2016年10月10日

読まずにいられない

当たり前の話かもしれませんが、僕の部屋に置いてある物には
日本語で文字が書かれています。

本とか書類とか資料とか手紙の住所とか。
洋書だとか、英語で書かれた資料などもありますが
そんなにパッと目に留まる場所に置かれているわけではありません。

英語の文字を目にすることが多いのは、
インターネットで検索したときか、SNSに勝手に表示されたときでしょうか。

普段はあまり意識していませんが、目に飛び込んだときの印象には
随分と大きな違いがあることを感じます。


英語の文章だって読めば理解できます。
理解しようと思って読むと、まぁそれなりに読み進められる。

ただし、目に入った段階では「英語の文章」という全体的な認識が先だって、
個別の単語や文章まで認識しようとはしていないようです。
つまり読んでいるわけではない、と。

一方、日本語の文字情報を目にしたときは「読もう」としなくても
勝手に頭の中に、読んでいる声が浮かんできたり
その単語の意味に関連する経験が連想されたりしているのに気づきます。

読もうとしなくても、日本語だったら自然と読んでしまう、と。
むしろ読まないことのほうができません。

日本語の文字には「日本語だ」という全体的な認識が起こらず、
単語の意味や文章としての認識が起きてしまうようです。

読むということが、もう癖になっているんでしょう。


これはちょうど、
日本人が内容を気にせずに英語の文字が書かれたTシャツを着ていたり、
あるいは
欧米人が意味も分からずに漢字のタトゥーを入れていたり…
というのと関連しそうです。

全体のデザインとして見ることができるか、
それとも全体を構成する要素としての単語に注目してしまうか。
その違いによって文字情報の内容を理解しようとするかが決まるんでしょう。
(実際には、文字内容を理解しようとする癖が単語に注目させるのかもしれません)

このような注目のサイズの違いは、どの単位で認識するかと関係します。

例えば花を見たとき、1つの「花」として見る人は
その形のパターンや全体としての色の配置などを捉えます。
全体としてカワイイ姿をしているとか、美しい色合いをしているとか、
そういう印象を持つわけです。

一方、花を見たときに細部に注目する人もいます。
おしべの形だとか、葉っぱの葉脈や皺だとか、表面の毛だとか、粒々の集合だとか
そんな「部分」に注目すれば、「花」という全体の認識はあまり起こらず
むしろ部分ごとの形態の特徴が強く認識されることになります。
そうして見れば、花もなかなかグロテスクな作りをしているようにも見えるようです。

このことは、どのように蚊に注目するかでも分かると思います。

飛んでいる蚊を見たときには、蚊の造形を意識するよりは
むしろ黒い点が不規則に飛び回っているような認識になりやすいでしょう。
そうすると空間に目ざわりなものがあるような印象が生まれがちです。

ところが昆虫図鑑で蚊の写真を見たりすれば、細部の形が分かってきて
なかなかグロテスクな造形物だというのが感じられたりもします。

どの範囲に注目して、どれだけの意味のまとまりとして認識するか?
ここに個人の癖が大きく影響しているということです。


やはり母国語の文字に関しては、
全体として「日本語の文章」という1つの認識をするのではなく、
内容を理解する必要性によって作られた癖から
部分ごとの単語や並び方のルールに注目して
その意味情報を認識する癖がついているのでしょう。

外国語だと、パッと目にした段階では
全体として、例えば「英語の文章」のように一まとまりで認識してしまう。
部分の構造に注目して意味を取るような認識が起きにくい、と。

もちろんトレーニングによって外国語でも意味への注目度は上がりますが
それには、どれだけ外国語の文章を読んだかが関わるはずです。

裏を返せば、
母国語であれば、そんなに頑張って読もうとしなくても
文章が目に入った瞬間に、頭の中では内容を捉えようとする働きが始まり
一字一句を理解しようとしなくても大まかな意味が掴めている
とも言えそうです。

パッと見ただけで、どれだけの単語を認識できるか…という部分については
読書量は目の使い方としての経験量が必要になると思われますが、
一字一句を丁寧に読もうとしなくても、それなりに意味は浮かんでしまっている
という性質は興味深いものじゃないかと感じます。

外国語の文章を認識するときと比較すれば、
 いかに母国語の文章を「読まない」ままで
 「あ、日本語の文章だ」とだけ認識することが難しいか
が実感できるでしょう。

心のどこかでは母国語は読んでしまっている癖があるようです。

速読ができる理由も納得です。

もしかすると我々は、小学校や中学校の頃に
文字から内容を理解する作業に慣れていなかった段階で
「読むというのは、こういうこと」と決めつけてしまった読み方を持っていて、
そこから離れた読み方だと「読んでいる」気がしないだけなのかもしれません。

目にしただけで自然と文字を読んでしまう癖を利用すれば
その人なりの速さで読書効率を上げていけるような気がします。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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