2016年01月31日
味の調和とスケール
何度かこのブログにも書いたかと思いますが
僕がよく行くラーメン屋が一軒だけあります。
ラーメンが好きなわけではない僕にとって
その店は1つの料理のジャンルとして選択肢に入っている感じなんです。
たまに勘違いして「自分はラーメンが食べたいのではないか?」と思い
うっかり他のラーメン屋に入ったときは、大体ガッカリするぐらい
僕にとってはラーメンという食べ物ではなく
その店の『料理』を気に入っているみたいです。
非常に仕事が丁寧で、細かいところで絶妙なバランスを取ろうとする様子が
味のいろいろな部分に反映されている感じがします。
香り成分の工夫は、さほど意識していないようで
素材の旨味成分だけを贅沢に抽出するスタイルが特徴かもしれません。
レギュラーメニューだけでなく、頻繁に創作的なラーメンも出していて
僕としては、その味をみてみたいのが通いたくなる主な動機のようです。
テーマ素材を決めて、ラーメンという形の中で
素材の特徴を引き出そうとする工夫が楽しいんです。
テーマ素材の旨みを強烈に引き出しながら
ラーメンの仕上がりを出すために他の素材と組み合わせる。
そのバランス感覚が見事なんだろうと感じます。
確かに素材の「持ち味」を徹底的に引きだしているんだろうと感じられます。
僕個人として少しだけ残念なのは、
その素材らしさの中に香り成分の特徴がある食材の場合
「旨味成分だけを抽出する」というスタイルが、逆に
素材らしさを下げてしまうこともあるところでしょうか。
例えば鴨などは、僕にとって皮の脂と匂いに鴨らしさを感じるので
「鴨ガラで贅沢にダシを取りました」とやられても
確かに鴨なのは分かるけれど、鴨らしさは低い気がしてしまうんです。
魚をテーマにしたときも同様です。
匂いを含めて素材らしさを意識しているものの場合、
素材の「持ち味」だけを活かし、匂いを抑えるスタイルは
素材感としては少し下がるところがありそうだ、と。
まぁそのあたりは「ラーメン屋」として考えれば
出来上がりの「ラーメン」の仕上がりが重要なわけですから、
「素材を活かした料理」を目指すわけではないない以上
過剰に素材感をアピールするのも違うのかもしれません。
実際、店長はラーメンが好きなようですから
いかにもラーメンといったものを作ろうとする姿勢は当然のことなんでしょう。
その部分で僕の好みや期待と違いがあるのは仕方のないところです。
僕は素材の特徴を最大限に活かした「料理」を期待して、その店に行く。
店長は素材の旨味成分を最大限に生かした「ラーメン」を作ろうとする。
…このギャップは受け入れるしかありません。
僕がとやかく口出しする範囲ではないので。
実際、僕からすると必要のない具材がトッピングされていることも多いんです。
物凄くセンスのある組み合わせの具材が載っていながら
量が少なく、ほかの具に存在感を奪われている印象のときもあります。
いかにも「ラーメン」の特徴を出すためには
ラーメンらしい具材を載せる必要があるのかもしれません。
※本音を言うと、ラーメン好きの大多数のお客さんのために
分かりやすく好まれやすい(テーマとは無関係な)具を載せている
というフシもあるんじゃないかと感じているんですが。
そのように僕の期待とはズレたところがあったとしても
それでも他のラーメンを滅多に食べない僕が好むのですから
充分過ぎるほど絶妙な仕上がりになっているわけです。
先日などは「鯛と牛」を組み合わせつつ
両方の素材の味が同時に主張しながらもケンカすることのない
丁度いいバランスのスープを作っていましたから、
もうこのあたりは驚きを隠せないほどでした。
鯛と牛の特徴を同時に出して、1つの料理に仕上げるとなると
これはラーメン以外では難しいんじゃないだろうかとも思ったりして
改めて頭の下がる思いだったものです。
で、この店長、レギュラーメニューにも改良を加えているようで
少しずつ味が変わってきています。
創作メニューについても、味の組み立てが変わってきています。
トレンドがあるといったところでしょうか。
全体のまとまりが良くなってきているんです。
すごく調和がとれている。
隙間なく、過不足なくバランスが取れている感じです。
それは素晴らしいところでもある一方、
全体のスケール感としては、こぢんまりした印象も…。
以前はもっと、1つの素材の特徴を極端に際立たせ
対極的な特徴の素材をチョットだけ組み合わせることで
絶妙に全体の調和を取るようなことをしていたときがあったんです。
崩しながらも全体では調和させるといった感じが。
確かに以前のほうが荒削りで、最近は洗練されてきているともいえそうです。
しかし無難にまとまってしまっているとも言えなくはない気がしてしまいます。
その部分を偉そうに指摘するのは、僕自身にも共通する性質だからです。
こなれてくると卒なくこなすようになって
やれることのスケールが小さくなってくる。
書道で顕著に感じるところですが、
セミナーなどの仕事関連でも自覚するところなんです。
バランスのとれたものというのは、均一な真ん丸だけではありません。
一見するとバランスが崩れたような形の中で
全体構成として調和を保つこともできます。
調和は均一とは限らない。
芸術や自然は、不均一な調和に迫力を生み出しているようです。
ラーメンを食べながら、そんな風に
自分のことを反省させられる今日この頃です。
僕がよく行くラーメン屋が一軒だけあります。
ラーメンが好きなわけではない僕にとって
その店は1つの料理のジャンルとして選択肢に入っている感じなんです。
たまに勘違いして「自分はラーメンが食べたいのではないか?」と思い
うっかり他のラーメン屋に入ったときは、大体ガッカリするぐらい
僕にとってはラーメンという食べ物ではなく
その店の『料理』を気に入っているみたいです。
非常に仕事が丁寧で、細かいところで絶妙なバランスを取ろうとする様子が
味のいろいろな部分に反映されている感じがします。
香り成分の工夫は、さほど意識していないようで
素材の旨味成分だけを贅沢に抽出するスタイルが特徴かもしれません。
レギュラーメニューだけでなく、頻繁に創作的なラーメンも出していて
僕としては、その味をみてみたいのが通いたくなる主な動機のようです。
テーマ素材を決めて、ラーメンという形の中で
素材の特徴を引き出そうとする工夫が楽しいんです。
テーマ素材の旨みを強烈に引き出しながら
ラーメンの仕上がりを出すために他の素材と組み合わせる。
そのバランス感覚が見事なんだろうと感じます。
確かに素材の「持ち味」を徹底的に引きだしているんだろうと感じられます。
僕個人として少しだけ残念なのは、
その素材らしさの中に香り成分の特徴がある食材の場合
「旨味成分だけを抽出する」というスタイルが、逆に
素材らしさを下げてしまうこともあるところでしょうか。
例えば鴨などは、僕にとって皮の脂と匂いに鴨らしさを感じるので
「鴨ガラで贅沢にダシを取りました」とやられても
確かに鴨なのは分かるけれど、鴨らしさは低い気がしてしまうんです。
魚をテーマにしたときも同様です。
匂いを含めて素材らしさを意識しているものの場合、
素材の「持ち味」だけを活かし、匂いを抑えるスタイルは
素材感としては少し下がるところがありそうだ、と。
まぁそのあたりは「ラーメン屋」として考えれば
出来上がりの「ラーメン」の仕上がりが重要なわけですから、
「素材を活かした料理」を目指すわけではないない以上
過剰に素材感をアピールするのも違うのかもしれません。
実際、店長はラーメンが好きなようですから
いかにもラーメンといったものを作ろうとする姿勢は当然のことなんでしょう。
その部分で僕の好みや期待と違いがあるのは仕方のないところです。
僕は素材の特徴を最大限に活かした「料理」を期待して、その店に行く。
店長は素材の旨味成分を最大限に生かした「ラーメン」を作ろうとする。
…このギャップは受け入れるしかありません。
僕がとやかく口出しする範囲ではないので。
実際、僕からすると必要のない具材がトッピングされていることも多いんです。
物凄くセンスのある組み合わせの具材が載っていながら
量が少なく、ほかの具に存在感を奪われている印象のときもあります。
いかにも「ラーメン」の特徴を出すためには
ラーメンらしい具材を載せる必要があるのかもしれません。
※本音を言うと、ラーメン好きの大多数のお客さんのために
分かりやすく好まれやすい(テーマとは無関係な)具を載せている
というフシもあるんじゃないかと感じているんですが。
そのように僕の期待とはズレたところがあったとしても
それでも他のラーメンを滅多に食べない僕が好むのですから
充分過ぎるほど絶妙な仕上がりになっているわけです。
先日などは「鯛と牛」を組み合わせつつ
両方の素材の味が同時に主張しながらもケンカすることのない
丁度いいバランスのスープを作っていましたから、
もうこのあたりは驚きを隠せないほどでした。
鯛と牛の特徴を同時に出して、1つの料理に仕上げるとなると
これはラーメン以外では難しいんじゃないだろうかとも思ったりして
改めて頭の下がる思いだったものです。
で、この店長、レギュラーメニューにも改良を加えているようで
少しずつ味が変わってきています。
創作メニューについても、味の組み立てが変わってきています。
トレンドがあるといったところでしょうか。
全体のまとまりが良くなってきているんです。
すごく調和がとれている。
隙間なく、過不足なくバランスが取れている感じです。
それは素晴らしいところでもある一方、
全体のスケール感としては、こぢんまりした印象も…。
以前はもっと、1つの素材の特徴を極端に際立たせ
対極的な特徴の素材をチョットだけ組み合わせることで
絶妙に全体の調和を取るようなことをしていたときがあったんです。
崩しながらも全体では調和させるといった感じが。
確かに以前のほうが荒削りで、最近は洗練されてきているともいえそうです。
しかし無難にまとまってしまっているとも言えなくはない気がしてしまいます。
その部分を偉そうに指摘するのは、僕自身にも共通する性質だからです。
こなれてくると卒なくこなすようになって
やれることのスケールが小さくなってくる。
書道で顕著に感じるところですが、
セミナーなどの仕事関連でも自覚するところなんです。
バランスのとれたものというのは、均一な真ん丸だけではありません。
一見するとバランスが崩れたような形の中で
全体構成として調和を保つこともできます。
調和は均一とは限らない。
芸術や自然は、不均一な調和に迫力を生み出しているようです。
ラーメンを食べながら、そんな風に
自分のことを反省させられる今日この頃です。