2018年05月03日
"Afternoon"の訳
少し前に『ダンケルク』という映画がありました。
戦場をリアルに描いたとして知られていますが、この中のワンシーンで
墜落した戦闘機から脱出するところがあります。
パラシュートでは墜落前に脱出することができず、
海に落下してしまう。
パイロットはハッチを開けて飛行機から抜け出そうとしますが、
ハッチが故障していて開かず、飛行機に閉じ込められてしまいます。
そして飛行機はそのまま海に沈んでいく。
どんどんコクピット内に海水が流れ込んできて、
必死にハッチを壊して開けようとしても開かない。
ついにコクピット内は海水で一杯になり、
パイロットは溺れかける…そんな緊迫のシーン。
そのとき、墜落の様子を目撃していた船が近づいてきて
ハッチのガラスを叩き割ってパイロットを助けてくれます。
以下の動画は、その部分だけをカットしてあります。
字幕なしの英語ですが、言葉がなくても分かるほどの緊迫感です。
そして最後、助かったパイロットが
船から差し出される棒を掴みながら一言
「Afternoon.」と言うんです(3'08"のシーン)。
ちょっと聴き取りにくいかもしれませんが
イギリス人特有の発音です。
で、なぜ「Afternoon.」なのか。
これは"Good Afternoon."を簡略化した"Afternoon."ですから
いたって普通の挨拶なんです。
とはいえ"Hello."や"Hi."ではない。
少し行儀のいい、紳士的・社交的な挨拶としての"Afternoon."。
まして助けてもらったのに"Thank you."でもないわけです。
もうギリギリのところで助けてもらって
まさに九死に一生を得たという状況で、
あえて何事もなかったかのように
公共の場での社交的な挨拶として"Afternoon."と言う。
こういう発想が、実にイギリス文化なんだとか。
イギリス人の好きなSarcasm(皮肉)というヤツです。
お互いに皮肉が皮肉だと理解しているからこそ
その意味がただの「こんにちは」ではないことも伝わる。
けれど、そんなときでも皮肉を忘れない。
このあたりの感じを、どう訳したらいいのかと考えると
すごく難しいだろうと思います。
字幕にしたら1秒分の4文字しか使えないので
実際に関わった翻訳者は苦労したことでしょう。
文化と結びついた言葉を外国語として理解するのは
一見すると簡単そうな言葉ほど、難しいものなのかもしれません。
戦場をリアルに描いたとして知られていますが、この中のワンシーンで
墜落した戦闘機から脱出するところがあります。
パラシュートでは墜落前に脱出することができず、
海に落下してしまう。
パイロットはハッチを開けて飛行機から抜け出そうとしますが、
ハッチが故障していて開かず、飛行機に閉じ込められてしまいます。
そして飛行機はそのまま海に沈んでいく。
どんどんコクピット内に海水が流れ込んできて、
必死にハッチを壊して開けようとしても開かない。
ついにコクピット内は海水で一杯になり、
パイロットは溺れかける…そんな緊迫のシーン。
そのとき、墜落の様子を目撃していた船が近づいてきて
ハッチのガラスを叩き割ってパイロットを助けてくれます。
以下の動画は、その部分だけをカットしてあります。
字幕なしの英語ですが、言葉がなくても分かるほどの緊迫感です。
そして最後、助かったパイロットが
船から差し出される棒を掴みながら一言
「Afternoon.」と言うんです(3'08"のシーン)。
ちょっと聴き取りにくいかもしれませんが
イギリス人特有の発音です。
で、なぜ「Afternoon.」なのか。
これは"Good Afternoon."を簡略化した"Afternoon."ですから
いたって普通の挨拶なんです。
とはいえ"Hello."や"Hi."ではない。
少し行儀のいい、紳士的・社交的な挨拶としての"Afternoon."。
まして助けてもらったのに"Thank you."でもないわけです。
もうギリギリのところで助けてもらって
まさに九死に一生を得たという状況で、
あえて何事もなかったかのように
公共の場での社交的な挨拶として"Afternoon."と言う。
こういう発想が、実にイギリス文化なんだとか。
イギリス人の好きなSarcasm(皮肉)というヤツです。
お互いに皮肉が皮肉だと理解しているからこそ
その意味がただの「こんにちは」ではないことも伝わる。
けれど、そんなときでも皮肉を忘れない。
このあたりの感じを、どう訳したらいいのかと考えると
すごく難しいだろうと思います。
字幕にしたら1秒分の4文字しか使えないので
実際に関わった翻訳者は苦労したことでしょう。
文化と結びついた言葉を外国語として理解するのは
一見すると簡単そうな言葉ほど、難しいものなのかもしれません。