが起こる」ということです。


言い換えると、
 辛かった思いを受け止めてもらいたい気持ち

 それは仕方がなかったと受け入れたい気持ち
の両方がある
といった感じでしょうか。

一方に肩入れした状態では、もう一方はないがしろにされ
なかなか全体として満足できる状態には至らない、と。

そこでリフレーミングの観点として重要になるのが
 必ずしもポジティブに捉えるだけではない
ということです。

肯定的に受け取るようにするだけではポジティブ・シンキングです。
それが悪いわけではないですが、
「仕方がなかったと受け入れたい気持ち」のほうだけに肩入れする作業のため
「辛かった思いを受け止めてもらいたい気持ち」が残る可能性はあります。

ですから、あえて物事の受け取り方として
苦しかったほう、つまりネガティブな側面にも目を向け
ポジティブとネガティブを両方意識にあげるようにする
という工夫が役に立つはずです。


あえてネガティブな側面に目を向け、
しっかりと「辛かった」、「大変だった」ということを受け止める。

そこで役に立つのが
「辛かった」、「大変だった」、「苦しかった」ということへ
納得感を高めるための工夫です。

なぜなら
「辛かった」はずの出来事があっても
今、それでも頑張って生きていられるということは、
自分にとって(少なくとも辛うじて)受け止められる範囲だった
という意味を含むからです。

「辛かったとは思うけれど、現にこうしてやっていられるわけだし、
 それほど大変だったと騒ぎ立てるほどでもないんじゃないか?」
といった気持ちが沸く場合があります。

そういうときには、ちゃんと「大変だった」と納得するための
別の要因が求められます。

その納得感を高めるための追加要因として、
別のリフレーミングも併用することができます。

自分の長所をあえてリフレーミングして、
長所ゆえに平均よりも苦しんだことへ目を向ける。

例えば、
 積極的で行動力と責任感があって、意欲的に前へ進もうとする
という長所があるとしたら、
平均よりも抜け出しているこうした個性は、おそらく
 だからこそ同じような思いを共有して
 本当に気持ちを分かち合える仲間が少ない
という寂しさを体験してきている…といった具合です。

強みがあるからこそ、体験してしまう大変さもあるわけです。

そのような見方をすると、トラウマ体験に対しても
いかに自分が大変だったかを素直に受け止めやすくなると思われます。

トラウマと関連させるなら、例えば…。
 本当は親に弱音を吐けずに寂しい思いをしていた。
 それでも頑張って乗り越えてきた。
 
 そしてそんな風に乗り越えられたのは、
 自分の我慢強さという強みのおかげだった。

 我慢強かったからこそ、弱音を吐かずに耐えることができてしまった。
 我慢強かったからこそ、それだけ多くの我慢をすることになってしまった。
 他の人なら限界を超えていたような状況でも
 自分は頑張って我慢をしていたようだ。

 本当によく頑張っていた。
 あぁ、随分と我慢していたんだなぁ。…
といった感じで受け止める。

そうすると気持ちへ注意が向きやすくなり、
あまり感じないようにしていた寂しさという感情も意識されやすくなります。
結果として感情が解消されて、最終的なリフレーミングに至りやすくなる、と。


このようにリフレーミングをする上での工夫としても
様々な側面に目を向けるが効果的なようです。

一見するとポジティブで、パッと見は問題解決の最短距離のような発想に
視野を限定してしまうのではなく、
むしろネガティブとさえ感じられるところにまで視野を広げていくと
結果的にはスムーズにリフレーミングされやすくなる、ということです。

苦しさを受け止めるということも、リフレーミングの工夫の1つといえそうです。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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